季刊同人誌「邪馬台」の2018年夏号:「読書悠々」は18回目。

郷里中津の同人誌「邪馬台」の2018年夏号。連載「読書悠々」は18回目、ということは季刊だから4年半。

「平成命日編」:河原淳『雑学人生のすすめ』(新人物往来社)。小西和人『楽しみを釣る』(エンターブレイン)。松本重治『上海時代--ジャーナリストの回想』(中公文庫)。淡路恵子『死ぬ前に言っとこ』(廣済堂出版)。佐瀬昌盛『むしろ素人の方がよい--坂田道太』。文藝春秋別冊『大島渚--日本を問い続けた世界的巨匠』。

「編集後記」には、「久恒啓一氏の「読書悠々」は回を重ね佳境に」とあった。期待に応えていこう。

中津北校同級生の20回生の「団塊の自分史」は猪俣君の「中国国営企業買収と運営顛末3」は力作。同じく松田君のビジネス川柳5作のうちでは「爺ちゃんの口癖いつも老婆心」(不良長寿)が最高だ。

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  午前は多摩キャンパス。

・ラウンジで中村その子先生:ゼミのあり方。

・Tスタで中村その子先生と対談。その子先生の座右の銘「あわてず、さわがず、たじろがす」を巡る会話が30分。どんな仕上がりになるか、楽しみだ。

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・夕刻は、品川キャンパスで大学院運営委員会に出席。2019年度学年暦。ディプロマポリシー。2019年度カリキュラム。春学期VOICE。教務分科会報告「紀要」。入試広報分科会。FD研修会。多摩大出版会。

・その前に今年3月28日に開館した新大塚の「鈴木信太郎記念館」を訪問。フランス文学者。

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「名言との対話」6月28日。宮澤喜一「一億一心の対極、それがリベラル」

宮澤 喜一(みやざわ きいち、1919年大正8年)10月8日 - 2007年平成19年)6月28日)は、日本大蔵官僚政治家

宮澤喜一の年譜を眺めると、大蔵大臣秘書官時代を含め26歳あたりから84歳での衆議院議員引退まで60年近く、保守本流として自民党と政権の中枢で長く仕事をしたことに驚きを覚える。『宮澤喜一回顧録』を読むと、戦前から戦後、そしてイラク戦争あたりまでの歴史がみえてくる。

宮澤は父の友人であった保証人・池田勇人との縁で大蔵省に入り、30差前後で池田大蔵大臣秘書官をつとめたところから人生が決まっていく。池田勇人が総理になったとき、師匠の吉田茂は反対したが、「寛容と忍耐」というフレーズでデビューした。大平正芳が「忍耐」を提案し、宮澤が「寛容」を提案した。

経済企画庁長官通商産業大臣外務大臣内閣官房長官副総理大蔵大臣郵政大臣農林水産大臣財務大臣初代)、内閣総理大臣などを歴任した。政治家生活50年のうち、閣僚であったのは実に18年であった。「戦後政治の生き字引」と言われた。

安倍晋太郎竹下登らと共に「ニュー・リーダー」と称されたグループの一人となり、この3人は安竹宮と呼ばれた。総理総裁は推されてなるものと考えていた宮澤は1991年に72歳で総理に就任している。

政界きってのインテリであった宮澤は、酒豪、酒乱でもあり、温厚な外見に似ず毒舌家でもあった。新聞記者であった私の先輩は宮澤をイヤな奴だと嫌っていた。どうも人格者とは言い難いようだ。京都に行くと必ず司馬遼太郎梅棹忠夫と酒を飲んだとのエピソードがある。「司馬遼太郎は日本を描いた、宮澤喜一は世界を見た、梅棹忠夫は人類を考えた」。これは、2011年にウメサオタダオ展で見かけた言葉である。この3人の酒席での会話を聞いてみたいものだと思ったことがある。

「政界随一」と謳われた宮澤の英語力は有名だが、宮澤自身は東洋的な思想を好むと述べ、しばしば好んで漢詩を引用した。総理退陣の時の心境として、王昌齢の「一片の氷心玉壷にあり」を挙げている。

「政治家というのが、そういう特殊な人間であってはいかん、と思うのです。むかしのギリシャみたいに、市民みんなが、当番でもって代議士になり、大臣になったりする、そういう性質のものとして考えるようになるべきだ」

宮澤の考えはこうだ。日本が核兵器を持った一流の軍事大国になることは日本のためによくない。日米関係の下に日本の安全保障があることはやむを得ない。そして21世紀の日本には、軍事大国にならないことと、経済援助を大事にし経済援助大国になることを提唱している。

現在では影の薄くなった保守本流ハト派宏池会の流れの中にあった宮澤喜一は、リベラルとは「一億一心の対極」にあると述べている。一億火の玉、一億総保守、、など時代の空気に同調しない。主義主張を声高に論じるのではなく、全体の制約から距離を置いて、独立した個人とした自由な生き方、自分で考えることを抛棄しない、自立自尊、それがリベラルであるということだろう。心したい言葉である。 

聞き書 宮沢喜一回顧録

聞き書 宮沢喜一回顧録