寺島文庫リレー塾秋の第1回は、寺島実郎「2017年秋 世界の構造転換」

第8期 寺島文庫リレー塾2017「後記」が始まる。全5回。

今期のテーマは「激動の世界--直面する変化の本質を考える」。

本日のテーマ。「2017年秋 世界の構造転換」

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 アメリカ西海岸。8月。

東海岸と西海岸の亀裂。ホワイトハウスシリコンバレーの段差。保護主義自由主義。政府援助と自立自尊。

・光:「スティーブ・ジョブスはシリア人だった」。2%台成長のエンジン。トップはインド人、韓国人、中国人、日本人、、。ウーバーに1000億円投資、、、。

・影:シリコンバレーの不動産暴騰。2億円以上となり手が出ない。中間層、若者、学生は生活が苦しい。AIが迫る環境。2045年シンギュラリティ・6割の仕事がなくなる・天才にしか仕事がない世界、中間職種(事務・営業・レジ、、)はなくなる。中間層の没落。この波は日本にも。11月の映画「サークル」は高度SNS社会の問題がくっきり見えてくる。

ウイーン。8月。第42回中東協力会議で基調講演。国連関係組織の集積。IAEAなど。北朝鮮は巨大な大使館を設置。ジョンウンはウイーン留学。

・7月7日の核兵器禁止条約は122ヶ国が加盟。まとめ役はオーストラリア。2014年に核兵器を使用しない、廃絶の先頭に立つと誓う。この条約に日本は不参加。アメリカの核の傘で守られているからという理由。オーストラリアは「核の傘は防衛だ。日本は先頭に立て」と説得したが拒否された。東南アジア(アセアン)は棄権したシンガポール以外の9ヶ国は参加。日本は理念と基軸を語るべき立場だ。アメリカの北へのあらゆる選択しに賛成としているが、この中には核攻撃も入っている。アメリカに対してもここには反対と言うべきだ。原子力の平和利用と核の軍事力は裏表。筋道の立った政策を。

モンゴル。9月

・北東アジアというキーワード。モンゴル国300万、内モンゴル400万。1948年北朝鮮と国交(今年は70周年)、朝鮮戦争孤児を育てた、北朝鮮で2000人のモンゴル人・モンゴルで数万人の北朝鮮人が働く。1990年韓国と国交。1922年ソ連の衛星国、1989年ソ連崩壊で1992年民主化プーチンロシアと周金平中国。モンゴルと北朝鮮の関係(フビライの娘が王妃、元寇は高麗軍、、)。拉致問題

中東協力現地会議のメモ。石油。

・供給:世界一の生産のアメリカと4位のイランが豊富に産出、抑制の気配はない。供給は増える。

・需要:省エネ技術向上でエネルギー弾性値は低下(マイナス0.3。日本はマイナス1.8%)。欧州・中国ではガソリン車無しの流れ。需要は減少。現在47-49ドル。1バレル70ドル以上にはならない。

・波乱要素は余剰資金によるマネーゲームで価格を押し上げた場合。IAEAは78-100ドルと予想。エネ債権中心のハイイールド債スプレッド(10年国債との金利差)。30ドル。

・日本は30ドルから70ドルまでの価格変動なら大丈夫。円安と原油価格上昇が重なると大打撃。

エネルギー地政学カタールサウジアラビアと断交。湾岸諸国が初めて割れた。イラン包囲網で温度差。カタールは、アルジャジーラ・サウジ批判・イランとの結託の疑念、サウジの嫉妬。シーア派イランの台頭とエルドワンのトルコの野心の対立で地域パワーが先祖帰り。アメリカの後退で100年前のサイコス・ピコ協定の前に戻ている。

地殻変動によって主張やニーズが多様化。日本の役割は野心がなく技術があるというスタンスで貢献。

ロンドン。「ユニオンジャックの矢」は立体的に描いた世界観の終結点的作品。ロンドン(企画)。ドバイ(金融)。ベンガロール(IT)。シンガポール(成長)。シドニー(資源)。このネットワークがポイント。英語、英国法、文化の共有。中国はアイデンティティクライシス、中華民族の栄光という新たな統合概念。大英帝国は引き際の魔術師。英国と中国の関係、AIIB80。メイはどこまで持ちこたえられるか。氷の女(サッチャーは鉄の女)。映画「ダンケルク」。チャーチルルーズベルト真珠湾攻撃ら3日後にアメリカ参戦。日本はヒットラーと手を組んだという見方。1600年アダムス、長州ファイブ、日英同盟アングロサクソン同盟が20世紀の75%。

