「山本冬彦コレクション展」−−「多感のすすめ」が気に入った

10時半から九段サテライトで、朝日新聞出版の「大学ランキング」という本の寺島学長取材に立ち会う。「大学ランキング」は、毎年出る厚い本で、様々の観点から全国の大学をランキングする。一大学のトップという立場ではなく、大学業界や教育世界について詳しい識者としてのステイタスでのインタビューである。「日本の大学の問題点、課題」「教育環境」「教員の評価」「教養」「学力問題」「保護者対応」などがテーマだった。「グローバリズムに対応したMBAや法科大学院に対する反省期に入っている」「「時代の課題に向き合う」「教師が戦っている姿を見せる「「異質の交流」「気づきと誘発」「適切な規模感」「大学毎の共通テーマが大学を教員の教育力を鍛える」「大学自体の社会との関連性が問われている」「自立した大人へのプロセスを導く」などが学長の語ったキーワード。多摩大の取り組みなどを交えて一時間のインタビューとなった。インタビュアーの小林哲夫さんから「多摩大のホームページは凄いですね!」と言われた。「大学ランキング」の前任の清水さんは予定通り、バルセロナで豆腐屋を開いているとのことだった。

2月に出る日経ビジネスの「大学特集」からも、教育界全体に対する見識を持っているということで、学長への取材も予定されている。今後、多摩大学長としての肩書きでのメディアへの登場が多くなってくるだろう。

終了後、いくつかの報告と相談をする。

12時からは昼食を食べながら今年最初の戦略会議。学長の「2010年年頭所感と方針」、「入試状況と就職状況」の報告がメイン。学長室長の私が司会。学長室からは「多摩大学ホームページリニュアルの前と後のアクセス等状況比較」という資料を説明した。昨年7月1日にリニュアルしたホームページ(学長室担当)の実績の分析を数字で報告。1-6月と7-12月の半年比較。「総閲覧ページ数は2.4倍に増加」「アクセス数は約1万人増加」「以前は一回のアクセスにつき2ページ弱しか見られていなかったが、4ページ近くに倍増」「直帰率は7割から4割に大きく下がり複数のページを見てもらえるようになった」「サイト滞在時間は二倍近く伸び、じっくり見てもらえるようになった」「新規訪問者は13%増加」。様々なページ(広く)を、じっくり(深く)見てもらえるようになったと報告。http://www.tama.ac.jp/

14時に予定通り終了したので、新宿の佐藤美術館で開催されている「山本冬彦コレクション展」を見に行く。山本さんはサラリーマン勉強会業界では有名な人で、若いときからメディアにも多く登場する人であり、「知的生産の技術」研究会で活動する私とも接点があった人だ。大東京火災で長く勤務した後、あいおい損保の理事、国立大学事務・経営センター監事を経て、現在は放送大学の理事をしている。30年間に美術品コレクターとして1300点を集めたが、今回のコレクションはそのうち160点を展示するという企画である。最近出した「週末はギャラリーめぐり」(筑摩新書)はそういった軌跡と主張を述べたものだが、とてもいい本だった。
「有名作家から現役の美大生の作品まで、70代から20代まで幅広い作家」の作品であること、「情報のない展覧会」であり作品のみで判断してもらいたいこと、これが山本さんの想いである。そして「鑑賞者の目」と「コレクターの眼」を通じてアートを体験して欲しいという趣旨だ。この企画展は、日経新聞でも紹介されていたし、今後NHKでも放映されるそうだ。

小さい作品が多い、そして人物画が多い。ずっと見ていくと確かにコレクターである山本さんの「眼」を意識する。私が気にいったのは、阿部清子「多感のすすめ」、斉藤裕紀「植物が囲む既視の風景」、寒河江智果「春らんまん」、三島祥「蝶々」、石踊達哉「昼下がりの夢」などだ。特に「多感のすすめ」は、少女の揺らぐ心が透いてみえる強い目ぢからの表情がいいと思った。一点だけ自宅に飾るとしたら、この作品だ。一枚、一枚を長い時間をかけて集めた山本さんの眼を感じる。コレクションとは表現行為であるという感を深くした。

偶然だが、すぐ近くに「野口英世記念会館」があった。前から一度訪問したかったところだった。野口英世記念会が運営する会館である。野口英世記念医学賞、野口英世記念奨学金、などの資料が展示されている。野口英世銅像やモニュメントは、161点もある。ニューヨークなどの外国から、日本では小学校、中学校、大学などに多い。
母シカの手紙が涙を誘う。「おまイの。しせ(出世)にわ。みなたまけました。、、、。ドかはやく。きてくだされ。、、かねを。もろた。こトたれにもきかせません。それをきかせるトみなのれて(飲まれて)しまいます。、、いっしょのたみて。ありまする。、、ねてもねむられません、、」。野口は達筆で、油絵もうまい。渡辺淳一の野口の伝記「遠き落日」を読みたい。野口の伝記の嚆矢と言われる奥村鶴吉編「復刻 野口英世」(財団法人野口英世記念会発行)を購入し、読み始めた。出生から手の大やけどあたりを少し読んだが、胸が熱くなる。

夕食は、都内に勤める娘と、同居中の息子と、わたしたち夫婦の四人で待ち合わせて、新宿の京王プラザホテルで摂る。過去のエピソード、今後のことなどを話題に楽しい時間を過ごした。
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今日の一首
 手紙にて 添削終えた 歌届く 歌人の母は 厳しくもあり