知研50周年記念企画「梅棹忠夫研究」(民博との共同研究会)ー大阪の国立民族学博物館

大阪千里にある国立民族学博物館において、知的生産の技術研究会50周年記念行事とて、民族学博物館との共同研究会を行った。

梅棹資料室の飯田室長から、「知的生産のフロンティア展」の丁寧な解説をいただきながら、梅棹忠夫先生の知的生産の跡を追った。

梅棹先生が残した膨大なアーカイブを10年かけて今後どう発展させていくかを検討してきた結果の展示だ。連想検索によって新しい発見を促す仕組み。ローマ字で書かれたモンゴルとヒンズークシでのローマ字のカードの日本文への書き直し。記録魔と保管魔。手書きの羊の群れのが時間の経過につれての動きなどを観察し丹念に描いたスケッチ。現代ではデジカメなどを使って記録するのであるが当時は手作業だった。アニメ制作ににている。フィールドノートを見た。全体で46冊の探検隊の記録のうち、33冊は梅棹先生のものであった。残りは今西錦司隊長。別に整理したインデックスノートがあった。探検隊ではローマ字によるカードは共有財産になっていた。ローマ字カードに5000枚に集約した後、15の論文になっている。ウメサオクルーズ。8項目に分かれていて写真ノート、カード、スケッチ、写真など。文明の生態史観を発表した、中央公論の表紙には「賢人宰相石橋湛山」と並んで「文明の生態史観序説」が掲載してあった。

 

続いて梅棹資料室を見学した。著作の本棚は圧巻。年代順に左から順番に収めてある。引用、紹介、批評などを保管した棚あって、これもきちんと整理されていた。このアーカイブは生きているアーカイブで、日々成長している。たまたま目についた棚の上には知研フォーラムの最新号があるのが目についた。

この見学の終わりに当たって私の感想を述べた。偉い人とは影響力の大きい人だ。周りに深く影響与え、時代に広く影響与え、そして長く影響与える人だ。そして最も偉い人は死んだ後も長く影響を与え続ける人である。梅棹先生は今後もさらに偉大な人になっていくのではないか。

途中で小長谷夕紀先生に紹介された。小長谷先生は梅棹先生の直弟子で、梅棹先生に関する著作も多い。飯田先生も小長谷先生も私のブログを読んでいるようで驚いた。

 

企画展と資料室の見学の後、セミナー室で、共同研究会を行った。テーマは梅棹忠夫研究である。司会は日経の中沢編集委員

飯田先生のお話の後、知研の福島事務局長から知研50年と民博との関係の説明。

続いて私の発表。テーマは「梅棹マンダラの宇宙を探検する」。梅棹忠夫著作集22巻全体の構造の説明を行った後、梅棹文明学に関する40枚の図解をもとに解説を行った。文明の生態史観。文明の情報史観。日本文明。地球時代に生きる。そして最後に2025年の大阪万博に関する提言で、日本未来学会で7月に行った研究発表のエキス。1970年は万国博覧会。2020年は万民族博覧会。万国博から万民博へ。

終了後は参加者それぞれから今回の企画についての感想をいただいた。

終了後、千里で5人で打ち上げの会を行った。

 

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以下、参加者の感想など。

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鈴木章子。

「知研・民博研究会 ~梅棹忠夫研究~」に参加して
 10月14日の第4講で久恒教授からお話があった、国立民族学博物館での「知的生産の技術研究会(以下「知研」という。)の研究会に参加してまいりました。
 久恒教授のおかげで素晴らしい経験ができました。どうもありがとうございました。
 少し長くなりますが、みなさんに報告させていただきます。(実は、教授にお会いしたら「レポートを出してくださいね。」というご指示があった次第です。)
 とは言え、研究会の全体内容については「久恒教授のブログ日誌 2020年10月17日」で早速公開されていますので、そちらをご覧いただくことにして、私からは主に久恒教授の発表の概要とそれを聞いた出席者のみなさんからの感想などを報告させていただきます。

◇知研の今回の研究テーマ「梅棹忠夫研究」
開催日時:10月17日(土)13時30分~16時
開催場所:国立民族学博物館大阪府吹田市
出席者:知研の会員(コロナの影響で参加人数を絞っての開催)
備考:民博では「梅棹忠夫生誕100年記念企画展 知的生産のフロンティア」が開催中。(偶然とはいえ、今回のテーマにピッタリ! 研究発表は展示会場と梅棹資料室を見学後に行われました。)

◇久恒教授のテーマ:「梅棹マンダラの宇宙を探検する」
 梅棹忠夫著作集22巻をもとに、約40枚の図解資料を使って約30分で発表されました。 発表の流れとしては、梅棹先生の文明学について次のように図解資料を作成され、ポイントを掻い摘んで解説されました。
1)梅棹忠夫著作集22巻の全体の構造
2)文明の生態史観(第5巻比較文明研究:22枚)
  文明の空間論、宗教のウイルス説、比較宗教論など
3)文明の情報史観(第14巻情報と文明:11枚)
  文明と文化、情報産業、情報の文明学など
4)日本文明(第7巻日本研究:2枚)
  日本文明の時空構造、文明の未来
5)大阪万国博覧会(第13巻地球時代に生きる:3枚)
  世界民族地図、大阪万国博覧会1970年など

