多摩大リレー講座:寺島学長「2016年夏、世界をどう見るか」

リレー講座:春学期最終回。講師は寺島学長
テーマは「2016年夏、世界をどう見るか」

「世界」2016年3月号「脳力のレッスン特別編−−2016年への視座−−宗教とマネーゲーム」という論考の検証の形で、今の世界を鳥瞰する講義。

宗教

1492年まで。

    • 第二の衝突:十字軍:1096年から始まった5回の十字軍
    • 第三の衝突:1529年のオスマン帝国レイマン1世によるウイーン包囲。冬将軍。トルコの脅威。
    • 第四の衝突:1915年のサイクス・ピコ協定。大国の横暴。スエズ運河からの英国撤退。1979年のイラン革命、IJPCプロジェクト、シーア派イランの強大化、スンニ派イラクフセインビンラディン、ISの誕生。
    • 中東は長い間、振り回されてきた。日本は有志連合の一員と見なされている。日本の中東のにおけるプレゼンスは独特。第三の立ち位置。敬愛される国。新しい仕組みが必要になっている。

マネーゲーム

  • パナマ文書フィンテックタックスヘイブン。まっとうに働く社会という観点からのマネーゲーム批判。
  • 英国のEU離脱。Brexit
    • 若者はEU残留(20代66%)、老人は離脱という構造。エラスムス構想。
    • スコットランドは英国からの独立志向だが、EU残留希望。
    • シティはEUへの拒絶反応:ロンドンでは離脱派多数。シティはタックスヘイブンの中心地。金融取引税(欧州10ヶ国)などグローバル課税などを嫌悪。
    • Bregret(英国の離脱後悔):離脱後の展望がない。ジョンソンなど離脱牽引者の離脱。EUは独仏の和解から始まった。ドイツの一人勝ち。1ポンド5ドル時代、1975年1ポンド2ドル、現在は1ポンド1ドルへ。
  • 現下の日本:アベノミクスノ3年の総括。
    • 一人当たりGDP:シンガポール5.3万ドル。香港4万ドル。日本3.2万ドル(アジア3位・世界26位)。韓国2.7万ドル。台湾2.2万ドル。中国0.8万ドル。タイ0.6万ドル。東京は6万ドル、北海道は2.5万ドル。
    • 異次元の金融緩和:マネタリーベース2012年121兆円、2065年5月382兆円。貸出残高2012年397兆円、2016年5月432兆円。金融は大幅緩和したが、貸出は増えていない。
    • 財政出動:政府予算:2012年度495.6兆円、2016年度500.6兆円。政府債務:2012年度992兆円、2016年度1049兆円。借金が57兆円増えた、結局は後代負担へ。
    • 株価:2012年9108円、2016年6月9日16668円。株はあがった。GPIFによる年金資金で株を支える構造。第三の矢がお粗末だった。
    • 実体経済:勤労者世帯可処分所得:2012年42.5万円/月、205年平均42.7万円。家計消費支出:2012年28.6万円、2015年平均28.8万円/月。国民には恩恵はなかった。
    • 相模原モデルが重要。単身高齢者の社会参画を。16号線の外側、大都市郊外。

−−−−−−−−−−−−−−−
「名言との対話」7月7日。コナン・ドイル

  • 「ワトソン君、君は物事を見るが観察をしない」
    • コナン・ドイル(1859〜1930)は、英国の小説家・医者。私立探偵シャーロック=ホームズを主人公とする推理小説のシリーズで有名になった。推理小説というジャンルに初めて手を染めたのはポーであるが、それを確立させたのはドイルである。名探偵とその話の受け手であり助手であるワトソン役、そして不思議な事件を持ち込む依頼人というホームズものの型は、推理小説の正統な一つの典型として、クリスティをはじめとする以後の作家にも受け継がれ、今日もなお続いている。
    • 「全ての不可能を消去して、最後に残ったものが如何に奇妙なことであっても、それが真実となる」
    • 「ぼくにとっては、仕事そのものが報酬なんだからね」
    • ここにあげた言葉はすべてドイルが創作したシャーロック・ホームズの言葉だ。ホームズの探偵物語は名言の宝庫だが、その中でも冒頭の言葉出色だ。対象を見てはいるが、観察をしていない。この言葉には衝撃を受ける。定説に惑わされることなく、事実を直視することが大事なことだ。観察力こそがもっとも大事な能力だろう。