公務員研修の受講生の感想のまとめが届く:代表のまとめ。各人の研修の評価。印象に残った言葉。

先日行った公務員研修の受講生のまとめが届いた。これほどよくまとまった感想は珍しい。

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  ○全体(研修生代表まとめ)

・図は様々な方法で表現できるが故に完成形がないため、他者と優先順位・因果関係・包含関係などについて議論しながら作成でき、「意識を情報で合わせる」ことに繋がるのだと感じた。

・住民対応などで、相対化(一歩引いた視点、鳥の目線から説明)ができると、合意にいたるまでのスピードが早くなると感じました。物事の全体的な状況や成り行きに対する見方・判断ができるような“大局観”をもつよう心掛けておきたいと思います。

・都民との合意を得るために、行政側はこれまでの(定量情報)×(文章)に加え、(定性情報)×(図解)をもっと増やすべきである。

少子高齢化や情報化社会、新技術の発展等により、今後更に社会構造が複雑になり多様性が広がるため、行政を進める上で住民との合意を取ることは、難しくなると予想される。そこで、従来の説得型から納得型を取り入れ、図解を使用するテクニックを学べたことは大変有意義でした。

・図解の第一人者である久恒教授の講義を受けることができ、大変勉強になりました。教授自身がさまざまな問題をコンサルとして図解で解決に導いており、その経験を踏まえた講義内容となっていたため、合意形成にかかわる図解の役割や効果を理解することができた。

・著書やインターネット情報では、中々実感できなかった図解の効力を体感できて大変良い勉強となった。

・最後の取りまとめと研修生のコメント等を図解で示すことができら、良かったと思いましたが、箇条書きでの作成となったことお許しください。

 

【各研修生コメント】

○研修の評価

・箇条書きの問題点は非常に自分でも実感できた。図で示すことで理解が促進されるというのは自分の体験からもよくわかるし、とても重要だと思う。一方、具体的にどういうふうに仕事の流れ方が変わり、どのように改善したかというのがやや分からなかったところがあった。

・自分の仕事というシンプルなテーマであったが、図のみで表現することが予想以上に難しかった。普段から説明資料等に図を取り入れているつもりであったが、あくまでベースは文章であり、補足的な使い方であったと感じた。班の中で比較してみると、自分は調整業務のため関係者との繋がりを軸としている一方で、現場に近い業務の方は設計や維持管理が必要となる原因を表記していたりと、盛り込む情報の種類が全く異なっていることに気付いた。

・演習で実際に作業するなど、実践的で分かりやすかった。

・いかに図が重要か、わかりやすく教えていただきました。

・文章や箇条書きは、事柄の重要度の大小や重なり、関係性が見えにくいことが分かりました。また、図解で示すことにより、それらを分かりやすく示すことが可能になるとともに、自分自身の頭の整理が進むことを、演習を通じて実感できました。

・講師の著書を読んだ経験もあり、すんなりと話を聞き、納得することができた。特に、人に分かってもらう(分かり合う)には、文章から図解に変えることが有効であり、普段からその活用を意識したい。

・講師が実際に作成した図を用いての説明から始まったため、スムーズに話が入ってきた。

・研修を通して、箇条書きの情報の見えにくさ、図解にすることによる情報の見える化の効果が実感しながら学ぶことができた。図解思考という慣れない新しい思考であったため、講義時間がもう少し長いと良かった。

・事例や演習を交えた講義のため集中して取り組むことができた。また、数字や具体例を追記する必要性を学んだ。

・とても親近感のある講師の方に教えていただき、あっという間の講習でした。見やすい図解のテクニック論のような話を想定していましたが、意外にも図化に対してはシンプルで、関連付けるもの、A4内で取り上げるものなど、本質を教えていただき、勉強になりました。

・重要なポイントをや、エピソードを交えて説明いただき、大変わかりやすかった。

 

〇研修で印象に残った言葉

・箇条書きでは物事の重要性や関係性が示せない

⇒箇条書きは物事を表記するにはとても便利と思っていたが、むしろ楽をできるツールというほうが正しいと思った。思いつきを喋っていくことを正当化しているだけだったのかもしれない。

