『女帝 小池百合子』のkindle版を読了。

 『女帝 小池百合子』のkindle版を読了。5月末発売ですでに15万部という空前の売れ行きで書籍(2750円)はなかなか手に入らない。kindleは1500円ですぐに入手できたので、一気に読んだ。大変優れた人物ノンフィクションだ。

女帝 小池百合子 (文春e-book)

女帝 小池百合子 (文春e-book)

 

著者の石井妙子は、2006年、五年かけて取材した、『おそめ』で、新潮ドキュメント賞講談社ノンフィクション賞大宅壮一ノンフィクション賞の最終候補となった。2016年、『原節子の真実』が第15回新潮ドキュメント賞を受賞した作家。

時間をかけた綿密な取材、抑制のきいた筆致、迫真のリアリティ、そして絶妙の発刊のタイミング。都知事選に影響を与える大型爆弾になるだろう。

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 「名言との対話」6月14日。新井廣武「他メーカーより、少しでも、ほんのわずかでも良いものを作る」

新井廣武(1905年10月16日〜1986年6月14日)は、発明家、実業家。アライヘルメット創業者。

1902年に東京・京橋新井唯一郎帽子屋を創業。1937年、兵隊向けの熱さよけの帽子を工夫し、陸軍から頼まれて新井廣武が大宮市に工場を竣工し、作業用保護帽の製造を開始した。1950年株式会社 新井廣武商店に法人改組。また新井自身がオートバイライダーだったこともあり、オートバイ用ヘルメットを自作し、後に乗用車用ヘルメットの製造へ移行してゆく。のちにモータースポーツの人気の高まりと共に、アライの知名度も世界に広まった。

ライダーであった自身の感覚や経験から、事故時の衝撃エネルギーに対処する術を模索し、日本で初めて繊維強化プラスチックの帽体と発泡スチロールの衝撃ライナーを用いた現在のヘルメットの原型を創り出した。

事故時の頭への衝撃を吸収するために、衝撃を「かわす」という着眼を得て、研究を重ねていく。上からの衝撃はネットで吸収し、横からの衝撃はつぶれるとスポンジの役目をすりうコルクをつかったヘルメットだったが、しだいに発泡スチロールを使うようになった。

 2019年現在で、(株)アライヘルメットは、社員数285名、売上高75億円。埼玉の本社・工場以外に、2つの工場があり、海外ではヨーロッパとアメリカにももグループ会社がある。バイクの歴代の名レーサーたちに『ヘルメットは、アライ以外に考えられない』と、いわしめる信頼を勝ち得ている。

この会社の採用サイトでは、「アライヘルメットは世界中の多くの人に愛されています。お客様の「安心」「安全」のために世界を舞台に一緒に働いてみませんか!」と呼び掛けている。PR動画は英語で、字幕が日本語である。「プロテクションの進化」「テクノロジークラフトマンシップ」「ライダーを幸せに「する」「トップレーサーからのフィードバック」「全数、二重検査」「アライブランド」などの言葉が印象に残る。社員たちも、カワサキ、スズキ、ヤマハなどに乗るライダーが多いから、友人、家族のために仕事をしているという発言も好感が持てる。

新井廣武は、風変わりな発明家であり、本田宗一郎が技術の相談にきていたという根っからの技術屋だった。新井廣武の創業の志は息子、孫の3代にわたるヘルメットづくりにつながっており、この企業の「他メーカーより、少しでも、ほんのわずかでも良いものを作る」という理念という形で継承されているのは頼もしい。このものづくり企業を知って幸せな気分になった。