高任和夫「依願退職」---会社は孵卵器

ブックオフや古本街に行くとあまりにも安いので本を大量に買い込んでしまう。
そのうちの軽い本を風呂場で読み終わる。
高任和夫さんの「依願退職」(講談社文庫)。100円だった。

依願退職―愉しい自立のすすめ (講談社文庫)

依願退職―愉しい自立のすすめ (講談社文庫)

この人は私より4つほど上で、東北大法学部を出て、三井物産に入社。作家とサラリーマンの二足のわらじを履き、50歳で27年勤めた企業を退職し作家活動に専念というキャリアだ。
39歳で最初の本、42歳で2冊目の本、、、。
私のキャリアにも似ているので親近感をもっている。私のビジネスマン向けの本を新聞で取り上げてくれ、共感したと書いてくれたこともある。

以下、共感できるところと私の感想。

  • サラリーマンが上司に恵まれるのは、一生を通じて2割か3割。(その通り!上司は悪いのが普通と思うべきだ。よければ幸運ということ。)
  • 私の会社生活は、さまざまのものを蓄積しながら、自分が本当にやりたいものはなにかを探しつづけてきた人生のようだ。(企業は学校だ!)
  • 人事は業病。(人事をやれる立場になったら、邪念を捨てて権力を行使しなければならない。)
  • 出ない杭は腐る。(打たれるか、腐るか。どの選択をするか。)
  • 会社は、意欲ある人にとっては、孵卵器の役割を果たす時代になった。(会社というのは実務で学びながら起業・転職などの準備ができるありがたい組織だ。)

コラムを書くことになって困ったのはネタを拾うことであったそうだ。メモ帳にヒントをメモする。そうすると、それまでまともにモノを見ていなかったことに気づく。ぼんやりと生活していたということだ。見る、聞く、感じる、考える、書く、、、。
私も日経ビジネスの編集者が当時住んでいた仙台に来て「図解コミュニケーション」をテーマとした連載を依頼され1年半ほど続けたことがある。月1回だが、常にネタを考えていた記憶がある。気合を入れて毎回書き続けたら、それを読んだ単行本の編集者から執筆を勧められた。
その年配の編集者は「あなたは、本当に書くべきことをまだ書いていない。図解の本質は考えることでしょ。そこを書きなさい」と言われた。その通りだった。ど真ん中に球を投げ込まれた感じがした。そして取り組んだ結果が「図で考える人は仕事ができる」(日経)だった。そこから私の人生は一変したのだ。今でもその日経の名編集者には感謝している。

この本の最後に同じく作家の江波戸哲夫さんの解説が載っている。
この人も会社を辞めて作家になった人だが、「辞めてよし、辞めなくてよし」と言っている。

同じようなキャリアをたどった人のエッセイは共感に満ちている。

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