「新聞・テレビはなぜ平気で『ウソ』をつくのか」(上杉隆)

新聞・テレビはなぜ平気で『ウソ』をつくのか」(上杉隆・PHP新書)。

新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか (PHP新書)

新聞・テレビはなぜ平気で「ウソ」をつくのか (PHP新書)

この書は「官報複合体」の告発書である。上杉隆氏の日本の記者クラブに対する最後通告である。
政府とマスコミのもたれ合い、癒着の構造を最近の実例を豊富に使って解き明かし、既存メディアは「報道」ではなく、「政府広報」であると結論づけている。

  • 現場の記者があげたメモは官邸中枢まで即日のうちに届く。「官邸は、機密費で各新聞社の幹部からメモを買っていた。、、、情報の対価として機密費から100万程度を支払っていた」(官邸関係者)

著者が独自に入手している40万枚のメモの存在は国家の中枢を揺るがす問題であり、事件や事故に巻き込まれた場合には、そのメモを公表する手はずを整えた上での発言であるだけに重いものがある。

メルトダウンはしていません」「拡散していません」「安全です」「収束します」「検証します」と流れた原発報道の検証なども説得力がある。

インターネットで流れる自由報道協会の手作りの記者会見の様子などを動画で見る機会がある。著者と著者が代表をつとめる自由報道協会の使命は、記者クラブシステムのおかしさを可視化することだと考えてきた著者は、2011年いっぱいをもってジャーナリストを休業した。これまでとは違ったアプローチで記者クラブシステムを変えることを追求していくそうだ。今後は、インターン(実習生)の受け入れ、自由報道協会賞の創設、、、など次世代のジャーナリスト育成にも力を入れるとのことだ。

最後は「官報一体の巨大なシステムに挑んで無傷でいられるとは思っていない。、、システムもろとも地獄に落ちる覚悟で、私はこれからも日本のジャーナリズムの刷新に挑戦しようと思う」と結んでいる。

原発事故のみならず常に本当のことを言うおうとしている上杉隆氏の言説に注目してきたが、まとまった本は初めて読んだ。覚悟の書である。