「よもやま話 素顔の諭吉」(福田一直)を楽しむ

「福翁事伝 よもやま話 素顔を諭吉」(福田一直)を読みながら中津から東京へ。
中津に住む元朝日新聞記者の著書だ。

中津の偉人・福沢諭吉の人間に溢れるエピソード集。
「出生」「体力」「逝去」「風采」「素行」「雑事」「性格」一族」「好物」「趣味」「洋行」「舶来」「透視」「独立」「反骨」「辛口」「慈愛」「望郷」「交際」「暗殺」「世評」「財産」「女気」「文芸」と目次が並んでいる。

「性格」の項では、以下のように記されている。人物が目に見えるようだ。
「頭の回転が速い、努力家、ユーモアがある、機知に富む、皮肉を言う、風変わり、俗っぽさを好む、独立心が強い、財力を信じる、倹約家、打算的、癇癪持ち、正義感がある、二枚腰、権威を恐れず、腕力を嫌う、方便を使う、無遠慮な点あり、血を恐れる、涙もろい、議論好き、座談に長じる、目先が利く、合理的で進歩的、宗教に淡白、筆まめ、文章と演説がうまい、骨董や茶の湯を敬遠、消閑文を好まず、女性解放の先覚者、こよなく日本と日本人を愛す、、、。

「世間の老人連中は長生きのことばかり気にするが、寿命というものは歳月の長短ではなく、人生に厚みや幅があって、苦楽が多く思索を続ける人が真の長寿者だ」

「留学する者に、アメリカ人は秘密の場所に案内したり、技芸を縦覧させたりはしない」

「世評」の項が面白い。同時代の著名人の評価。

著書は34年間で749万部を発行。
授業料をとることを発明。
福沢屋諭吉と称する出版元をつくった。
晩餐会、園遊会、歌留多会、茶話会をよくした。
堅物。フェミニスト
耳学問に長けていた。

縁者:福沢幸雄(レーサー)。藤原あき。
関係者:手塚治虫(緒方塾の手塚良仙)。岡田嘉子(福沢塾の岡田摂蔵の孫)。湯川秀樹(福沢塾の小川駒橘の孫)。原田直次郎(英学を学ぶ同士・原田一道の次男)。

「人生にはライフワークと言うものがある。これがあるかないかで一生の勢いが違う」という1925年生まれの福田一直さんには、同郷中津の先覚者福沢諭吉研究があった。「文豪福沢諭吉」。「福沢先生教訓集」。第三作が「よもやま話 素顔を諭吉」である。