・図示では全体が分かる

⇒全体の関係性を考慮しないで部分のみの議論が行政ではとても多くみられると思う。他の分野への外部不経済や、本質的な阻害要因等をしっかりととらえて課題意識を共有するためには、図示は良い考えと思った。

・都民や知事について…

⇒都民や知事が図に書き込まれないのは、我々が知らず知らずのうちに考えが卑近になってしまっているのだということを感じた

・図を指摘されても不快に思うことはなく、一緒により良い物を作ろうとする意識が働く。

⇒図は様々な方法で表現できるが故に完成形がないため、他者と優先順位・因果関係・包含関係などについて議論しながら作成でき、「意識を情報で合わせる」ことに繋がるのだと感じた。

・行政方言をやめるべき

⇒優位に立とうとして難しい言葉を使用しても相手には響かない。住民向けの都事業説明文を取りまとめる機会が度々あるので、気を付けたいと思った。

・他者を納得させるには相対化する

⇒普段業務の中でも、相手方に要望を聞いてもらう場合は、全体的な状況や他の対応例と比較することでその必要性を訴えると、より理解を得られるのではないかと思った。

・箇条書きは良くない

⇒今まで意識せずに箇条書きを使用していたが、相関性を考慮することで図解の方が良いことが体感できた。

・図解

⇒様々なことに対して、図解での整理を試みようと思う。いろんな人の図解を見たいと思った。

・説得から納得

⇒人間は基本的に説得されるのは嫌いで、一緒に作り上げる意識にさせて、納得させるという考え方に感銘を受けた。

・説得ではなく納得へ

⇒参加と情報が大事。納得させるためには相対化することが重要であり、全体を見せる図解が有効である。

・行政方言

⇒都庁でしかわからない言葉”行政方言”は使わない。”標準語”を話す都民が”行政方言”を理解できないことが問題ではなく、”標準語”で説明できない行政側が問題。

・合意

⇒合意をはかるためには、都民(客)の視点で、(定量的情報から導いた)定性的な情報を、図解で説明することが重要である。

・真似について

⇒何も考えることなく、ただ単純に真似をするだけでは良くないことが分かりました。公務員は得てして過去事例や他自治体の実績などに解決策を求めがちなような気がします。私自身も、そのような傾向がありますので、今後は事業の目的や効果などをしっかりと踏まえた上で、良い事例を取り込んでいきたいと思います。

・相対化

⇒住民対応などで、相対化(一歩引いた視点、鳥の目線から説明)ができると、合意にいたるまでのスピードが早くなると感じました。物事の全体的な状況や成り行きに対する見方・判断ができるような“大局観”をもつよう心掛けておきたいと思います。

・知事の視点・都民の視点

⇒演習「私の仕事」で書き上がった図を眺めると、知事の視点・都民の視点が欠落していました。普段、直接都民に接することがない職場ではありますが、日頃から意識ができていなかったことの表れだと思いますので、今後は、頭の片隅に置いておけるようにしたいと思います。   

・箇条書きでは、物事の関係性・本質が見えない。                    一つの図が、⇒莫大な文章を用いても説明できない内容を語ることはよくあり、その有効性をもっと活用すべき(したい)と思う。また、つじつまが合わないものは図にできないため、それに気づけば再検討することができる。

