菅谷明子『未来をつくる図書館ーーニューヨークからの報告』(岩波新書)ーーキーワードは「越境」だ。

菅谷明子『未来をつくる図書館ーーニューヨークからの報告』(岩波新書)を読了。 

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)

未来をつくる図書館―ニューヨークからの報告― (岩波新書)

 

 ニューヨーク公共図書館は4つの研究図書館と85の地域分館からなる複合体である。岩波ホールで上映中の映画と、菅谷明子の書いた岩波新書で、図書館という「知的インフラ」の持つ威力が話題になっている。

本館にあたる人文社会科学図書館。地域活性化。音楽・舞踊・演劇・録音からなる舞台芸術図書館。写真コレクションを持つミッド・マンハッタン図書館。映画資料館から発展したメディアセンターを持つドネル図書館。以上が4つの研究図書館である。市民の暮らしをサポートするのが85の分館で、資料提供。多様な講座など地域密着のサービスを行っている。

世界有数のコレクション。敷居の低さ。NPOによる運営。ビジネス支援。情報弱者のアクセス基地。無料データベース。ビジネス司書の存在。オフィス・スペースの提供。アクション図書館。ビジネス図書館。自立支援。世界最大の充実した医療情報サイト。不登校などを支援する学びの場。教師コーナー。子ども専用サイト。宿題ヘルプ担当者。テクノロジー・ロフト。移民支援機能。富裕層の寄付講座。電子ブックのデジタル・コレクション。ネット・ライブラリー。研究者・作家センター。人物資料の収集。

この本が描き出す図書館の、目を見張らせる広範な活動の鍵は「越境」である。もはや本を扱う図書館とはいえない。守備範囲を限定することなく、果敢にニーズに挑戦している姿は感動的だ。アメリカの底力を感じる。この図書館と同様に、美術館も、博物館も、各種資料館も、越境する意思を持てば社会はよくなるだろう。そして図書館とこれらの施設がネットワークされて、市民に優れたサービスが提供できたら素晴らしいと空想する。2万8千あるという日本の図書館には大いに刺激になるだろう。キーワードは「越境する意志」だ。越境する意志がイノベーションを起こす。岩波ホールで映画をみよう。

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午前:大学

午後:出版社で編集者と面談。次に品川の大学院で研究開発機構評議員会に多摩大学総合研究所長として出席。帰りは杉田副学長の車に同乗し、最近の学内情勢を聞く。

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「名言との対話」5月27日。高峰三枝子「映画よ青春をありがとう、映画よ仲間をありがとう、映画よ歌をありがとう」

高峰 三枝子(たかみね みえこ、本名:鈴木 三枝子1918年12月2日 - 1990年5月27日)は、日本女優歌手

父の急死で松竹大船に入た高峰は、「母を訪ねて」初出演し、理知的で美しい令嬢役で佐野周二佐分利信上原謙という二枚目三羽烏の相手役をつとめスター街道を走る。「暖流」「純情二重奏」「自由学校」「挽歌」「犬神家の一族」に出演し、映画女優として長く活躍した。また「南の花嫁さん」「別れのタンゴ」「湖畔の宿」などの大ヒット曲を持つ歌手でもある。歌う映画女優の草分けだった。1968年からテレビ「三時のあなた」の司会者を5年にわたりつとめ好評を博した。1982年の国鉄「フルムーンパス」のポスターに上原謙と登場して話題を呼んでいる。
映画女優としての評価も高く、受賞も多い。紫綬褒章ブルーリボン賞助演女優賞。「犬神家の一族」,日本レコード大賞(功労賞)。日本アカデミー賞特別賞。毎日映画コンクール特別賞。、、、。

「山の淋しい湖に、、。水にたそがれせまる頃、、、、いつか涙の陽が落ちる、、、」という歌詞の「湖畔の宿」をユーチューブで聴いてみた。特攻隊の慰問で歌った歌でもある。明日出撃する特攻隊の隊員は聞き入ったそうだ。この歌は志気をそぐとの批判があり禁止されたが、前線の兵士には人気があった。藤原恍作詞「想い出のボレロ」も改めて聴いてみた。52歳当時の美貌と美声を堪能した。

冒頭の言葉は、死後10数年を経た2013年放送のNHK「あの人に会いたい」の中で語った高峰三枝子の言葉である。生涯をかけて打ち込んだ「映画」がすぐれた歌と親しい仲間、そして素晴らしい青春など、人生のすべてを引き寄せてくれたという感謝の言葉である。