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「名言との対話」3月16日。吉本隆明

  • 「ほんとうに教養のある人というのは、どういう人のことを言うか。それは要するに、日本の現在の社会状況、それに付随するあらゆる状況が、どうなっているかをできるだけよく考えて、できるだけほんとうに近いことが言えるということです。」
    • 詩人、評論家、思想家として、戦後の論壇を風靡した吉本隆明は2012年3月16日に卒した。
    • 戦後の主な論争のほとんどに関わってきた吉本の言葉は大きな影響力を持っていた。私の世代でも信奉者が多かった。また亡くなる最近まで、この人の言説は注目されていた。
    • 団塊の世代は親が寄せる期待と自分たちの置かれた境遇の差にとまどった。その結果が暴力的な運動だった。全共闘運動のなかで教養エリートを過酷に相対化した吉本隆明に対する共感が生まれていく。確かに吉本はあの時代のヒーローだった。そして教養主義を駆逐した大学はレジャーランドになっていった。ポスト全共闘世代は卒業資格をとることを目的として静かなキャンパスで生きていく。そしてレジャーランドの大学の住民はビートたけしによる知識人殺しを歓迎する。
    • 教養という言葉の解釈で明け暮れるべきではない。そうではなくて「教養のある人」とはどういう人を指すのかという問いを立てるのがいい。吉本の言う「現在の状況」とは歴史と地理の交点である現在の時代状況を認識し、それを語り、その状況の中でいかに生きるべきかを毎日問い続けながら、行動している人ではないか。現在を真摯に生きようとしている人である。