世田谷美術館で開催中の「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展--印象派を魅了した日本の美」を観て来た。
お盆休みでもあり、今までで一番見学者が多かった。
幕末から明治初年にかけて、浮世絵を中心とした日本美術は、欧米の美術世界を席巻した。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて誕生した、印象主義、唯美主義、アール・ヌーヴォーなどに大きな影響を与えたことが実際の絵画を比べることで納得できた。
これには、万国博覧会という大きなイベントが寄与している。
1862年のロンドン万博、1867年のパリ万博、1873年のウイーン万博、1876年のフィラデルフィア万博、そして1878年のパリ万博で、シンメトリーが皆無の日本美術への賛美は頂点に達する。「それはもはや流行ではなく、熱狂であり、狂気である」といわれた。1872年には、フィリップ・ビルティがジャポニスムと命名する。
ヴァン・ゴッホは「私の作品は、日本美術の上に成り立っている」とまで言った。
ロートレックは日本の美人画に魅了された。
E・コンクールは芸者・遊女を描いた絵にひらめきうけた。
ピサロ「広重は優れた印象主義者だ」。
あのモネさえも、トップの絵画、妻のカミーユに着物を着せ、扇子を掲げたポーズの絵を描いている。
ドガは鳥居清長のアンシンメトリーや大胆なデフォルメの手法に影響を受けた。
スローンは俯瞰構図に魅せられている。
19世紀広範囲登場した写真の絵画主義(ピクトリアリズム)には、広重の影響がある。
19世紀に盛んになったアーツ・アンド・クラフト運動や、フランスのアール・ヌーヴォーまでも、「芸術が生活に溶け込んでいる」日本の影響下にあった。
そして、19世紀後半の唯美主義のコールマン、20世紀のアンリ・マチス、工芸家のエミール・ガレもも日本美術を賛美している。
浮世絵の工夫には、俯瞰構図、近接拡大、格子などがある。
ここに展示されている作品は、ボストン美術館にある10万点の日本美術品の一部である。
それはなぜだろうか。
一つには、1876年いアメリカ建国100年を記念して開催されたフィラデルフィア万博の影響がある。
二つには、4人の人物がキーマンであった。
動物学者モース。美術史家フェノロサ。岡倉天心。コエクターのビゲロー。この4人である。
浮世絵を中心とした日本美術が、これほど世界美術の潮流に深く、広く影響を与えているとは思わなかった。