・立場(担当職員、知事、都民)によって、見える景色が違う。合意を得るには、同じ景色が見えるように心掛けるとよい。

⇒「同じ景色を見ずして説得を試みるより、同じ景色を見えるようにして納得してもらうように心掛けるのがいい」というのは、確かにそうだと思った。

・行政は、行政方言を使いがちである。本来は、都民が分かるのが標準語である。

⇒都民との合意を得るために、行政側はこれまでの(定量情報)×(文章)に加え、(定性情報)×(図解)をもっと増やすべきである。

・同じ業務について図示をしても、それぞれが違う図を書く。

⇒同じ指示や事象・状況においても人によって捉え方・考え方が異なる、ということが可視化され興味深かった。

・図示する際は、矢印の太さや文字の大きさ等を変えることで関係を表すことができる。

⇒自分の書いた図は表現の仕方が一様で、重要性や関係性がわかりづらかった。図示をするというのも工夫がいると感じた。   

・箇条書きでは、それぞれの要素の関係性がわからない。

⇒相手に簡潔に伝えるために箇条書きを用いることが多かった。振り返ると、確かにその際には言葉による補足説明が多くなっていることがある。   

・文章だと皆違う理解となる。

⇒実際のワークで、文章を図にしたところ、廻りの人と違う図になった。(みなばらばらの図)文章による相互理解が低いということが分かった。

・人間は説得されるのは嫌い。文章は説得である。図であれば参加性があり納得となる。

⇒稟議書等の文章は説得するために書くが、すぐには納得してもらえず、細かい「てにをは」をつっこまれる。これには、参加性がないからだということが分かった。

・箇条書きは、その施策等の大小、重なり、関係が見えない。

⇒確かにおっしゃるとおりである。文章で書くときは、大小、重なり、関係に留意したい。

・箇条書きは情報が抜けている

⇒箇条書きで表現するときに2項目が重複していたり、関連し合っている場合の表現によく苦労していました。これからは図解してみようと思います。

・文章では、皆理解の仕方が違う

⇒文章では読み方や、書き手のぼかしが入るため、本来の情報と歪んだ理解を好きにできてしまうことは日頃から理解していました。良し悪しありますが。図解することで、共通の理解を得られることと、自分自身の考えも整理され、とても良い思考だと思いました。

・人は説得されることが嫌いな生き物である

⇒以前、上司に説得されたいのではない、安心させてほしいだけだ!と一喝されたことがあり、それから、相手が安心できる説明を心掛けているので、納得型はとても共感が持てました。

・箇条書きについて

⇒A、・B、・Cの箇条書きでは、それぞれの関係性や重要性が伝わらない。

・「てにをは」で殺人が起こる

⇒大げさな言い方かもしれませんが、管理職を中心に、資料のチェック依頼をすると、内容よりも「てにをは」等の体裁に注視する人が多いと思っていたので、共感しました。

定量情報、定性情報について

⇒「見える化」がトレンドであり、定量情報を出すことに尽力しているが、都民や事業者はピンときていないのではと感じた。

・「都民」と「知事」を関連付けて「私の仕事」を描くこと

⇒今の業務で精いっぱいですが、また、直接都民と関わる案件を担当していないからこそ、積極的に意識をしていきたいと思います。

・同じ職場でも図はすべて異なる。図を見れば相手の考え方がわかる。

⇒仕事に対する考え方、自分と周囲との立場の捉え方等、文字の大きさ、矢印の太さで異なるだろうと実感しました。職場の中で、図を合わせることも、違いを個性として認識することも必要なのかなと思いました。

・自分を中心に描くこと

⇒主役は自分なんだなと思いました。大学の鳥瞰図を見て最初は違和感がありましたが、(歴史的な風刺画を見ているような気分でした)、自分中心の鳥瞰図を描けるような人になるよう練習します。

・1枚の紙に表す際、人によって軸が違う。

⇒2次元的に情報を整理することまではできた。3次元的に整理するのは無理かと思ったが、工夫次第で表現できることが分かった。いい例をもっと参考にしたいと思った。

・説明するだけでなく、自分の知識の整理にも役立ちそう。

⇒人に説明する用だけでなく、特に事象がそれぞれ関連している場合に自分の知識を整理するためにも有用だと感じた。

・図の大小によって重要度を表現する。

⇒箇条書きの習慣がついていると、図解してもつい同じ大きさの図を並べて記述してしまう。

 

○都政や自らの仕事に関して参考となった点、今後の活用について

・今後、説明においては箇条書きより図をより使っていくようにしたい。

・図解は他者と考え方を共有する際に活用できる有効な手段だと思った。今後、業務や研修において、意識のすれ違いを生じさせないために取り入れていきたいと思った。また個人的に本を読む際にも、その内容を理解しながら図で記録することによって、自らの知識として着実に身に付けたいと思った

・日々の問題に対して、図解を書くことで、関係性を明らかにし、的確な課題の設定をすることができると思うので、積極的に活用していく。

・合意を図る方法について具体的に学べて大変勉強になった。合意を図るためには、まず、職員と同じ視点で物事を考えられるように情報を提供すること、図解で関心を持ってもらうこと、何がわからないかわかるようにすることなどが重要であり、納得してもらうことで行政参加意識を醸成すること大切だと感じた。合意に関する知識は、自分の日常業務においても都政の課題を考える際にも必要なことであるので、都政をよりよくするために活用していきたい。

