映画「ワールド・トレード・センター」(オリバー・ストーン監督)

土曜日の夜は、久しぶりに映画を観た。


2001年9月11日の悲劇から5年が経った。ニューヨークの象徴でもあったこのツインタワーの北棟がアメリカン航空、南棟がユナイテッド航空のハイジャックされた旅客機に激突され炎上し、崩壊したシーンはいまだに脳裏にくっきりと残っている。


2749名が死亡。その国籍は87に及ぶ。343名は消防士。港湾職員の犠牲者は84名、うち37名は警察官。ニューヨーク市警察の警官は23名。救出された者は20名だった。


この作品は、1986年の「プラトーン」や1989年の「7月4日に生れて」などの作品(これらの戦争映画は観たことがある)を手がけたオリバー・ストーン監督の作品である。この監督は1967年から68年にかけてベトナムで米国陸軍歩兵連隊の兵士として2度の負傷を受けブロンズスター勲章を受勲、帰還後ニューヨーク大学フィルム・スクールで映画制作を学んでいる。その後の毎年あるいは数年おきの映画作品のリストをみると、ベトナム戦争体験が色濃く反映していると感じる。


その監督が世界を震撼させた同時多発テロを手がけたが、事件全体を描かずに救出にあたり生き埋めになった港湾警察官の家族愛に焦点を絞った。テロに対する怒りや政治的意図はなく、ひたすら生き埋めという過酷な状況で生き延びる二人の姿と救出劇、そして家族の様子を克明に描いた。この作品には実際に救助に携わった人たちも多数出演している。


映画そのものは、2人の男のパーソナルな面から「9・11」を描いている。事態がどうすすんだのかを詳細に追い、ジョン・マクローリンとウイル・ヒメノのやりとりと生還、家族とのつながりを描いたシンプルな作品である。「あの日、人種を超えてアメリカが一つになり、世界画支えてくれたということを忘れてはいけない」というオリバー・ストーン監督の言葉が、この映画の使命と言えるだろうか。


主演のニコエラス・ケイジは、生き埋めになってからは顔の表情だけで苦痛や絶望や希望を演技をしている。「俳優としての才能が、何か人々に癒しを与えられないかと考えていた」ので、この作品をすぐに引き受けている。

もう一人のマイケル・ペーニャは、「粉や遺物が目に入ったりして多くのスタッグが体調を崩しました。僕は横たわっていて、顔中にさまざまな物が付着しています。石の破片が目や鼻、口に入っているんです」「あの時、慰めや癒しを求めていた気持ちが役作りでウイルと話している時に甦ったのです」とインタビューで述べている。


「信じるもののために全力を尽くす」人々を描き続けたオリバー・ストーン監督は、特撮や最新技術を駆使した今までのアプローチとは違う作風を追求している。

ITとグローバル経済に酔うアメリカに一撃を与えた事件を描く中で、職業に対する深い敬意と家族の絆の大切さをアメリカ国民に呼び起こす作品だと感じた。