終戦記念日--NHKスペシャル「ノモンハン 責任なき戦争」

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 終戦記念日の夜、NHKスペシャルは「ノモンハン 責任なき戦争」をみた。

NHKのPR:「モンゴル東部の大草原で、日ソ両軍が激戦を繰り広げたノモンハン事件ソ連軍が大量投入した近代兵器を前に、日本は2万人に及ぶ死傷者を出した。、、情報を軽視した楽観的な見通しや、物量より優先される精神主義など、太平洋戦争でも繰り返される“失敗の本質”が凝縮されていた。しかし軍は、現場の将校には自決を強要した一方で、作戦を主導した関東軍のエリート参謀たちはその後復帰させ、同じ失敗を重ねていった。、」

このドキュメンタリーは考えさせられた。、、曖昧な意思決定。重大な越境爆撃方針を参謀本部に計らず関東軍の独断。縁故・情実人事。大元帥の意向無視。若手の意向を阻止できない上司。現場の独断を止められない中央。2万五千のうち8割の2万人が死傷というほぼ全滅の惨状、未曾有の敗北。ソ連軍は5万7千のうち2万五千が死傷。圧倒的な物量に負けた。責任は参謀本部関東軍の司令官・参謀でなく現場の将校に押しつけて自決を強要。、、、、、。

情報軽視、精神主義、無責任体制。日本敗戦の失敗の本質の原型がみえる。明治憲法天皇の持つ無限責任は、補弼する人たちに人を得なければ、巨大な無責任に転落する危険性を秘めていた。責任がどこにあるか、はっきりしないというあいまいな意思決定が蔓延していた。その危険が顕在化した戦争だった。日本は2年後の大東亜戦争も開戦から終戦まで、この体質で突き進んでいる。その結果が310万人の死者と敗戦である。始めるときも、終わるときも、責任の所在ははっきりしない。戦後も「1億総懺悔」という曖昧な責任になる。戦犯を含む戦前の指導層の復活、、、。日本人自身での総括はいまだ行われていない。

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今日は多摩丘陵病院で人間ドックで検診。

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 「名言との対話」8月15日。丸山眞男自由は置物のようにそこに『ある』のではなく、現実の行使によってだけ守られる、いいかえれば日々自由になろうと『する』ことによって、はじめて自由でありうるということなのです」

丸山 眞男(まるやま まさお、1914年大正3年3月22日 - 1996年(平成8年)8月15日)は、日本政治学者思想史家

戦時中兵役に就いた丸山は参謀部情報班に転属し、連合通信のウィークリーをもとに国際情報を毎週報告。入手した情報を「備忘録」と題するメモに残している。8月6日、司令部から5キロメートルの地点に原子爆弾が投下され、被爆する。後に「上官の意向をうかがう軍隊生活は(大奥の)『御殿女中』のようだった」と座談会で述べている。1946年に雑誌「世界」に「超国家主義の論理と心理」を発表。日本型ファシズムと日本政治を分析した。1950年(昭和25年)6月、東京大学法学部教授に就任。戦後民主主義オピニオンリーダーとしてアカデミズムとジャーナリズムを架橋した。丸山の学問は「丸山政治学」「丸山思想史学」と呼ばれた。

ベストセラーとなり、大学生必読の書となった岩波新書『日本の思想』 (1961年)は、大学時代に私も読んだ。普及の速い外来思想と持続する伝統思想の対応(対決ではない)を全体としてとらえ、そのなかで個々の思想を位置づけながら、日本近代化における思想の機能を解明しようとした書である。丸山は無限の包容性とそれ故の雑居性を特徴とする日本の、思想の全体構造の発展をとらえようという難題に挑んだのだ。丸山眞男の分析は鋭く、一気に本質に迫っていく。寺島実郎が雑誌「世界」に書き続けている「17世紀オランダからの視界」と、それに先立つ20世紀を検証した論考と戦後日本を総括した論考は、この丸山のテーマを広い視界から深掘りしようし、全体図を描こうという試みであろう。

 丸山眞男の言葉から、現代にも通ずる警句をピックアップ。

「政治から逃避することが逆に政治に影響を及ぼす、という逆説

「「専門バカ」のインテリはたしかにいる。しかし「専門」さえもたない「インテリ」評論家の知性とは一体何だろう。むしろ庶民バカの方がまさること数等である」

伝統的な血縁・地縁の「である」社会から、他人との関係をとり結ぶ「する」組織への移行が日本の近代化であるのだが、その二つはごった煮になっていて、本音と建て前が共存し、その葛藤が延々と続いていると丸山はいう。

自由を賞揚する、自由を擁護する。その先に自由を行使することがある。権利の行使を怠っていると、いつのまにか自由ではなくなっていることに気づくはめになる。権利の上に眠らず、権利を日々行使し続けよ、自らを鍛えよ。丸山眞男のメッセージだを受けとめたい。

 

日本の思想 (岩波新書)

日本の思想 (岩波新書)