「2015年の展望―世界と日本の新局面」

秋学期最後のリレー講座は寺島学長。
テーマは「2015年の展望―世界と日本の新局面」 。

  • 1人当たりGDP:日本:2013年(3.8万ドル)。2014年(3.8万ドル)。シンガポール2013年5.5万ドルから2014年は6万ドルゾーン。香港は2013年3.8万ドルから4万ドルへ。台湾は2013年2.1万ドルから2014年2.5万ドル(1990年の日本・バブルのピークへ。中国とタイは1万ドルゾーンへ(1981年の日本のレベル)。シンガポール、香港、台湾は70年前にはかつて日本領だった。
  • 日本の今の空気はますます内向きになった。アメリカは12月25日のアメリカ映画(アンジェリーナ・ジョリー初監督)の「アンブロークン」の話題でもちきり。http://www.sankei.com/world/news/141205/wor1412050037-n1.html。1936年のベルリンオリンピクのヒーローの物語。日本軍の捕虜の時代も描かれている。日本では上映されないだろう。ブラインドになっている。またロンドン・エコノミストの「ワールド イン2015」は欧州の目線で大事。http://adweb.nikkeibp.co.jp/adweb/doc/The_World_in_2015J.pdf。2013年は「米中関係」、2014年は「ロシア」を重要ファクターとしていた。2015年は不確定として結論を出していない。日経BPが翻訳出版しているが、「アベノミクスの限界」レポートは全文削除されている。イヤな話には耳を傾けないという風潮。テレビの番組審査委員をやっているが日本を盛り上げるような番組が大くなっている。バランス感覚が変になっているようだ。
  • 2015年:IMFの世界経済見通し。2014年7月段階と10月段階。世界は7月3.4%から10月3.3%でやや減速。先進国は2014年1.8%、2015年2.3%。
    • アメリカは7月段階では1.7%、現在は2.2%、確定段階では2.5から2.9の間になるのではないか。2015年見通しは3.3%になtっている。2年目に9.65だった失業率は5.8%になった。バーナンキは6.5%を割り込んだら金融の出口戦略を考えると言っていた。米国経済は好調。
    • ユーロ圏は2012年、2013年のマイナス成長から7月段階では1.1%だったが現段階では0.8%とダウン。財政均衡をまもっているドイツに風当たりが強い。ドイツの姿勢は日本とは好対照。
    • 日本は2011年−0.5%、2012年0.5%、2013年0.5%。2014年は7月段階では1.6%だったが現段階では0.9%となっており世界に失望を与えている。確定数字はもっと悪くなるだろう。2015年は0.8%。食糧6.4兆円、エネルギー27,4兆円の輸入国。2割円安になると6兆円以上の負担増になる。赤字国債で後世代負担にし、インフレ期待のリフレ経済学。金融危機が再び起こるかもしれない。
  • アベノミクスを超えて:日本の株は1万7000円前後を保っている。二つの理由。一つは外国人買い。もう一つは日本マネー。外国人は12月26日で買い越しが18.0兆円。日本人は機関投資家が2.7兆円の売り越し、日本人個人は13.5兆円の売り越し。もし日本人が日本株を売らなかったら株価は2.5万円から3万円になっていた。日本マネー投入の誘惑が現実になってきた。GPIFという禁じ手。128兆円の資金。国内債券は60%から35%へ。日本株は11−125から25%、外国株は25%と50%となって、株価維持のために突っ込んできたが運用力があるか疑問。アメリカの出口戦略という要素が出てきており外人が売り抜けば株価は一気に崩れる。日本経済は「吊り天井経済」。土台も柱もない、第三の矢は飛ばない。
  • 再び川上インフレ、川下デフレ。素材原料250(2000年が100)、中間財119、最終財88(耐久消費財59、非耐久消費財109)。ここ2年での円安反転の「輸入インフレ」で原材料は2割以上の高騰だが川下への価格転嫁プロセスが問題。賃金指数0.2%、現金給与0.2%と微増だが、勤労者可処分所得はマイナス2.2%とダウンしているから家計負担能力は乏しい。アベノミクスは資産家(株12%)と企業にはプラスだが勤労者への分配増にはつながらない。連合(官公労と大企業)は組織率は17%まで低下。83%は未組織労働者。首相が経済界に賃上げ要請を行っているという奇妙な風景。生活保護費を6.5%切り下げ、課税所得を挙げたため、250万円収入の世帯で住民税も20万円の負担増になっている。しかも年金も微妙に下げている。「格差と貧困」。ピケティの「キャピタル」の翻訳本は6000円と高額なのにもう10万部を突破している。この本は問題指摘の本であり解決策を出してはいない。リフレ経済学と21世紀のマルクスという両極端の中でのいらだち、マグマがたまっている。
  • 真の成長戦略とは脱工業化モデルだ。サービス、ソフトウェア、システム、技術。3000万人の人口減。移動と交流。3000万人の観光客の呼び込み。2泊3日3万円の旅行者では産業にならない。一人15万円にするとしても4.5兆円。食糧の輸入額にも及ばない。サービス産業は製造業などより120万円賃金が少ない。サービス産業の高度化が必要だ。高い年収。観光立国を実体化するためにIR(統合型リゾート)。ハイエンドリピーター獲得。インダストリアル・ツーリズム。医療ツーリズム。北海道の苫東開発では巨大植物工場(トマト・イチゴ)。ビッグデータビジネスクラス、ハイエンドホテル、温泉の組み合わせ。規制緩和などで新しい薬剤が使えるなどの医療ツーリズム、、。
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本日が命日

  • 周恩来:この日記は今日から書き始める。ただし、今日から一日も欠かさず記し、記念として残したい。


皆勤賞表彰。