新著『新・深・真 知的生産の技術』(NPO法人知的生産の技術研究会編)。
3月5日発刊。本日の日本経済新聞に広告。
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あとがき
1969年に刊行された梅棹忠夫『知的生産の技術』に触発されて、八木哲郎が1970年に設立した「知的生産の技術」研究会(知研)は、市民の勉強会として、後にはNPO法人として、数多くのセミナーの実施、書籍の刊行、著者の育成などを行ってまいりました。梅棹先生には会の顧問をお引き受けいただき、私自身何度も大阪の国立民族学博物館を訪問し、先生の謦咳に接する機会を得たことは実に得難い幸運でした。
1990年に梅棹先生が亡くなった時、知研は機関誌「知研フォーラム」で、梅棹先生の追悼特集を組みました。このとき多くの会員から梅棹先生に影響を受けたことを記された文章が寄せられました。この中から初期からの会員である北海道の岩瀬晴夫、東京の小野恒、名古屋の加藤仁一という3人の方のエッセイをこの本には載せております。
また、八木哲郎会長には、梅棹先生の代表作のひとつである『文明の生態史観』の解説を書いていただきました。
2020年に知研は創立50周年を迎えます。そしてこの年は梅棹先生の生誕100周年にもあたります。2020年10月17日には「創立50周年記念フォーラム」を国立民族学博物館と協力して行う計画もあります。現在創立50周年に向けて知研は、組織の再整備を行っている途上にあります。活発に活動中の関西、岡山に続き、沖縄、九州、東北、宮島などの地域知研が一昨年、昨年立ち上がり、今年は北海道においても設立の準備が進んでいます。2020年には「新生知研」のくっきりした姿が見えるようにしたいと考えております。
この『新・深・真 知的生産の技術』は毎年継続して発刊を予定しており、セミナーもそこへ向けてテーマと講師を選んでいくことになります。
梅棹忠夫先生の功績の広さと深さは言うまでもありませんが、忘れてならないのは市民に熱烈なファンが多いことです。私たちは情報産業の時代の中で、市民のキャリアと人生に大きく、深い影響を与え続けてきた梅棹先生の考えを進化させていくことを使命として、今後も全国の仲間とともに励んでいきたいと思っています。
久恒 啓一
午前
・教授会:卒業判定
・FRC:共同研究
夕方:スーパー銭湯。
「名言との対話」2月23日。田村義也「装丁・造本という仕事は、編集者の仕事の中でその最後の仕上げであり、まとめである」
田村 義也(たむら よしや、1923年 - 2003年2月23日)は、日本の編集者、装幀家。
岩波書店に入社し、『世界』、『文学』などの編集長をつとめた。また書籍の装幀も手がけたことで知られる。田村の装幀は独特の書体と風合いを持つ特徴的なもので、多くのファンをもつ。第13回講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。
「ある距離をおいて介在し、全体を按配するのが編集者の仕事である。もとより、編集者は表に出るべきでないから、いわゆる『黒衣』のごとく、『縁の下の力持ち』として立ち回る。したがって、注意深い編集者がいないと、完璧な本はなかなか生まれない」。『田村義也装丁作品目録 1959~2003』によると、田村義也装丁作品数は44年間でおよそ1400冊にのぼる。全作品を並べたら、どういう風景になるのか、想像すると楽しい。
田村義也の追悼集『田村義也 編集現場一115人の回想』を読んだ人からは「いい時代の幸せな編集者たちですね」という声があったそうだ。今は著者との濃密なやりとりはなくなっている。30年ほどの間、著書を刊行してきた私の経験からも、優れた編集者に会う機会が減ったという感じもある。
「装丁・造本という仕事は、編集者の仕事の中でその最後の仕上げであり、まとめである」は「編集装丁者」と好んで名乗った田村義也の言葉だ、装丁で大事なのは、書名と目次作りや構成だ。田村義也の装丁には「背文字」の強さがある。学生時代に愛読した本多勝一『極限の民族』(朝日新聞社、1967年)、『戦場の村』(朝日新聞社、1968年)なども装丁家・田村の仕事だった。安岡章太郎の小説の装丁も多く手掛けている。没後には、 『背文字が呼んでいる 編集装丁家田村義也の仕事』。『月の輪書林 古書目録14 田村義也の本』など、ファンたちが、田村義也の業績をしのんでいる。
新宿書房の村山恒夫代表によれば、デジタル編集のおかげで単行本の製作費は激減していおり、「ほんとうに出したい本」「だれも出さない本」「ぜひ残したい本」を出版することが可能な時代になった。日本中、世界中のフィールドワークの成果を発信することができる。まだまだ出版は面白いと、意気軒高な編集者もいる。
編集という仕事は、コンテンツの発見、創造に関与し、長い過程を経て、作品に結実させるという息の長い仕事であるが、最後の仕上げで注意を怠るとそれまでの努力が水の泡になる。100里の道も99里がまだ半ばであるとのことわざ通り、最後の一里が大事な仕事なのである。何事もラスト・ワンマイルを大事にしよう。
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