知研読書会(第26回)を開催ーー私は「歴史探偵」半藤一利を取り上げた

知研読書会(第26回)を開催。

今回私は「歴史探偵」「昭和の語り部」を自称する半藤一利を取り上げた。太平洋戦争の教訓は「根拠なき自己過信と底知れぬ無責任」の軍部を中心とした指導層にあるという見立てだ。
  • 「国民的熱狂をつくってはいけない」「抽象的観念論を好み、具体的理性的な方法論を検討しなかった」「タコツボ社会の集団主義の弊害」「終戦にいたる国際的常識を理解していなかった」「大局観・複眼的考え方がなく、対症療法、短兵急な発想に終始した」。
  • 軍部の暴走、マスコミの扇動、国民の熱狂、冷静さの喪失、責任者の無責任、人事の怖さ、世界情勢に対する感度不足、情報戦での敗北、、、など感ずるところが大であった。

この昭和史には、日本人自身の陥りやすい欠点がすべて込められていると思う。以下、私の読書歴。


以下、都築さんの報告から。
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今回の「知研・読書会」も活発な意見交換が行われました。参加者は8名でした。紹介された本を挙げておきます。
■本間正人『100年学習時代 はじめての「学習学」的生き方入門』BOW BOOKS(2024)
人生100年時代、学歴ではなく学習歴が大切。これまでの学校教育で培われてしまった18の呪縛を挙げ、「眠っている大きなポテンシャルに気づく」「自分に合った学習スタイル」「得意分野」「ダイアローグ(対話)をする」「ノートをつくる」などを挙げている。そして、学習学的生き方とは、外界の未知なるものに対して働きかけ、つながっていく生き方、としています。 ・参加者の中で、「退職後の学びは、何を学ぶか」という根源的な問いが出て、意見交換しました。
■影山僖一「教育理念革新と令和維新 日本再建のリーダー育成」安政道(2023)
「大学の教職員は現実の日常のビジネスを担当する職場体験の無い人達である」「教員は自己の無能を知り余計な指導を控えること」「高度の退職した勤め人の教育支援活動は大変に大きな社会活動になる」などの言葉が紹介されました。・欧米と日本の教育の違いなどが話題になりました。
塗師巌『ロバート・ドーニーのアメリカ流タイムマネジメント』土屋書店(1988)
「使用時間を分析しよう」「自分とのアポイントを取る」「自分の1時間の価値を知る」ということを学び、ファイルティーチャーを開発するきっかけとなった本として紹介されました。
■今井むつみ『何回説明しても伝わらないのはなぜ起こるのか』
伝わらないのは、伝えようとする人のスキーマと受け取る人のスキーマが異なるから。大局観が必要ということが語られました。
川島四郎サトウサンペイ『食べ物さんありがとう 日本人の栄養学講座』
40年近くも前の本なのに、現在その正しさが研究により裏付けられている。重要なことは、「人間のはらわたは人類が出現した頃とちっとも変わらない」「生命は海から発生した」「地球上に誕生したばかりの人類は長い間、森で生活していた」ということを踏まえること。・参加者の中から、糖質を控えるなどの改善をしたら体重が減って調子がよいという話があった。
■『昭和史』ほか半藤一利の本
読書法にはいろいろあるが、全集を読むとか、一人の人物を追うなども有効。半藤氏は近現代史に関して非常に多くの著作を残しているが、特に強調したいのは第二次世界大戦。日本の指導者層の「根拠無き自己過信と底知れぬ無責任」を強烈に批判。
以上、教育やリーダー論、栄養、コミュニケーション、歴史というジャンルでしたが、深いところまで意見交換でき、たいへん有意義な会だったと思います。
 
