夕刻、鈴木太夢さんに連れられて横浜の自治調査研究会の刈部嘉仁代表に会いました。立派な体格の武闘派であると同時に、政治学と歴史学の博士号を持つというふしぎな人物のご高説を聴く。「図解コミュニケーション全集第1巻」と「平成時代の366名言集」を贈呈してきました。
この研究会の月例研究会の講師は山崎拓氏でした。自民党副総裁経験者で、YKKの一人として政界を引っ張った人です。来賓席に座らされてしまいました。練達の政治家のリアリティあふれる話は非常に面白く、あっという間の2時間でした。
政治家の率直な人物胆や見通しなど、すべてはここに記すことは憚かれるところもあるので、肝になる発言を記したい。
- コロナ問題は政局と深くかかわっている。IOC、JOCなどは「必ずやる」との決意であり、総理は政治生命を賭けている。6月20日まで緊急事態宣言。7月4日の都議会選挙は政権の帰趨を占う。自民党は伸びる。50議席超。オリンピックをやれば政権に有利な状況になる。ボイコットする国はない。無観客開催。9月5日のオリパラ終了後、9月7日衆院選告示、9月19日投開票。自民党は過半数は獲得するし、減り方は少ない。現状維持となり支持を得たことになり総裁選はない。あと3年菅総理が政権を担当する。万一過半数を割るようなことになれば退陣。
- 菅政権が続く場合の問題は、外交・安保。「台湾問題」。習近平は2012年から10年、3期15年、あるいはさらにやろうとするかもしれない。そのためには実績が必要となり、2027年までに台湾解放が必要となる。中国の「一帯一路」とアメリカの「インド太平洋」の対峙だ。アメリカはそれを阻止する構えで、日米首脳会談では一戦を交えるときは日本に加勢するようにとの要求があり、共同宣言では「台湾海峡」の平和を守るとなった。台湾有事の場合は横須賀基地を母港とする第7艦隊が出動することになり、日本は巻き込まれ、壊滅する可能性がある。
- 政治家とは公選された公職者。次の総理は難局に対峙することになる。民主主義国87か国、専制国92か国。専制国の方がコロナ対応はうまくいっている。小選挙区制が問題だ。小泉首相の平壌宣言を実行していれば核問題も拉致問題を解決していた可能性があったが、安倍さんが反対しできなかった。
終了後の最初に私に質問の指名があり、主に日本の人的資源の観点から、量と質の問題、リーダーの劣化などを論じた上で、どうおもうかと質問しました。主旨には同感するが、間に合わない、今をどうするかが問題という回答でした。
月例研究会の講師陣。今年:7月は村上誠一郎。9月は山田正彦。
以下、リストから名前を知っている人たち。昨年から遡る。
小泉純一郎。石井一。松本拡。堀内恒夫。片山善博。グレン・フクシマ。野田毅。田中真紀子。田中均。藤井裕久。老川祥一。前川喜平。柳井俊二。菅直人。北川正恭。出口治郎。林芳正。猪谷千春。保利耕輔。佐藤優。福井俊彦。カリュウ。小長啓一。津島雄二。亀井静香。武部勤。鳩山由紀夫。井上義久。中川秀直。越智通雄。松原仁。松波健四郎。加藤英明。野中広務。古賀誠。藪中三十二。寺島実郎。古川貞二郎。尾身幸次。泉田裕彦。白石隆。麻生太郎。五百旗頭真。福川伸次。太田昭彦。今井彰。安倍晋三。石破茂。加藤秀樹。北畑隆生。船橋洋一。渡辺利夫。田母神俊雄。法眼晋作。中山恭子。藤井裕久。西澤潤一。平沼赳夫。吉崎逵彦。田中秀征。村山富市。浜矩子。田中康夫。北康利。河村たかし。武村正義。木村剛。平野貞夫。山本卓真。植草一秀。松沢成文。渡辺恒三。島田晴雄。ペマ・ギャルポ。加藤寛。藤原作弥。伊豆見元。福岡政行。木村汎。歳川隆雄。俵孝太郎。羽田孜。副島隆彦。中嶋嶺雄。
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14時:目黒で橘川、鈴木、桜井と打ち合わせ。
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「名言との対話」5月27日、ヘンリー・キシンジャー「明日なさねばならないことは今日中になせ」
ヘンリー・アルフレッド・キッシンジャー(英語: Henry Alfred Kissinger、1923年5月27日 - )は、アメリカ合衆国の国際政治学者。ニクソン政権およびフォード政権期の国家安全保障問題担当大統領補佐官、国務長官。ノーベル平和賞受賞者。
ヘンリー・キッシンジャー「WORLD ORDER(国際秩序)」(日本経済新聞出版社)を2016年に読んだ。世界をまるごと見つめる目を感じる、92歳のキッシンジャーの遺言的著作である。以下、その要旨。
- グローバルな世界秩序は存在したことはない。オランダがスペインから独立し、ドイツとチェコを主戦場とした世界規模の30年戦争終結のために、1648年にェストファリア(ドイツ)で結ばれた和平条約が今の世界秩序だ。国家の主権という概念が確立。外交の枠組みの設計。国際法により調和を育む。秩序をともに模索。手続きのみ定めた。
- この条約の考え方から、欧州内の釣り合いをとることに腐心したため、200年以上にわたり戦争を抑制できた。
- 二度の大戦の結果、ヨーロッパにおける主権の概念と力の均衡の原理は後退した。冷戦期はソ連とアメリカの核戦力の均衡とNATO内部の均衡の上に立っていた。EUの誕生は地域全体の力としてウェストファリア条約の世界版において一個の集合体の役割を果たしている。
- ロシアはウェストファリア条約による国際秩序に対する脅威だった。強いときには傲慢に、弱いときには弱みを押し隠す。
- 中東。サウジアラビア。イラン。シーア派とスンニー派の1000年にわたる闘争。
- 中国。ウェストファリアの発想からもっともかけはなれていたが、現在では古代文明の継承者として、またウェストファリアモデルに則った大国として、両方の姿で復帰してきた。現代の世界秩序とどう関わっていくのか。毛沢東、トウ小平、江沢民、胡錦濤、そして第五世代の習近平。アジアに覇権が生まれるのを防ぐのがアメリカの政策。そのためには力の均衡とパートナーシップを組み合わせることが必要だ。
- アメリカでは理想主義と現実主義がぶつかり合っている。アメリカと世界のために行動できなかったときには、どちらも果たせなくなるかもしれない。核時代にはどちらの陣営も大大量破壊兵器を使用しないような均衡が戦略的な安定となった。そしてインターネットは戦略やドクトリンを凌駕してしまった。多国間のルールをつくらないと危機が発生する。書物から得られる概念的思考が不足すると、指導者にふさわしい思考を衰えるおそれがある。知恵と洞察を身につけるには歴史と地理を深く理解し、当面の問題に集中しなければならない。
- ウェストファリアのルールは公布されているが、法執行の力がないので、効果は十分に発揮されていない。国際秩序は正当性の定義の見直しか。力の均衡の大きな変動に直面する。21世紀の世界秩序の構造には重大な欠陥が3つある。国家は外から中からの挑戦を受けている。政治・経済機構は対立している。調整のための有効な仕組みがない。したがって国際システムの再建が現代の最大の難問だ。今の常状態に即したウェストファリアシステムの現代化が必要だ。
日本については次のように語っている。神の子孫の思想。独特な国民。形だけ取り入れて日本の様式に変える。秩序の頂点に天皇がいる。人間と神との仲介者。秀吉の明征服構想。徳川は引きこもり。明治維新で日清、日露戦争に勝利しウェストファリア原理に則り列強のひとつになった。その後、大東亜共栄圏という旗印で反ウェストファリア影響圏を構築しようとし、敗戦。新平和主義の姿勢をとり、不屈の精神で急激な回復を遂げ、経済大国になった。日本の今後は、日米同盟、中国の勃興に適応、国家主義的外交という3つの選択になる。指導層の判断応力が結果を左右する。
他の機会で述べた日本観を拝読しよう。
- 日本の政治家は議論しているだけで、どうにもならない。政治というのはしゃべることではなく行動することなのだ。
- 1971年の周恩来との会談。日米安全保障条約に基づく在日米軍の駐留が日本の「軍国主義」回帰を抑えており、同盟関係を解消すれば日本は手に負えない行動を取り始めると警戒感を示した「瓶の蓋」論。
- 1972年の田中角栄首相の日中国交正常化交渉について"Jap"の語を用いて非難している。田原総一朗が原爆投下を非難したとき「広島と長崎に原爆を落とさなければ日本は本土決戦をやるつもりだった。本土決戦で何百万人、あるいは一千万人以上の日本人が亡くなるはずだった。原爆を落とすことでその人数をかなり減らしたんだから、むしろ日本はアメリカに感謝すべきだ」と答えている。
- 日本はいずれ軍国主義になり核兵器を持つ。
- 近年のウクライナ危機については、米国は直接的軍事介入には慎重だった。キッシンジャーは論文で次のように書いている。「フィンランド方式。独立を維持しつつロシアとの敵対を避け、かつ西側との協力関係を維持」というあいまいな大人の知恵」。「尖閣をめぐる施政権は日本に返還するが帰属についてはあいまいな態度をとる」というあいまい作戦もキッシンジャーの考えだろう。
2009年2月25日 世界保健機関優生学会議において語った内容には戦慄を覚える。「群衆が、強制ワクチンを受け入れたら、それでゲームは終りだ!奴等はなんでも受け入れる。血液や内臓を 大多数のために強制的に寄付させたり、大多数のために、奴等の子供は遺伝子操作をして不妊にしてやる。羊の心を支配して、群れも支配するのだ」。
要職退任後のキッシンジャーは「現代外交の生き字引的存在」として回想録や講演で多忙だ。1980年に『キッシンジャー秘録』で全米図書賞受賞。最近では大統領就任前後からトランプはキッシンジャーに助言を仰いでいたという。
「忍者外交」を展開したキッシンジャーには「名言」が多い。「チャンスは貯蓄できない」。「何かについて、完全に確信を持つには、そのことについて何でも知っているか、何も知らないかの何れかだ」。「どんな人間と付き合うかで人生は決まる」。「.なすべきことをなせば、いかなる状況でも優勢になれる」「どこに行こうとしているのか分からなければ、どんな道を知っていても、辿り着くことはない」、、、などたくさんあるが、ここでは「明日なさねばならないことは今日中になせ」を採ることにした。「時間を無駄にするな。有益なことに常に従事せよ。あらゆる不必要な行動をやめよ」「来週は危機なんて起こりようがない。予定がすでにぎっしり詰まっているのだ」、などの言葉はブルドーザーのように邁進する仕事師をほうふつとさせる。
本日、98歳の誕生日を迎えたキッシンジャーは、猛烈な速度で100年人生を走っている。