朝井まかて「眩(くらら)」--江戸のレンブラント・葛飾応為の物語

朝井まかて「眩(くらら)」(新潮社)を読了。

眩

葛飾北斎の娘・応為の物語。

北斎の日常と絵への考えはいかに。

  • この世は円と線でできている。
  • 描きすぎちゃあ、野暮になる。
  • 下手な鉄砲でも数打ちゃ、そのうち何かには当たる。絵も戯作も、数をこなさなねぇと物にはなんえ。
  • 来た仕事は断るんじゃねえ。
  • ものを見る目が広い。蟻の頭の擡げ方を地べたから見上げるかと思えば、東海道の名所を鳥のごとく上空から見晴るかす。
  • 描く技を磨きててぇなら真似て真似て、躰の中に叩き込め。技もねぇのに画風がどうのと余所見をすりゃあ、先は行き止まりだ。
  • 何が違うかっていやあ、遠近と陰影だ。まあ、真の景にちかい。異人らにとっては、目の前の物を正しく描き写したものが絵だ。
  • たとえ三流の玄人でも、一流の素人に勝る。、、こうして恥を忍ぶからだ。己が満足できねぇもんでも、歯ぁ食いしばって世間の目に晒す。やっちまったもんをつべこべ悔いる暇があったら、次の仕事にとっとと掛かりたがれ」
  • 俺は隠居なんぞしねぇと言い渡してあんだろう。俺には描きたいものがまだ、山ほどある。
  • 俺が70になる前に描いたものなんぞ、取るに足らねぇもんばかりだ。73を越えてようやく、禽獣虫魚の骨格、草木の出生がわかったような気がする。だから精々、長生きして、80を迎えたら益々画業が進み、90にして奥意を極める。ま、神妙に達するのは100歳あたりだろうな。百有十歳にでもなってみろ。筆で描いた一点一画がまさに生けるがごとくになるだろうよ。
  • 毎日、獅子図を描くのを日課にしている。毎日、描く、これが大事なのだ。日課獅子。
  • 巧いことと絵の奥意を極めることとは別だ。、、、つまり、描き続けるしかねぇんだ。

北斎と同時代の滝沢馬琴北斎とはいざこざが絶えなかった。しかし北斎が中風で倒れた時、突然現れて「葛飾北斎、いつまで養生しておるつもりぞっ」と噴くように言った。この敵の言葉に「養生はもう、飽いた」と絵筆をとった。この場面も見せ場だ。
この後、70を越えて、代表作「富嶽三十六景」に取り組み、大評判をとる。

さて、主人公の応為である。
後に、江戸のレンブラントと言われた光の画家。

  • そうか、光だ。光が物の色と形を作ってる。
  • 夜の闇の中でも、いくつもの光と影がある。
  • 色数を矢鱈と使わずとも、濃淡を創ればいくらでも華麗さは出せる。むしろ怖いのは色を用い過ぎることだ。

最後に、応為は「もう60かもしれないが、先々のあたしから見たら、今日のあたしがいっち若いじゃないか」と踏み出していく。

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「名言との対話」5月7日。エルバート・ハバード。

  • 「人生における最大の失敗は、失敗を恐れ続けることである」
    • 中年から文筆活動を開始したアメリカの作家。高踏的な芸術雑誌を発行する一方でエッセイを書いた。主な作品に米西戦争における一事件を題材にした「ガルシア将軍へのメッセージ」(1899年)等がある。世界中で最も多くの人々に大きな1歩を踏み出す勇気を与えた小さな1冊だ。5月7日、没す。
    • この作家には仕事上の名言が多い。「報酬以上の仕事をしないものは、仕事並の報酬しか得られない」「 明日いい仕事をするための最良の準備は、今日いい仕事をすることだ」「天才とは、絶え間なく努力を続けられる人間のことである」「心を込めて仕事をしなさい。そうすればあなたは必ず成功する。なぜなら、そういう人はほとんどいないからである」「幸運とは、不屈の精神のことである」。まったくその通りだ。
    • 失敗を恐れては成長はない。失敗しないと本当のことはわからない。失敗を恐れ続けて成功もしない、幸福にも縁遠い人生は人生とは呼べない。まずは、小さな失敗を重ねよう。