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「名言との対話」9月26日。佐野眞一「社会にも身体性というものがあるんだよ」
佐野 眞一(さの しんいち、1947年昭和22年)1月29日 - 2022年令和4年)9月26日)は、日本ジャーナリストノンフィクション作家。享年75。
東京都葛飾区出身。早稲田大学第一文学部を卒業。音楽関係の出版社、タブロイド判タウン誌などの仕事をした後、フリーとなる。以降、週刊誌や月刊誌で取材にもとづいた記事を書く。
1997年、『旅する巨人』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した。この本は民俗学者宮本常一とその活動を支援した、財界の渋沢敬三渋沢栄一の孫)の生涯を描いた作品である。
2009年には、『甘粕正彦 乱心の曠野』で講談社ノンフィクション賞を受賞した。

1997年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞したのもむべなるかなと思うほど、誠実だが圧倒的な迫力のある作品に仕上がっていた。

5年前に読んだ『凡宰伝』は、小渕恵三の伝記である。小渕恵三は「凡人」ではあったが、凡人ではなかった。評伝を書くために多くの関係者と本人にも取材をした佐野眞一は小渕を「超凡人」と結論づけている。政治家になろうとした大学時代から、運を味方につけながらあらゆることに手を出して人格改造を行ったのだ。小渕恵三の62年の人生は、凡人を自覚した凡人が、凡人を装いながらふてぶてしく凡人を越えていく物語であった。

佐野自身の分類によると膨大な書籍のテーマは、3つである。

10年前に読んだ『旅する巨人』では、常民・宮本にも子爵・渋沢にも、そしてこの本を書いた佐野の徹底した取材ぶりにも感銘を受けた。取材で訪れた場所の多さ、また「取材協力者一覧」に記された人々の名前の多さ、そして「主要参考文献一覧」に記された文献の数々、、。まさに膨大な調査と徹底したフィールドワークをもとに築きあげられた珠玉の作品である。

5年前に読んだ『凡宰伝』。小渕恵三は「凡人」ではあったが、凡人ではなかった。評伝を書くために多くの関係者と本人にも取材をした佐野眞一は小渕を「超凡人」と結論づけている。政治家になろうとした大学時代から、運を味方につけながらあらゆることに手を出して人格改造を行ったのだ。小渕恵三の62年の人生は、凡人を自覚した凡人が、凡人を装いながらふてぶてしく凡人を越えていく物語だった。
膨大でかつ多種多様な作品を上梓し続けた。題名にある言葉を拾う。「性」「発情狂「官僚」「業界紙」「虚人」「あぶく銭」「ゴミ」「巨怪」「覗き」「OL」「てっぺん野郎」「鳩山一族」「津波原発」「怪優」あんぽん」、、、、。
自身の分類によると、大事にしたテーマは:次の3つになる。
  • 「高度成長」:『遠い「山びこ」』『巨怪伝』『旅する巨人』『カリスマ』『あんぽん』。
  • 満州」:『阿片王 満州の夜と霧』『甘粕正彦 乱心の曠野』。
  • 「沖縄」:『沖縄 だれにも書かれなかった戦後史』『僕の島は戦場だった』。

2000年の『東電OL殺人事件』から、2012年に橋本徹論でバッシングを受けた10年余で30冊近い本を書いている。橋本徹論きっかけとなり、佐野自身の剽窃行為が暴露され、以降勢いがなくなった。

  • 「ノンフィクションは主人公より、時に本道を外れた脇役によって輝く文芸である。脇役の陰が濃くなければ、主人公の輝きも増さない。私はそう信じてこれまでノンフィクションを書きつづけてきた」
  • 「平成の日本人が腑抜けなのは、バブル崩壊後に失われた20年があって、世界第二位の経済大国の座は中国に奪われてもまだ「高度経済成長のあの頃」を夢想していることだよ」

冒頭に掲げた「社会にも身体性というものがあるんだよ。」の後には、「働くことも、生きることもそう。身をよじるほどの痛みや息苦しさがある。世の中、そんなきれいになんかできていない。」と続く。ノンフィクションは、それを書こうとした新しいジャンルなのだと理解しておこう。

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
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