「沖縄の不都合な真実」(新潮新書)--今の沖縄の内部の実情

大久保潤・篠原章「沖縄の不都合な真実」(新潮新書)を読了。

日経新聞の元那覇支局長と評論家の共著。2015年1月20日発行。
沖縄では琉球新報沖縄タイムスの地元新聞で25万部と圧倒しており、日経は7000部、朝日は1500部という有様だからかどうか、著者の沖縄告発は利権を持っている政治家、建設、知識人、公務員には厳しい論調になっている。

沖縄の現実は一筋縄ではいかない、きわめて複雑であり、それを解きほぐす事を命題としている本だ。

140万県民の代表・新翁長知事の誕生は「沖縄VS日本」という構図を作り出したことで勝利した戦いであったとの視点で書かれている。それを沖縄ナショナリズム、沖縄民族主義と表現している。

沖縄の不都合な真実 (新潮新書)

沖縄の不都合な真実 (新潮新書)

日米政府の合意とは、1995年に発生した12歳の少女強姦事件がきっかけとなって、できたものだ。
その内容は普天間を半分以下にして海兵隊基地キャンプシュワブ内の辺野古崎に移し一部を埋め立てて飛行場を建設するというものである。当時の大田昌秀知事が日本政府(橋本総理)とアメリカ(クリントン大統領)を相手に勝ち取った成果である。

直近の知事選で翁長氏が辺野古には飛行場を絶対につくらせないとの公約を掲げて勝利し、現職であり沖縄の要求を上回る予算を獲得したばかりの仲井真氏を破ったのだ。「カネを落とせば沖縄はおさまる」という日本政府の沖縄政策にノーをいう知事があらわれたのである。

米軍基地は、本土77%、沖縄23%。米軍専用基地に限ると、本土26%、沖縄74%になる。
基地の被害からみると、飛行場が問題で、沖縄は嘉手納、普天間の二つだが、関東には横田、硫黄島、厚木の基地が存在している。騒音は沖縄だけの問題ではない。

米軍は反戦平和運動を弱めるために、被差別意識が「反日」に向かうように利用してきたという面もあり、このたびの沖縄県と安倍政権の間の騒動はそれが現実となったという印象を受ける。
沖縄振興策は、復帰以来10兆円に及んだが、公共施設、観光施設などに使われ、目立った産業をつくることはできなかった。そして高校大学進学率、学力水準、県民所得(東京の半分)、離婚率、生涯未婚率(男性22%)、できちゃった婚比率(38%)などは、沖縄は全国最下位という現実がある。

沖縄は公務員優位の階級社会であり、貧困の島であると著者は言う。
沖縄と日本の対立は、琉球大学OBで形成される県庁、経済界、マスコミなどの沖縄権力が日本権力に抗議している構図となっているのだそうだ。その沖縄権力を告発する書である。

もし海兵隊が縮小されても、次は自衛隊の誘致運動が盛んになるだとうというのが著者の見立てだ。

この本は沖縄の支配階級である沖縄権力の批判が主題である。その主張は、振興予算をやめることが基地問題の解決につながるということだ。
基地が減っても自立に向けた素材はそろっているから、沖縄はやっていけるとしているが、具体策は明らかにはしていない。

この本では「現在の沖縄」の内部事情が明らかにされている。
本土の視点でもなく、大江健三郎筑紫哲也がいう被害者の沖縄の視点でもなく、琉球の歴史の視点でもない、今の沖縄の内部の実情がよくわかる本だった。

散歩中に。

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東京フォーラムで行われた「布施明 デビュー50周年記念コンサート」を妻と一緒に聴いてきた。
5千人入るという会場も会場は中高年の夫婦などでほぼ満杯。
同じ時代を生きた人たちの青春の回想の時間だった。
それぞれの人生の軌跡と布施明の熱唱と歌詞、そしてメロディーが50年という時間を越えて心に響いてきたようだ。隣の女性も涙ぐんでいた。「共感」の深い空間と時間。
タイトルは、「50周年、もう一歩」で、これからも歌い続けるというメッセージ。
団塊の世代トップランナーの一人の生きざまをみた。

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プールで500m。

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名言の暦 5月10日。

命日

  • モンテスキュー1775:平凡な語で、非凡な事を言うのが、非凡である。
  • 葛飾北斎1849:天が私にあと10年の時を、いや5年の命を与えてくれるなら、本当の絵描きになってみせるものを。
  • 松浦武四郎1888:我死なば焼くな埋めな新小田に捨ててぞ秋のみのりをば見よ
  • レントゲン1923:私は考えなかった。ただ探求した。
  • 安倍磯雄1949:

誕生日

  • 沖牙太郎1848:
  • 福原有信1848:見せかけの模倣は駄目だ。やるなら徹底的に根本から始める。
  • 河合良成1886:「西田(幾多郎)先生からはいろいろ教えを受けた。一番切実に教わったのは自覚ということだった。また、プラトンの意志の力、つまり吹雪の中を突っ込んでいくという発想、意志の弱さは罪悪だという思想を植え付けられた
  • 桑原武夫1904
    • 汚い金をきれいに使うのが文化ちゅうもんや
    • 人生に強いインタレスト(興味、関心と利害感)をもち、感動しうる心なくしては、よき行動はなく、したがって、よき人生もありえない。
    • 新井白石の合理主義、本居宣長のねばっこい追求力、そして明治維新をなしとげて、独立を守りえた私たちの祖父たちの知力と勇気、そうしたものをこそ、近代国家としての今の日本の中で改めて継承せねばならないのである。