渡部昇一「実践 快老生活--知的で幸福な生活へのレポート」

渡部昇一「実践 快老生活--知的で幸福な生活へのレポート」(PHP新書)を読了。

 40年前に「知的生活の方法」(講談社)で一世を風靡した当時46歳の渡部昇一は今年86歳。この間、膨大な著作やメディでの発言があり、私も影響を受けてきた。

年をとらないとわからないことがある、という。以下、新しい知見などをピックアップ。

  • 喜寿の77歳で2億円の借金をして巨大な書庫をつくり全蔵書を書棚に飾っている。音楽家となった娘や息子の高額な楽器を買うために若い頃から借金生活だった。
  • 金婚式は素晴らしい。50年以上の記憶を二人で共有している人は配偶者しかいない。
  • その健康法を実践している人が長生きしているものを選ぶにかぎる。
  • 午後1時間の昼寝
  • 塩谷信男先生の「正心調息法」。息を吸う・息を止める・下腹部に力を入れる・息を吐き出す・小さな呼吸を一つする。この動作を一日に25回繰り返す。
  • 真向法
  • 伊豆の石原結実先生の断食サナトリウム。人参ジュース。年2回。
  • 自分が居るべき場所にいると感じるのは、自分が築いてきた書庫兼書斎に入っているときである。
  • 文科系は蓄積。高齢者に適しているのは、修養、人間学がいい。
  • 「凡そ生気ある者は死を畏る。生気全く尽くれば、この念もまた尽く。故に極老の人は一死睡るが如し」(佐藤一斎「言志耊録」)。苦しまずに死にたいのであれば、最良の答えは「長生きをすること」に尽きるのではないだろうか。
  • 床暖房
  • 伊勢物語万葉集三国志吉川英治)。中島敦「弟子」。百人一首
  • カント「視霊者の夢」。パスカル「パンセ」。
  • 高橋是清。「仮にある人が待合へ行って、芸者を呼んだり、贅沢な料理を食べたりして二千円を費消したとする。、、料理代となった部分は料理人等の給料の一部分となり、料理に使われた魚類、肉類、野菜類、調味品等の代価およびそれらの運搬費並びに商人の稼ぎ料金として支払われる。、、芸者代として支払われた金は、その一部は芸者の手に渡って、食料、納税、衣服、化粧品、その他の代償として支出せられる。、、、二千円を節約したとすれば、この人個人にとりては二千円の貯蓄が出来、銀行の預金が増えるであろうが、その金の効果は二千円を出ない。しかるに、この人が待合で使ったとすれば、その金は転々して、農、工、商、漁業者等の手に移り、それがまた諸般産業の上に、二十倍にも、三十倍にもなって働く」(高橋是清「随想録」) 岡本綺堂「半七捕物帳」

  • 幸田露伴「努力論」。惜福(福を浪費しない)。分福(福を他人に分かち合う)。植福(人世の慶福を増進長育する)。

  •  本多静六「私の財産告白」。2割食い。十割益半分手放し。四分の一貯蓄。一日一ページ、三ページ。

渡部昇一は向上心が高く、そして何より素直な人だと思う。人がいいといいものは何でも試してみている。健康についても関心が強く、あらゆるものに手を出している。また先人のいうことには素直に従ってみている。本で学ぶ、人から学ぶ、そういう謙虚な姿勢は好感が持てる。

この本のオビには「最終結論」とあるけれども、それはまだ早い。この人が、米寿、卒寿、白寿と年齢を重ねて、その都度何を言うか、楽しみだ。

 

「名言との対話」12月1日。中村天風

「どういう風に毎日、一日の人生を生きることが、一番我意を得たものになるかという、その考え方が、人生観なんです」

 中村 天風1876年7月30日 - 1968年12月1日)は日本の思想家実業家。日本初のヨーガ行者で、天風会を創始し心身統一法を広めた。「天風」という号は天風が最も得意とした随変流抜刀術の「天風」(あまつかぜ)という型からとられたものだ。

柳川藩の出身。修猷館で学ぶが熊本済済高学生を正当防衛で刺殺すし退学。その後、玄洋社頭山満に預けら、気性の荒さから「玄洋社の豹」と恐れられた。日露戦争に備えて潜入した満州では「人斬り天風」と呼ばれる。肺結核北里柴三郎の治療を受ける。親交のあった孫文の親類になりすまして肺結核患者には渡航許可の下りなかったアメリカへ密航。コロンビア大学で学ぶ。帰国途上でインドのヨガの聖人・カリアッパ師と邂逅、そのまま弟子入りしヒマラヤで2年半修行。インドから日本へ向かう途中で孫文の第二次辛亥革命に巻き込まれ中華民国最高顧問に就任。帰国後は銀行頭取などを歴任するが、ある日感じることがあり一切の身分、財産を処分し、心身統一法を説き始める。

  • 人々の心に勇気を与える言葉、喜びを与える言葉、何ともいえず、人生を朗らかに感じるような言葉を、お互いに話し合うようにしよう。
    いかなることがあっても、また、いかなることに対しても、かりにも消極的な否定的な言動を夢にも口にするまい、また行うまい。そしていつも積極的で肯定的の態度を崩さぬよう努力しよう。
    俺は体が弱いと思ってりゃ体が弱くなる。俺は長生きできないと思っていりゃ長生きできない。俺は一生不運だと思っていりゃ不運になる。つまりあなた方が考えているとおりにあなた方にあなた方がしているんです。
  •  人生も国家の命運も、最終的には個人の根底に流れる精神力による決断力と行動力に委ねられる。
  • 陽気の発する処、金石また透る
  • 「肛門を締める」につれて両肩の力を抜き、静かに息を吐く動作から始まる。
  • ザックリと人生を捉えよ
  • 一芸とは一つの芸事のみを指すのではなく、それに打ち込むことで、「心の修行」に励み、悟りの境地に到達するという意味なのだ。

人生観というと大げさになってしまう。1年365日として100年生きたとしても3万6千5百日。この有限の生涯の貴重な今日一日をいかに過ごすべきか。こういう問いを発し、その答えを実践していくことが大事だと天風先生は教えてくれる。波瀾万丈の人生を生きた天風の言葉は心に沁みるものがある。

 

「副学長日誌・志塾の風161201」

  • 事務局との定例ミーティング:最終講義、、、。
  • 渡辺先生にゲスト講師でみえた小学館の青山さん(プロデューサー・編集長)に紹介を受けて歓談。
  • 森島入試課長
  • いすず自動車の渡辺さんと安藤さんがみえて講演の依頼あり。13年前のVE大会での基調講演が契機となったという。
  • 森島課長
  • リレー講座:中庭先生「地方再生の行方 ベッドタウンの迷い」
  • 奥山先生:新任の丹下先生の件
  • 川手総務課長:予算