 最後には、2025年の大阪万博へのメッセージも述べられました。
 なお、今回の発表は今年の7月に日本未来学会のオンライン研究会で発表されたエキスだそうです。

◇出席者の感想
 梅棹先生が残された資料の実物を拝見した後に久恒教授の解説を聞かれたことで、みなさんが一様に「この発表を聞いて、改めて勉強したくなった。」「著作集を読み直したい。」「〇〇について読み込んでみたい。」とおっしゃいました。
 また、著作集作成に携わった方から、「全15巻の予定が22巻になった。各巻に関連をつけて作成したものではないので、バラバラの著作集を関連付けていただき、ありがたいです。」との感想もありました。

◇研究会に参加して
 図解のメリットや文章との違いについては、図解塾のみなさんはよくご存じのところですが、そのことを最も感じたのが、「2)文明の生態史観」の図解でした。
 世界の地理的位置や宗教の比較など、全体の構造と対象の関係性が一目瞭然で、しかも、それを見ながら教授から重要ポイントを解説いただいたので、自分がこれまでに学んだことのあるバラバラの知識がきれいに整理されていく感じがして、解説の途中からワクワク感が生まれて心地よかったです。
 また、梅棹先生が、ご自身の研究がアーカイブになることを前提にして、若い時から詳細な資料を作っておられたことを知り、かつ、久恒教授の発表を聞いたことで、梅棹先生がどれだけ偉大な方なのか、そして実は未来の動きに通じていることを図解から読み解けることが衝撃的でした。
 誤魔化しの利かない、でも正解はないという奥深い図解。私も第三者が見てわかりやすい図解を作成できるよう、訓練していきたいと思います。
 久恒教授、そして図解塾のみなさん、これからもよろしくお願いいたします。
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谷哲也

1969年に発刊されたのが梅棹忠夫先生の「知的生産の技術」(岩波書店)で、この本に触発されてできたのが知的生産の技術研究会。

研究会の発足が1970年なので、今年50周年を迎えます。50周年事業を大阪・京都で2日間にかけて開催予定だったのですがコロナ禍の影響で大幅にイベントを縮小。ちょうど国立民族学博物館で開催されている梅棹忠夫生誕100年記念企画展「知的生産のフロンティア」見学を主とすることになりました。まあ聖地巡礼ですなあ(笑)。

■贅沢な説明
民博前に集合して記念企画展を企画された飯田教授の案内で見学。「知的生産の技術」執筆時のカードや原稿、いろいろな裏話を聞きながら梅棹資料室に移動して、アーカイブをどう扱っているのか等のお話を伺いました。なかなか贅沢な時間でした。本が出た頃はパソコン執筆ではなく原稿ですので出版社から原稿を取り返す必要があり、個人的なアーカイブを作るには、そういった執念が必要なんですね。

■本は100刷に
「知的生産の技術」(岩波書店)は今も発売されていて先日、100刷となり帯が金色になったそうです。後で梅棹先生の元の秘書の方から梅棹資料室には1刷から100刷まで全て棚に揃ってますよという話を聞き、ウーン気が付かなかったなあ。もっとも膨大な資料のなか探すのは大変です。

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「名言との対話」10月17日。鮎川信夫「過去の傑作を恐れよ」

鮎川 信夫(あゆかわ のぶお、1920年大正9年)8月23日 - 1986年昭和61年)10月17日)は日本の詩人評論家翻訳家。 

16歳で詩作を始める。鮎川信夫ペンネーム。1937年中桐雅夫編集の詩誌《LUNA》、1938年村野四郎らの《新領土》に参加、1939年田村隆一、森川義信らと詩誌《荒地》を創刊。戦後の1951年に「荒地詩集」を創刊し、戦後詩の中心的役割を担い、戦後現代詩を作品と詩論の両面にわたってリードする。晩年は詩作よりも批評に重きを置き、その評価も高いものがあった。鮎川信夫著作集 全10巻。死後に、鮎川信夫全集 全8巻。

この詩人にの詩集『鮎川信夫詩集』を読んだ。「ふとしたことから現代詩という不毛の領土に深入りするようになった」というこの詩人は、詩をどのように考えていたのか。

・詩は知性的なものと感性的なものとから構成された種々なる統一体を作ることであり、モラルの世界と感覚的な世界が表裏をなして連結される一つの新しい経験の世界である。
・詩の言葉の領域は、我々の人生と同様、測り切れないほど広く深いものである。

・詩は、個人と感動というものが訴えたいと思う相手につながるだけではなく、それがさらにもっと大きな共同体へとつながって、ついには人類全体に及ぶというような連関を描いて広がるものでなければならないと思うのです。

「なぜ作品を書いてきたか、と問われれば、他にする仕事がなかったからというのが、一番正直な答えのようである」と謙遜するこの詩人は、「生きた世界との結びつきが、何よりも大切だ」という。表現者は詩、小説、評論など分野を問わず、同じ時代を生きている人々に強く訴えようとしている。そのためには土中に根を下ろして養分を吸い取りながら生き延びている過去の傑作を恐れるべきだ。そして過去から学び、傑作を克服し、何か新しいものをつけ加える。それが創造である。

 

鮎川信夫詩集〈現代詩文庫〉

鮎川信夫詩集〈現代詩文庫〉

  • 作者:鮎川 信夫
  • 発売日: 1968/04/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)