・普段の業務で国や他自治体、業界団体等と意見交換や調整をする機会が多くありますので、今回の講義は非常に有意義なものとなりました。特に、図解による表し方については、演習などを通じてより良く見せる方法やテクニックなどを学ぶことができ、文章や箇条書きにはない効果も実感しました。今回の講義でお話しいただいた内容を踏まえ、自らの業務遂行能力を上げていきたいと思います。

・現在進めているテーマ別研究においても、班員での審議をより有益なものにするには図解が非常に有効である。自身での活用を心掛けるとともに、他のメンバーとも図解での審議を心掛けたい。

・普段、頭の中で考えていることを図示するということは、人に説明することに加えて自分の考えを整理する意味でも有効であると感じた。問題点を整理する際に実践してみようと感じた。

・仕事を図にすると、自らの理解が深まり、それが、人との合意に大きく役立つことが分かった。我々、東京都職員は各分野のスペシャリストよりも皆をまとめて行く役割の方が大きい。図解を活用しながら、各部署の横串になっていきたい。

・行政は住民説明など、多岐にわたる立場の人に共通の理解を得なければならないと考えますので、今回の図解思考を徐々に取り入れ、納得できる説明ができるよう鍛錬したいと感じました。

・レク資料など作成する際は、今回の講義で学んだことを活かしたいと感じた。

・演習の中で、自分の仕事に関わる人を図示することで、そのかかわりの過不足が明らかになることを学びました。また、関連する人をつなげることで、その図が連絡網になることもわかりました。現在、所属部署で局内の横断的な調整をしなければならず、そもそも登場人物を把握することに苦労して、樹形図を黙々と作っていた時期もありましたが、図示の良さを教えていただいたので、今後も積極的に使用したいと思います。

・会議などで議論をまとめる際、また説明資料を作成する際、図解によりわかりやすくまとめるヒントを学べた。本研修にも普段の業務にも有用な研修内容だった。

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「名言との対話」3月30日。蟹江敬三「自分が出るシーンは自分が主役」

蟹江 敬三(かにえ けいぞう、1944年10月28日 - 2014年3月30日)は、日本俳優ナレーター

子どもの頃は自閉症気味で赤面症もありおとなしかったのだが工業高校の文化祭でたまたま芝居をやって目が開き役者の道を歩むことになる。

日活ロマンポルノで強姦の美学」とまで言われた野性的な演技が話題になった。演技のうまさには定評があり、NHK大河ドラマにも数多く出演している。「勝海舟」の学友・田辺。「春の波濤」の幸徳秋水。「炎立つ吉彦秀武。「葵 徳川三代」の福島正則。「龍馬伝」の岩崎弥太郎。そして、朝の連続テレビ小説あまちゃん」の天野アキの祖父でもいい仕事をした。私もその一人だが、こういう番組で蟹江の演技を覚えている人も多いだろう。

当初は悪役が多く、子どもはいじめられたそうだ。蟹江は「ごめんな、パパが悪役で。でもこれが俺の仕事だ。お前たちは俺が守る」と言っている。そして後半は、刑事役などが多くなり善人役へ転身している。その息子の一平は今風なイケメンの俳優になって活躍中だ。

蟹江は「役には良い役も悪い役もない。面白い役かつまらない役かだけだ」として、「ひたむき」をモットーに演じていた。盟友であり厳しく演技を要求する演出家・蜷川幸雄は「蟹江の芝居に注文を付けたことは一度もない」「蟹江となら、心中してもいいと思った」と全幅の信頼を置いていた。「どうやって監督を裏切るか」を考え、工夫をしていた結果だろう。

名脇役だったが、「自分が出るシーンは自分が主役」と考えていた。「役は『作る』ものではなく『なる』もの」という信念だった。そのためには「まずは相手のセリフをよく聞く」ことから始めている。蟹江は「 どんな役でもやれるけど、でも、何をやっても「蟹江らしいね」と言われる俳優。そんな存在を目指して、この40年間やってきたつもりです」と語っているように、人がつけるレッテルからかけ離れた存在になろうとしていたのだ。蟹江敬三は、そのとおり「蟹江らしい」俳優になったのではないか。