5歳になる孫の豊洲の幼稚園の秋の運動会に参加した。写真は「後姿探検隊」のショット。
山本由伸先発のドジャーズとダルビッシュ先発のパドレスの息詰まる投手戦を横目に見ながら、3歳から5歳の子どもたちの姿を堪能した。終了後に昼食。
好天の連休初日で混んでいる往復の電車の中で、「アクティブ・シニア革命」に寄せられた原稿の校正。
帰宅後は、延々と寝てしまった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「名言との対話」10月12日。中根千枝「タテ社会」
中根 千枝(なかね ちえ、1926年(大正15年)11月30日 - 2021年(令和3年)10月12日)は、日本の社会人類学者。享年94。
東京新宿区出身。津田塾を経て、東大文学部東洋史学科を卒業し、大学院を修了。1952年に東大東洋文化研究所助手に採用された。以後、1958年に講師、1962年に助教授(女性初の東大助教授)、1970年に教授、そして1980年に所長(国立大学初)に、1987年に定年退官。東大という「タテ社会」の階段をひとつずつ登っていった女性である。
中根千枝は、女性初の東大教授、女性初の学士院会員、そして学術系として女性初の文化勲章受章者というように、生涯にわたって「女性初」という冠がついてまわった。
社会人類学者らしく、海外への探検と調査が多く、1959年には『未開の顔・文明の顔』の刊行で、毎日出版文化賞を受賞している。中根千枝を有名にしたのは1967年刊行の『タテ社会の人間関係』である。この本はミリオンセラーであり、また今でも読まれているロングセラーである。英国で翻訳された英語版は、13カ国で翻訳出版されている。
「日本社会は親分・子分のタテの関係を持つ場が重要だ」とする『タテ社会の人間関係』は、「単一社会の理論」という副題がついている。日本論の不朽の名著である。
この本だったか、インド人の協力者に難しい課題を与えたとき、成功したら何が欲しいかと問いかけた。この時、相手は「あなたのキスを」と語ったと書いている。その後の展開は書かれていなかった。とても素敵なエピソードだった。
また、思いだすのは、どこかの雑誌であったか、「梅棹忠夫さんはどうしてこんなに人気があるんでしょう」と、人類学分野でライバル視した感想を述べていたことも思い出した。
『タテ社会の人間関係』は、1970年刊の「日本人は水と安全はただと考えている」とするイザヤ・ベンダサン『日本人とユダヤ人』。1971年刊の土居健郎『「甘え」の構造』などとももに、当時の日本人論ブームを牽引し、その中心に位置していた書物である。二子玉川の世田谷区岡本の国分寺崖線の一画に4600坪の緑豊かな岡本静嘉堂緑地という庭園がある。ここは三菱の二代目・岩崎弥之助の土地であった。静嘉堂とは、弥之助の堂号で祖先の霊前への供物が立派に整うという意味である。静嘉堂文庫には、20万冊の古書籍と6500点の東洋古美術品が収納されている。その文庫百周年記念事業として美術館が建てられた。2010年に訪れたとき、文庫長・美術館長が中根千枝だったことに驚いたことがある。
『タテ社会の人間関係』の「リーダーシップ」を論じたあたりでは、日本的リーダー像を明示している。「部下に引きずられる」「権限が小さい」「代表者」「相対的な力関係によってリーダーのあり方が決まる」「人間に対する理解力・包容力が資格」「部下に自由を与える」「直属幹部の統率が鍵」「能力よりも人格」「組織は人なり」。
日本ではリーダーの権限が非常に小さく、直属の幹部を操縦するのではなく、逆に引きずられることが多い。リーダーはカリスマであるというよりも、ある集団の代表者という場合が多い。このような構造のため、リーダーと部下の相対的力関係によって、リーダーのあり方が決まってくる。能力よりも人間に対する包容力があることがリーダーの資格である。部下に自由を与えるリーダーという意味では世界でも特殊である。リーダーの成否は直属幹部の把握と統率にかかっている。子分を人格的にひきつけ集団を統合し、彼らの全能力を発揮させることが最重要任務だ。
極論すれば「リーダーはバカでもいい」というこの考え方は一般的な日本社会は、中根千枝の「タテ社会」の分析で説明できると思うが、リーダーのあり方というのは、固定的なものではない。平時のリーダーシップと有事のリーダーシップは違うし、組織風土のあり方とも関係している。
どのようなタイプのリーダーシップを選ぶかは、その時々の組織の状況と力量、そしてリーダーの本来の資質、参加時期、年齢などによって大きく変わってくる。
自分のことを振り返ってみる。大学の探検部でのキャプテン時代、JALの課長・次長時代、宮城大時代の研究科長や総合情報センター長時代、多摩大学の学部長、副学長時代。あり方は若干違うが、スタイルは一貫しているような気がする。理念やテーマを明確にし、部下を巻き込んで問題をスピード感を持って解決する、その過程で仲間と結果を喜び、強くなった絆で次の課題に向かっていく、そういうリーダーシップのスタイルか。
この本の「まえがき」では、論文を発表すると読者からの反響に加えて、大学・研究所・企業経営・人事管理・教育研修などの帰還からセミナーや講演の依頼が多くあり、有益な意見を聞くことができ、それがこの本の内容を豊かにした、とある。私の場合も2002年の『図で考える人は仕事ができる』でも同じことを経験した。やはり作品を世に問うということは、世の中の反応と反響によって、自分がさらに進化することを意味している。作品を作り、発表し続けることが成長の源でなのである。