千住博「NYアトリエ日記」−−幸せと平和と共感と。

軽井沢千住博美術館。
館内4カ所のガラス張りの大きな吹き抜け空間、ゆるい下り坂の地形を活かした傾斜のある床、総ガラス張りの壁面や屋根美しい曲線を描いている。展示されている絵もいいが、建築界のノーベル賞と称されるプリッカー賞を受賞した西沢立衛の設計も素晴らしい。

千住博「NYアトリエ日記」で、この美術館のスポンサーはユーキャンの品川恵保会長だった。

NY(ニューヨーク)アトリエ日記

NY(ニューヨーク)アトリエ日記

朝6時半にアトリエに顔を出し15-16時間を過ごす。そういう生活を20年以上続けている。その1年間の日記である。千住博が本気で全人生を絵に賭けている姿がみえてくる。

作品。羽田空港、新博多駅などの作品は見逃していた。一つ一つが大プロジェクトだ。

  • 羽田空港の新国際線ターミナルの滝の大作「ウオーターシュライン(水の神殿)」「SKY」「フードコート」「回廊の往く雲シリーズ」、「国内線第2ターミナル天井画・銀河」「東風(あゆのかぜ)」「空と森」「夜の湖畔」
  • 直島「家」プロジェクト、
  • APEC2010首脳宣言の舞台となった巨大な滝作品、
  • 博多駅壁画、
  • 徳寺聚光院本院の襖絵。

本書から。

  • テーマは、「滝」、そして「崖」。
  • 他人はごまかせても、自分はごまかせない。
  • 一筆入魂
  • 岩絵の具ありき。これが日本画の原点。
  • 費用のことを考えていては絵は描けない。
  • 子供たち3人の名前は、光、碧、悠である。
  • 土曜もに日曜もない。ただ、人生を振り返り、考えてみれば、好きなことをしてきた三十年だ。
  • 芸術の究極の目的は、、、「幸せになること、世の中が平和になること」である。
  • 芸術の使命は様々なる多様性に満ちた池にゃ立場を認め合い、同じ人間としてそれを共感し、ハーモニーを奏で、そして他人の哀しみを自分の哀しみとして感じ、他人の喜びを自分の喜びとして感じることだろう。

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「名言との対話」3月26日。ベートーベン。

  • 「音楽は、一切の知恵・一切の哲学よりもさらに高い啓示である。、、、私の音楽の意味をつかみ得た人は、他の人々がひきずっているあらゆる悲惨から脱却するに相違ない。」
    • 「勇気を出そう。肉体はどんなに弱くともこの精神で勝ってみせよう。いよいよ、25歳だ。一個の男の力の全部が示されるべき年齢に達したのだ。」弱い体を自覚しつつ、志に実現に向って起つ決意をしている。
    • 「僕の最も大切な部分、僕の聴覚が著しくだめになって来たのだ。、、、僕の仕事では、これは恐ろしい状況だ。」これは耳が聞こえなくなりつつある状況を憂いている姿だ。
    • 「おお、僕がこの病気(聾疾)から治ることさえできたら、僕は全世界を抱きしめるだろうに!、、、少しも仕事の手は休めない。眠る間の休息以外には休息というものを知らずに暮らしている。」進行する病の中で、燃焼しきろうとする決意と闘争的日常。
    • ベートーベンは同業の天才たち−−ヘンデル・バッハ・グルッグ・ハイドン−−の肖像画から忍耐力をもらって、冒頭の言葉が示すように、あらゆる人の苦悩を自分の音楽で救おうとしたのである。私自身は音楽には縁が薄いのだが、電車の中でついヘッドフォンで聴いてしまうのは、やはりベートーベンの音楽だ。「田園」には安らぎを感じ、と「第九」では魂が震える。