黒澤明『蜘蛛巣城』

黒澤明監督の評伝『人間 黒澤明の真実 その創造の秘密』(都築政昭)を読んで感心した。改めて彼の作品を鑑賞している。

蜘蛛巣城』は、シェークスピアの戯曲『マクベス』を下敷きにした戦国もので、主君をあやめる主演の三船敏郎の演技が素晴らしかった。この人の「目」がいい。妻の浅茅役は山田五十鈴で、手を「血が取れぬ」と洗い続ける発狂の演技も迫力がある。能の様式美を取り入れた作品だ。「無常」を感じさせる。

次は志村喬主演の『生きる』を見ることにする。

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黒澤語録から

「僕は芸術家よ呼ばれるより、映画の職人と言われる方が本当は好きなんだ」

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 「名言との対話」9月15日。渡辺美智雄「上を見て働け、下を見て暮らせ」

渡辺 美智雄渡邉、わたなべ みちお、1923年大正12年7月28日 - 1995年(平成7年)9月15日)は、日本政治家

自民党政務調査会長厚生相農水相蔵相通産相副総理外相閣僚を歴任。中曽根派を継承して派閥の領袖として活動。 

栃木弁丸出しの歯に衣着せぬ話術でマスコミにも積極的に登場し茶の間の人気を得た。一方で、失言も多く、度々舌禍事件を起こした。総理への道をあきらめきれないまま、1995年9月15日、膵臓癌のため死去した。まだ72歳だった。栃木県大田原高校で同級だった、私の叔父から「ワタナベ」のことはよく聞いていた。薬剤師だった叔父は、渡辺美智雄厚生大臣になったのを喜んでいた記憶がある。ミッチー節は面白かった。

渡辺美智雄の失言は直接的で品の問題がありここでは紹介できないが、以下、参考になる名言を拾ってみる。

・ 思い切って決断すると、意外と道は開ける。

・直感・実感・大局観。どれかひとつだけではダメ。

・政策に上下なし、酒席に上下あり。

・悪名は無名に勝る。

・温故知新というのは、、、「先祖の知恵の中にいまの答えがある」ということ。

・水清ければ魚棲まず、外来種も大いに歓迎するがピラニアは許さない。

政治家と病気には物語が多い。安倍晋太郎も健康問題で総理になれなかった。「安竹宮渡」と呼ばれたニューリーダーの一角を占めた渡辺美智雄もそうだ。ポスト竹下を目指したが、リクルート事件で逼塞を余儀なくされ、宇野宗佑に総理の座を奪われた。中曽根がオーナーの派閥会長になったが、膵臓癌の手術を受け健康に不安があった。1991年の自民党裁選では宮澤喜一に継次ぐ次点で副総理、1993年の再出馬では河野洋平に敗れた。1994年には細川内閣退陣の際に新生党小沢一郎から離党を条件に総理を打診されるが失敗している。1995年の総裁選では同期にの橋本龍太郎を支持した。病気のためのあせりもあったのだろう、トップに後一歩届かなかったのは無念だったろう。

「上を見て働け、下を見て暮らせ」は、自民党から離党して「みんなの党」をつくった息子の渡辺喜美に語った言葉だそうだ。これは心したい名言だ。