子規の命日に、子規と漱石の句を楽しむ。

今日は正岡子規の命日だ。
子規と、そして親友だった夏目漱石の秋の俳句を味わってみよう。

子規
宵闇や薄に月のいづる音
林檎くふて牡丹の前に死なんかな
干柿や湯殿のうしろ納屋の前
柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺
団栗のゐろりにけむる山の家
月の秋菊の秋それらも過ぎて暮れの秋
菊を見ず菊人形を見る人よ

漱石
冷かな鐘をつきけり円覚寺
やや寒や石の仏を刻む音
逝く人に留まる人に来る雁
新しき蕎麦打って食はん坊の雨
朝霧も夜寒も人の情かな
野菊一輪手帳の中に挟みけり
有るほどの菊なげ入れよ棺の中
行天を踏張て居る仁王かな

「有るほどの菊なげ入れよ棺の中」は、漱石がロンドン滞在中に子規の訃報を聞いてつくった句であり、私もずっと覚えている。俳句については漱石は子規の弟子であるが、奔放な子規の句よりも、漱石のエッセイのような静かな深い句の方が、私には心に残る。