「リベラル再生の基軸」から

寺島実郎「リベラル再生の基軸」(岩波書店)から。

  • 政治状況:改革幻想とともにリベラルへの意思は混濁
  • リベラルとは何か?相対的自由。
    • なぜ日本は安易な国権主義への即時的皆既が起こるのか。与えられたポツダム民主主義。
    • リベラリズムの主軸は一億一心の大局にある(宮沢喜一)。「小さな人間の位置からの世直し」(小田実)。不条理に対する直感に結び付いた怒り」(加藤周一)。みな相対的な見方を探求。
    • 新しいリベラルへの5つの基軸。
    • トインビー「穏健と自治」。市井三郎「歴史の進歩とは不条理な苦痛を減らすこと」。「反米・反安保・護憲・社会主義」がリベラルの柱だった時代の終焉。
    • 課題1:対米関係の再設計(アジア太平洋の新秩序構想。基地の段階的縮小と地位協定の改定)
    • 課題2:公正な分配(基軸の再構築。自立と自律)
    • 課題3:憲法9条の実体化(戦争への道を拒否)
    • 課題4:反原発ではない視座(平和利用に徹した技術基盤と専門人材の維持と蓄積。米国の核戦抑止力と脱原発の矛盾)
    • 課題5:議員定数の削減(究極の目標は政治の極小化)
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  • 安倍首相の経済と外交
    • アベノミクスの株高は外国人投資家の買い越しが主因。売り抜く資本主義の投資行動
    • 物価は上がるが所得は増えない。
    • 肝心なのは成長戦略ビジョンから実行計画へ。
    • 格差と貧困の顕在化の高い可能性。
    • 倍外交:日本のイスラエル化の心配。戦後秩序の否定。反米を潜在させた親米。
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  • ベラル再生の主体は誰か。
    • 労働組合:中流の上に鎮座。ワークシェア(働くことを通じた納得いく人生)の実現に向けた新しい運動理論の構築が必要。
    • 団塊世代:経済主義と私生活主義。アトム化した高齢者の爆発。一人一つのNPO/NGOへの参画。
    • 精神論ではなく、全体知の中で不条理を正す政策構想に立つ運動論が必要。民主主義的条理に基づく新たな紐帯。
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    • 国民が恩恵を共有する産業創造戦略。産業構造の創りかえ。食料自給率をどう高めるか。
    • 米中覇権争いの時代という世界認識は間違っている。
    • 北東アジアの非核化構想を主導すべき。
    • 集団的自衛権行使容認論の動き。迷惑な同盟国へ。
    • 近隣との相互理解・交流への踏み込みなしに21世紀への希望はない。
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  • エネルギー戦略
    • 脱原発の論理:危険で厄介な技術であり経済より人命。等身大の技術ではない。
    • 脱原発の論理には政策科学の議論が抜けている:原子力の平和利用の技術基盤を失うのは賢い選択ではない。技術の進化へ的確な認識を持つべきで、安全性を重視した次世代原発に焦点を。
    • 技術をもって問題を制御しよう。
    • 原子力は国家が責任を持つ体制:原子力事業の国策統合。原子力政策の戦略総括機関が必要。
    • 日本企業が世界の原子力産業の中核的存在という事実。
    • 安全保障(米国の核の傘)とエネルギー政策は切り離せない。日米同盟を解消することなく脱原発はできない。
    • 核なき世界の実現と平和利用の制御に向けて日本は前進すべきだ。
  • 2030年

今日の収穫

本多静六(1866-1952年)の名言から。

  • 楽天主義。職業の道楽化。功は譲り責めを負う。善を称し悪を問わず。好機を逸せぬ。勤倹貯蓄。天命を待つ。
  • 職業の精進によって人格は磨かれる。学校教育はその準備に過ぎない。
  • 何でも寸法を測る。
  • 無欲と苦言
  • 順境もよし、逆境もよし
  • 人は死ぬものに非ずして、自殺するものなり(セネカ
  • 大きな感激、大きな事業、大きな研究
  • 永久に残りかつ年とともに成長してゆく仕事を楽しべきである