大城立裕「小説 琉球処分」(上下巻)--沖縄問題の根源に迫る作品

大城立裕「小説 琉球処分」(上・下:講談社文庫)を読了。

小説 琉球処分(上) (講談社文庫)

小説 琉球処分(上) (講談社文庫)

小説 琉球処分(下) (講談社文庫)

小説 琉球処分(下) (講談社文庫)

著者は「カクテル・パーティ」で芥川賞を受賞した作家である。沖縄出身では初めての快挙。

この本は1968年に単行本として出版されたが、もともとは1959年から琉球新報に連載したものである。
その連載に書き加えて、1968年に出版された。
連載当時はあまり注目されなかったが、1972年の本土復帰の前後に読みなおされた。

1872年から1880年までの8年間の、沖縄が明治政府のもとで強制的に日本に組み込まれたプロセスを描いた物語だ。
歴史は事実の羅列だけでは、理解が不足する。その時代に生きた人々の吸った空気、ざわめき、憤り、友情、志、、などが記されていないからだ。
ここ数か月、沖縄関係の書籍を乱読しているが、この小説を読む中で、日本政府の要人たちと、対応した琉球の人々の人心とその息遣いを感じることができたように思う。これが小説というものの効用である。

琉球は、長い間、日本と中国の両方に属す両属国家であった。
処分官・松田道之はじめ明治の近代国家を建設中の日本政府の官僚たちは、長い琉球の歴史に敬意を払いながら、穏健に日本政府の中に組み込もうとする。大久保利通伊藤博文などが松田の上司だ。

「内政に似てしからず、外交に似てしからず、微妙な国際的駆け引きのなかで、純情らしくあるいは老獪らしい琉球の人士を相手の心労」に時間をかける。
しかし中世のままの存在であった琉球との交渉の根気くらべに負けて、最後は、強硬策をとり、王(藩王)を上京させ華族に列させて、日本の中に組み入れてしまう。
この過程を克明に書きながら、歴史の転換期の当時の関係者の苦悩を描いている。

若い主人公は最後にこう思う。
「歴史を変えることはできない」といま言ってしまってはいけないのだ。たとい、こんな平凡な事務をとりながらでも、、、疑う自由があるかぎり、まだなにかを生み出すことができないとは限らないのだから、、。

琉球と沖縄の人々の粘り強さ、忍耐づよさ、我慢強さ、しぶとさを垣間見る思いがする。

沖縄出身の佐藤優は、解説の中で普天間問題は「平成の琉球処分」と沖縄は受け止めていると語っている。
「はねかえしてもはねかえしても寄せてくる」ような静かな抵抗を沖縄から受けるだろう。その抵抗が繰り返す中で、日本の国家統合が内側から崩れ出す、その課程が始まっていると警鐘を鳴らしている。

沖縄問題の根源に迫る名作である。

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多摩大「花街道」
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徒歩通勤で「月刊・上杉隆ニュース」、「町田徹 経済ジャーナル」、山崎ナオコーラ、の語りを聴く。

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沖縄慰霊の日。報道ステーション地位協定」特集は考えさせられた。

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名言の暦 6月23日

命日

  • 国木田独歩1908:道に迷うことを苦にしてはならない。どの路(みち)でも足の向く方へゆけば、必ずそこに見るべく、聞くべく、感ずべき獲物がある。
  • 壺井栄1967:突き飛ばされて転んだら、ついでにひとりでに起きあがって、歩くとこを見せてやればいい。
  • 賀来龍三郎2001:与えられた仕事の分野では、世界一になるんだという意気込みを持て。
  • 亀井正夫2002:長所を見て配置する。責任をとる決断が部下を動かす。部下の家族関係を知る。公私の別は率先垂範する。常々現場の状況を把握する。
  • 諸橋晋六2013:朝、会社の玄関に入るときに、下腹にエイッと力を入れて、ここからが修羅場だぞと自分に言い聞かせた。

生誕

  • 織田信長1534
    • 是非に及ばず
    • 臆病者の目には、敵はつねに大軍に見える。
  • 塙保己一1746:やれやれ、目明きとは不自由なものじゃな。
  • 岸田劉生1891:醒めよ、吾が冷き理性、醒めよ、吾が、強き意力、常に爾(なんじ)を欺(あざむ)きて、眠らせんとする、卑屈なる吾を鞭打て、吾は弱し、されど、吾は、吾自ら進まざる可らず。醒めよ!常に醒めよ!
  • 河合隼雄1928:いまの人は、みんな、「何かしなければ」と思いすぎる。
  • 妹尾河童1930:司馬さんの小説はガジュマルみたいだ。
  • 筑紫哲也1935: