知研読書会を開催。本日のテーマは「人生」だったと総括しておこう。
図メモ
以下、主宰の都築さんの報告。8月1日(木)の20時から21時30分まで知研・読書会第25回を行いました。紹介された本と、最後に久恒さんからご自身の読書法についてのお話の要点を記しておきます。
■塩見靖国『イソップと共に生きる人生交響曲』三省堂出版(2024)
参加者のかつての上司だった方が、85歳で初めて出した本。大学時代は応援団長、現在は太極拳の師範で留学生のための日本語教師。クリスチャン。イソップ物語は150ほどあるが、イソップの話を端緒にして現代のいろいろな問題や人間の生き方などに結び付けている。
■福田七衛『88歳のSTRONG SPIRIT 』人生出版選書
「気概」を訳すと”STRONG SPIRIT”。2021年に88歳になった、誠伸商事株式会社、創業者・福田七衛の人生史を人生手帖で表現した本。人生を120年で俯瞰するページ、60年の中の出来事を1年単位で見つめるページ、6年ごとの出来事を写真と共に振り返るページ、そして、回想ページという構成。人生を俯瞰すると,目先のことだけ考えることはなくなる。キーワードは「情報介護」。余命3ヶ月を宣告されたがその後も長く生きることができた。
■岩井圭也『われは熊楠』文藝春秋(2024)
紀州の産んだ偉人であり変人であった南方熊楠の生涯を小説として描いた。4歳の時に近所の廃棄紙ゴミ束をもらってその中の『』を読んでしまたっという才能。世の中の全てのことを知りたいというあくなき好奇心と探究心で,特に粘菌の研究では世界的に有名となった。明治政府の神社合祀政策に鎮守の森に住む生物たちの保護のため反対運動をおこす。粘菌に興味を取っておられた昭和天皇にご進講をする。彼の人生の中で決断をするたびに、頭の中に雑音「鬨の声」が聞こえ、早々と亡くなった愛する年下の男性の姿が浮かんだ。
■高橋雄三(インタビュー:『高度経済成長と私』
1945年から1973年の高度経済成長期、日本人の生活は大きく変化した。その様子を語ってもらった。最後に高橋氏は「自分自身を知ることが重要」「よい人との出会いが重要」と結んでいる。
以上4冊は、結局、人生をどう生きるか、とまとめることができる。
□久恒啓一氏による、私の読書法
3000日以上にわたる「名言との対話」を書き続けるために、どのような読書をしてきたか。
・人物の選択は、命日と誕生日の人から選ぶ。
・前月に、自分の人物データベースから各日の人を選び、その人に関する本を購入。
・何をしようとした人かに重点を置き、トイレ、リビング、風呂などでも「つまみ食い並行読書法」を行う。
・紙の本以外にKindle Unlimited、Audibleなども活用。
・ベストセラーだけではダメ。自分独自の泉となる本を。
・忙しい時ほど読書量は多かった。
・読み終えた本は,座右の書以外は売る。
*参加者の中から続けることについて「はじめから好きでなくても、続けることによって好きになっていく」という感想あり。
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「名言との対話」8月1日。市田ひろみ「民族衣装は着物も含めてその民族の固有の文化だと思う。歴史や気候風土と関係があってできあがった形ですから。だから着物を大事にしたい」
市田 ひろみ(いちだ ひろみ、1932年〈昭和7年〉7月10日 - 2022年〈令和4年〉8月1日)は、日本の美容師、服飾評論家、エッセイスト、女優、タレント。享年90。大阪市出身。高校3年で美容師免許を取得。短大卒業後にヤンマーディーゼルの部長秘書を経て、大映の女優に転身する。1958年の『手錠』の悪女役で実質的なデビューを飾る。「和製ソフィア・ローレン」と新聞で評された。40本以上の映画に、マダム、女子大生、パンパン、生花店員、ホステス、女給、モデル。芸鼓、あんま、看護婦などを演じたが、限界を感じ引退。
美容院を経営する母の手伝いをしていた時に、デパートの呉服売り場で「きもの教室」の講師となる。全国のデパートで実演するうちに人気が出る。
1968年に京都西陣の織屋からの依頼を受け、民族衣装蒐集でヨーロッパを11カ国をまわる。世界の民族衣装を収集することになり、100ヵ国以上を訪ねている。その成果は『コレクション 世界の民族衣装』という重厚な書籍に結実している。
1993年にはサントリーの緑茶「京番茶」の京女役で注目される。テレビCMは、大阪西川、ローソン、メモリアルアート、西川リビングなどで起用された。
著作も50冊以上ある。多くの本のタイトルは市田ひろみのはじめて着つけ」など、「市田ひろみの」が初めについているのが特徴だ。賢いマナーハンドブック、着付けと帯結び、京都流節約生活術、手紙の書き方、挨拶・スピーチ、和食の作法。着まわし術、はじめての着つけ、、など着物を中心とした生活全般についての旺盛な知識があることがわかる。
今回、『市田ひろみの できるひとはマナーを知っている』(東京書籍。2002年)を手にしてみた。「身だしなみ」「社内マナー&コミュニケーション」「言葉遣い」「電話・fax・メール」「訪問・接客」「食事マナーと冠婚葬祭」などのテーマでやさしく解説している。
2001年には「卓越した技能者」として69歳で「現代の名工」に選出された。「技能功績」には「誰でも気軽に着物を着用できるよう独自の創意工夫を凝らした着付け方法を確立するとともに、その技術を系的にとりまとめることにより広く普及に努めているまた、世界各国での活動を通じて日本文化の紹介や文化交流の推進に貢献した」となっている。
テレビでよく見かけた着物姿の笑顔が印象的な中年女性というイメージだったが、「和製ソフィア・ローレン」だったとは驚いた。経歴を眺めると常識豊かで器用な女性であるとの印象であるが、最大の功績は、日本の民族衣装である着物を着ることの素晴らしさを女性たちに教えたことだろう。そして、それが世界の民族衣装にまで視界が広がっていったことも特筆すべきだろう。民族衣装にはその民族の歴史、気候、風土との関係でできあがった形だ、だから着物を大切にしようというメッセージを発し続けたのだ。