月刊「致知」8月号「鈴木大拙」特集がいいーーアーチスト・オブ・ライフ。生命は「墨絵」。えらい人。

月刊「致知」8月号(2020年)は「鈴木大拙」に大特集で読み応えあり。

大拙を語る登場人物の人選が素晴らしい。西村恵信、岡村美穂子。大熊玄。蓮沼直應。そして西田幾多郎、朝比奈宗源、エーリッヒ・フロム、バーナード・リーチ、松田章一、小川隆、木村宣彰、浅見洋、竹村牧男、横田南嶺。8p-71p。

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  • われわれはみな、生きることの芸術家(アーチスト・オブ・ライフ)として生まれてきている。文学や芸術のほかに、人間の生活そのものが、詩となる。文字に出る詩人だけでなく、我ら人間の一挙一動がことごとく詩になり、芸術的に美しいものとなる。
  • 生命は「墨絵」である。ためらうことなく、知性を働かせることなく、ただ一度かぎりで描かねばならぬ。
  • 真黒になって、黙々として、朝から晩まで働き、時節が来れば、「さよなら」で消えていく。このような人をえらい人と、自分はいいたい。
  • 一歩一歩上がれば何でもないぞ。一歩一歩努力すれば、いつの間にか高いところでも上がっている。
  • 人間には、他の生物と違って大悲というものがなくてはならぬ。
  • 自らによる、それこそが自由だ。
  • まだまだだぞ。
  • 実現せられんから追求せんのではない。実現せられんから追求する。
  • 人生は、どう論じようとも、結局苦しい闘争である。だが、苦しめば苦しむほど、あなたの人格は深くなり、そして、人格の深まりとともに、あなたはより深く人生の秘密を読みとるようになる。
  • 人生は万物の基礎である。人生を離れて何者も存在し得ないのである。…、星の観察者は今なお固い地上を歩いている。
  • ほんとうの祈りというものは、叶うても叶わんも、むしろ叶わんということを知りつつ、祈らずにおられんから祈るというのがほんとうの祈りで、祈るから叶うという相手に目的を置いて祈るのでは、ほんとうの祈りではない。
  • 人間の一生は不断の努力であり、永劫に聞かれぬ祈りであり、無限に至り得ない完全性の追求であるといえるのです。
  • 人間は完全なるものに向かう終りなき戦いです。
  • 自分たちは結婚生活の目標を東洋思想、東洋の心の動き、感情と言うべきものを欧米各国の国民に宣布することに定めた。
  • 世界人としての日本人。
  • ノー。ナッシング。サンキュー。
  • 依頼心を捨てよというのが(釈迦の)最後の説法であった。
  • ただ滅茶苦茶にはたらくのだ。はたらいてはたらいてはたらきにくのだ。
  • 日本的霊性法然親鸞の世界を描いている。阿弥陀仏の絶対無条件の大悲によって、この身このまま救われる。禅と浄土宗は一つに結ばれるところがある。これが日本的霊性である。
  • 十分にこれ(苦)を味わっていくべきものと思います。
  • 仏教の中で最高峰は華厳理想だ。
  • コツコツとやっていく。そうすると、自分とやることと一つになる。
  • (内面的生活が十分に働かぬから)どうしても吾等は年を取らねばならぬ。
  • 計らひを離れるというのは、仕事にわきめを振らぬと云う義である。

大拙は自分の肩書を「 」ではなく、「執筆家」としていた。

西田幾多郎「君は最も豪そうでなくて、最も豪い人かもしれない。私は思想上、君に負う所が多い」「これがよくもあしくも「私の生命の書だ」といって神の前に出すものを書きなさい」。

「分りたい一心」から始まって、次に「伝えたい一心」へと変わっていく。最初が大智。次が大悲。

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大学:秘書と打ち合わせ。動画編集ソフト「フォト」。

電話

・日経の中澤さん。八木さんとの面談の報告。

・民博の三原さん。10月のイベントの方向についての報告。別途、文書。

・猪俣さんの単著の表紙について。

 夜はデメケンのZOOMミーティングに参加。

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「名言との対話」7月6日。ルイ・アームストロング「途中であきらめちゃいけない。途中であきらめてしまったら得るものよりも失うものの方がずっと多くなってしまう」

ルイ・アームストロング1901年8月4日- 1971年7月6日)は、アフリカ系アメリカ人ジャズミュージシャン

フランスの植民地として築かれた、ミシシッピ河口のニューオリンズ。ミュージシャンになるのは黒人少年の夢だった。

抜群の音感。分厚い唇。大きな口。丈夫な歯。逞しい身体。強靭な横隔膜。ルイはトランペット吹きの条件をすべて備えていた。ジョー・オリヴァという伝説の奏者との出会いによって、ニューオリンズ一のコルネット吹きになっていく。

奴隷として連れてこられた黒人たちから生まれたブルースを、夜の街の娼婦も、荒くれ男たちもうっとりと聴く。黒人たちの魂の歌だ。ルイは、コルネットから始まり、世界一美しいダミ声といわれたボーカリスト、トランペット吹きとして大活躍をする。

ユーチューブで4曲を聴いてみた。「キッス・オブ・ファイア」は、初期のヒット曲。「この素晴らしき世界」はベトナム戦争への嘆きから生まれた曲。「ハロー・トーリー!」はビートルズの3か月連続1位の記録をストップさせた映画の主題曲。代表作「聖者の行進」(聖者が街にやってくる)は黒人霊歌。葬儀場から墓地までは静かに、墓地からの帰りは明るくとい風習があった。何とも言えない人懐っこい笑顔、庶民的な表情、実に楽しそうに歌い、演奏する姿を堪能した。

ルイ・アームストロング 少年院のラッパ吹き」を読んだ。その中から同時代の人たちの声を聞いてみよう。マイルス・デイヴィス「ルイのやることはすべて正しいよ。ルイがいなかったら、オレは何もできなかったと思うね」。セロニアス・モンク「ジャズと自由はともに行進する」。チャーリー・パーカー「音楽は体験であり、思想であり、知恵なんだ」。

そして日本人の日野皓正は「彼は自分のやるべき使命を天の声で聞いていたんじゃないかな」「サッチモはサインするときにさ、ライス&ビーンズって書いたでしょ。僕は初心忘るべからずって解釈している」と語っている。

以下、語録から。

「考えてごらんよ…24時間一流ミュージシャンの誰かしらがプレイしていたんだぜ」「20年代初期のシカゴでは、みんなミュージシャンには敬意を持って接してくれた…まるで神さまのような感じだった」「一日に百万ドル稼ぐようになったとしても、これまでとは違う自分になろうなんて思わないさ」「俺は有名になることに興味はない! 世間が騒いでいるだけ。そんなの俺じゃないぜ。俺はただ吹くだけ」「俺は高い台の上に立とうなんて思わない。自分のやっていることをありがたく思っているだけ。俺にできるのは感じるままにプレイすることしかないと思う」「本当に大切なのは観客の為に懸命にやること。だって俺は人々を喜ばせる為にいるわけだからさ」。

 人類は神によって異なる言語に分断されてしまった。その絆を回復するのが音楽だ。ルイ・アームストロングは、自然発生的なジャズに、正しい音でではなく、自分なりの音でいいという個性的表現という方向性を与えた。今日に続くジャズの歴史を変えたのだ。彼がいなかったら、ジャズの歴史は変わっていたに違いない。そしてついにジャズの父、ジャズ・ヴォーカルの父となったのだ。一人の力で歴史が変わる。

参考「ルイ・アームストロング 少年院のラッパ吹き」(メディアファクトリー