橋本卓典『捨てられる銀行2 非産運用』

 橋本卓典『捨てられる銀行2 非産運用』(講談社現代新書)を読了。

捨てられる銀行2 非産運用 (講談社現代新書)

金融庁の動きに注目!

日本の家計金融資産は現在1700兆円にまで達している。一方で、1995年との比較では205年末でアメリカが3.11倍、イギリスが2.27倍であるのに対して、日本は1.47倍に過ぎない。この3年の200兆円の増加は株の押し上げ効果が大きい。このうち、900兆円は眠ったお金の現預金である。年1%の運用で9兆となりGDP(530兆円)は1.7%増加となる。

日本の投資信託の規模は160兆円に過ぎない。購入時の手数料は3.2%で、アメリカ0.59%、。信託報酬は日本1.5%、アメリカは0.28%であり、手数料負けになってしまう。しかも過去10年の平均収益率はマイナス0.11%だ。アメリカはプラス5.20%。これでは資産形成ではなく、資産搾取だったことになる。

年金積立管理運用独法(GPIF)は130兆円、郵貯近郷200兆円、かんぽ生命85兆円を合わせると政府関連の機関投資家の総額は425兆円に達する。

個人の資産運用こそが日本に残された成長産業であるとの考えから、金融庁は過去の失敗を反省し大改革中である。「資産運用のリターンが低い。手数料稼ぎを目的とした顧客不在の金融商品sale。手数料水準やリスクの所在がわかりにくい」、こういった課題の解決のたえに、金融機関には顧客本位の業務運営を行うよう指導が始まっている。

機関投資家の運用先は日本国債中心であったのを、株式、外国株、外国債券への配分を高めたことによって、株式市場の成長と資産運用の発展を期して、日本における資金の流れを変えてきている。そのインフラのもとに、金融機関や家計資産の運用力を高めていこうとしている。

富裕層はプライベートバンキングなどを利用している。金融資産1000万円以下はインターネットを活用している。問題は、中間層だ。ここをターゲットとしたサービスはほとんど存在していない。

金融庁は金融機関へは「手数料等の明確化」「わかりやすい情報提供」「顧客にふさわしいサービス提供」などの顧客本位への転換を促す7項目の方向(フィデユーシャリー・デューティ)を示している。これが踏み絵となっており、金融機関は選択を迫られている。こうやってみると、最近のみずほの1万9千人の人員削減などの動きは、この備えであろう。厖大な公的資金の運用改革の流れの中で、1700兆円に及ぶ個人資産の運用が日本に残された成長産業となっていることは間違いないようだ。

 

「名言との対話」。11月13日。細川忠興「家中の者どもは将棋の駒と思え」

細川 忠興(ほそかわ ただおき)は、戦国時代から江戸時代初期にかけての武将大名

足利氏の支流・細川氏の出身で、足利義昭織田信長豊臣秀吉徳川家康と、時の有力者に仕えて戦国の世を生き抜き、肥後五十二万石の基礎を築く。

関ヶ原の論功行賞で丹後12万石から黒田豊前国中津33万9,000石に国替のうえ加増した。前領主は黒田長政である。豊後杵築6万石は、そのまま細川領とされたので39万9,000石の大名となった。その後中津城から完成した小倉城に藩庁を移し、小倉藩初代藩主となる。

正室明智光秀の娘・玉子で、細川ガラシャ夫人として知られている。 父・幽斎と同じく、教養人・茶人(細川三斎(さんさい))としても有名で、利休七哲の一人に数えられる。茶道の流派三斎流の開祖である。

「天下の政治は、四角い重箱に丸い蓋をするようになさいませ」。2代将軍徳川秀忠に、天下の政治をどのようにすればよいか聞かれてこのように答えている。あまり細かいことを指摘するなという教えである。

父・細川幽斎はまれにみる才人であった。忠興は「齢八十にして、親父の云うことようやく心得たり」と述懐している。忠興は努力の人であった。

冒頭の「将棋の駒」は息子へ忠隆が部下の統制について尋ねたときの回答である。つまり飛車や角などは重役陣であり、金銀は中枢を担う管理職であり。桂馬や香車は戦闘現場で働く指揮官である。それぞれが大事な役割を果たす大事な部下だ。「しかし、一番大事にしなければいけないのは歩だ。歩を大事にしない王はやがて窮地に陥る」と最後に述べている。先にあげた徳川秀忠に対する答えと同様に、トップの心構えとして出色の教えである。