村山富市(1924年生、大分県生まれ)は、経歴だけをながめると、市議、県議、国会議員、予算委員会、国会対策委員長、総理大臣と順調に志をとげてきたようにみえる。しかし、自分から手を挙げたことは一度もない。
国会の仕事では、「約束したことは守る。言ってはならないことは言わない」という信義を重視し、「密室の国体政治はやめる」という原則を貫きながら誠実に仕事をしていく。
人生の節目に、不思議と役回りを巡ってきて、断り続けるのだが、周囲の情勢がそれを許さない。結果として、無欲のまま、自民党からかつがれて社会党委員長として首班となる。「人生には巡り合わせがある」と強く感じる人生だ。この運命がやてきた時には、そこから逃げないで、真っ向から取り組んで、乗り越えていく。
尋常小学校、高等小学校を終了し、働きながら、東京市立商業学校夜間部、明治大学専門部政治経済学科夜間部、そして明治大学専門部政治経済学科昼間部への転部という学校歴をみると、この人の言動を人間として信用できる気がしてくる。
村山は昭和19年に召集される。
「みんな木銃を使って訓練していた。剣がないために五人に一人、小刀が支給された。軍靴の代わりに地下足袋、飯ごうの代わりに竹の皮十枚、水筒の代わりに竹筒が配られた」と語っている。
敗戦まじかの軍隊の中身を知りまた不合理な軍のありかたに触れて、戦争に疑問を持った。
総理になったのは天命。
「護憲・反安保・自衛隊違憲」などを主張していた社会党の党是を時代の流れを見ながら転回させる好機だと思って、政策転換を行った。
以下の考えを聞くと、今もっとも必要な考え方だと思う。この人はやはり相当な人物だ。
- 人間のすることだから、自分にもできる。
- 私心を捨てて職に専念するしかない。職をまっとうするしかない。腹を決めてやるしかない、自分を捨ててやるだけだ。捨身の強さに徹するしかない。
- 単独政権よりも連立政権のほうがベター。プロセスが明らかになる。
- 集団的自衛権の足を踏み込ませることは、絶対にさせてはいけない。
- 戦前がまさにそうでした。この程度のことは、と見過ごしてきた小さな穴が、手がつけられない大きな穴になり、無謀な戦争に突入することになった。その間違いを繰り返してはいけません。なし崩し的に自衛隊を海外に出していくことは許されない。
- 沖縄の基地の問題は日本全体のもんだだと受け止めて対応すべき。、、、沖縄県民が担ってきた重荷、苦渋は、日本国民全体が引き受けるべきです。
- アジアと日本のこれからを考えた場合、今のようにアメリカだけに頼っていたのでは、日本は孤立するのではないかと心配です。
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村山富市回顧録(岩波書店)。2012年刊行。米寿をきっかけに回顧録を出版することにした。
- 作者: 薬師寺克行
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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- 戦後、半世紀以上も経っていまだにこれだけの米軍基地が日本に必要なのかとも思う。
- 辞める時は一人で決める意外にない。
- 党を変えるチャンスだと思って政策を変えた。
- 2009年の総選挙。自民党があまりにひどかったから政権が民主党に移ったんだ、だけど誕生した民主党政権はだめだったなあ。その最大の原因は、やはり官僚機構という生きている組織を活用できなかったことだ。
- 迷いがあるまま突っ込んでいったらケガが大きい。
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名言の暦 4月11日。
死亡
誕生
- 正力松太郎1885年:富士山より高い塔を立てる。
- 小林秀雄1902年
- 心掛け次第明日からでも実行が出来、実行した以上必ず実益がある、そういう言葉を、ほんとうの助言というのである。
- ことごとく実行とは平凡なものだ。平凡こそ実行の持つ最大の性格なのだ。だからこそ名助言はすべて平凡に見えるのだ。
- 成る程、己の世界は狭いものだ。貧しく弱く不完全なものであるが、その不完全なものからひと筋に工夫を凝らすというのが、ものを本当に考える道なのである。生活に即して物を考える唯一の道なのであります。
- 天職という言葉がある。若し天という言葉を、自分の職業に対していよいよ深まって行く意識的な愛着の極限概念と解するなら、これは正しい立派な言葉であります。
- 金子みすず1903年:みんなちがってみんないい。
- 井深大1908年
- 見本のない産業をつくりだす。
- ものをつくる苦労や喜びを知っている人は、自分の失敗を、そう簡単に人のせいにはしません。