「税金を払わない巨大企業」(富岡幸雄)

「税金を払わない巨大企業」(富岡幸雄)を読了。
税の専門家が「日本の法人税は本当に高いのか」、というテーマを徹底的に追求した本である。
こういう素朴な問いに対して、個別企業の納税情報を追って、時間と労力と高度な専門知識が必要とされる困難な作業の連続で答えを見つけたのである。そういうことが簡単に分からないほど「税制」は複雑らしい。

税金を払わない巨大企業 (文春新書)

税金を払わない巨大企業 (文春新書)

  • 法人税納付額を起業利益相当額で割った「実行税負担率」というスケールで、税引き前純利益が一期で600億円以上の大企業のう、32.3%未満の企業は35社あった。(平均以下の低い数字)。以下1位から。金融、商社、自動車が多い。
  • 三井住友FG(純利益1479億円に対し実際に払った法人税等は300万円。0.002%)。ソフトバンク(788億円・500万円。0.006%)。みずほFG(2418億円・2.26億円)。三菱UFJ(1886億円・5・7億円)。みずほコーポレート(2577億円・67億円)。ファーストリテイリング(756億円・52億円)。オリックス[1752億円・210億円)。三菱東京UFJ(8774億円・1093億円9.キリンホールディングス(959億円・1190億円。12.5%)。以下、ANA。住商三菱重工小松製作所富士重工業。丸紅。ニコン。日産。サントリー。阪急阪神(22.03%)。
  • 利益があっても課税所得として参入しなくてもいいような優遇制度があるからこうなっている。
  • 外国子会社配当益金不算入制度(商社)。特別試験研究費(自動車)。「受取配当金益金不算入制度」、、、。
  • 世界的規模で「ゼロタックス化」戦略を追求する無国籍ローバル企業に有効な防御措置がないため、先進国は税収確保が困難になっているのだ。
  • 2014年度の消費税増額分は、国と地方を合計すると5兆円。このうち社会保障の充実には5000億円。大半は、既存の年金・医療・介護などの経費に充当。消費増税関連法の附則では、財政にゆとりが出た際は「成長戦略及び事前防災・減災に重点的に配分する」と規定されていて、国土強靭化に1.5兆と予算をつけた。

著者は消費税は低所得者に対する過酷な増税であり、高所得者に対する減税であるという。
消費税を10%にあげても、2020年度のプライマリーバランスは11兆円の赤字になる。
その原因は、大企業が税金を払わなくていい税制のゆがみにあるというのが、増税はデフレを招くと従来から主張してきた著者の主張である。
この本は衆院解散という時期に大きな話題になるだろう。