世界観を踏み固めているい。「中東・エネルギー・地政学」。「ユニオンジャックの矢」、、。君主制と共和制の経験から立憲君主制を採用した英国。

政治と経済の乖離。

・トランプ政治の停滞。経済好調。「デモクラシーは金融資本主義を制御できるのか?」。フィンテック。MAT投資顧問は24h。日本は運用ができない。

・この夏、トランプ政権は変質。金融・軍事複合体へ。ウオールストリートと軍人。ケリー・マティス・マクスターは軍人。ブラックスワン計画。北への先制攻撃はしない。先に相手に手を出させる。近代戦は、電源と情報回路の遮断。独裁国家は動かなくなる。イラクの教訓。島根・鳥取クラスの国力の北朝鮮。冷戦期とは脅威の質が違う。ライオンとハムスター。北は今年間違いなく食糧危機になる(軍人による田植えができなかった)。

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「名言との対話」。9月19日。高橋是清「 その職務は運命によって授かったものと観念し精神をこめ誠心誠意をもってその職務に向かって奮戦激闘しなければならぬ。いやいやながら従事するようでは到底成功するものではない。その職務と同化し一生懸命に真剣になって奮闘努力するので(することで)はじめてそこに輝ける成功を望み得るのである」

高橋 是清(たかはし これきよ、1854年9月19日嘉永7年7月27日〉 - 1936年昭和11年〉2月26日)は、日本幕末武士仙台藩士)、明治、大正、昭和時代初期の官僚政治家立憲政友会第4代総裁。第20代内閣総理大臣。

1854年に芝で生まれ、仙台藩士の高橋家の養子になる。横浜でヘボン夫人から英語を学ぶ。14歳、藩からアメリカ留学。明治維新を知り帰国。森有礼の書生、教員、翻訳業、駅逓寮の役人を経て、39歳で日銀に入り日清戦争で戦費調達に尽力した川田小一郎総裁に鍛えられ頭角を現す。1904年の日露戦争の外債募集を成功させる。1927年の金融恐慌では支払い猶予令(モラトリアム)を3週間敷き沈静化、、、。後に高橋財政と呼ばれるほど評価が高い仕事師だった。

旧高橋是清邸を訪ねた。赤坂にあった政治家の高橋是清邸の主屋部分を移築した建物だ。1902年に完成してから1936年(昭和11年)に2・26事件で暗殺されるまで30年あまりを高橋はこの家で過ごした。総栂普請の和風邸宅。「不忘無」(無であることを忘れるな)という書がかかっていた。2階の部屋で寝間姿で布団に座っていた高橋是清青年将校達は、銃弾を浴びせ、軍刀で切りつけた。即死だった。2・26事件である。

高橋是清「随想録」 では、「仮にある人が待合へ行って、芸者を呼んだり、贅沢な料理を食べたりして二千円を費消したとする。、、料理代となった部分は料理人等の給料の一部分となり、料理に使われた魚類、肉類、野菜類、調味品等の代価およびそれらの運搬費並びに商人の稼ぎ料金として支払われる。、、芸者代として支払われた金は、その一部は芸者の手に渡って、食料、納税、衣服、化粧品、その他の代償として支出せられる。、、、二千円を節約したとすれば、この人個人にとりては二千円の貯蓄が出来、銀行の預金が増えるであろうが、その金の効果は二千円を出ない。しかるに、この人が待合で使ったとすれば、その金は転々して、農、工、商、漁業者等の手に移り、それがまた諸般産業の上に、二十倍にも、三十倍にもなって働く」と経済をわかりやすく語っている。
 「精神を磨いて、一身の品性を高め、引いて、感化を周囲に与え、結局は国民の品性を高め、更に子々孫々の品性を高めむる点に出来るだけの力を注ぐことが、我々のこの世に生存する第一の面目であることに先ず考え至るべきものである。」

高橋是清は若い頃にアメリカに渉っている。学費や渡航費用の着服、ホームステイ先の両親にだまされ、奴隷同然の生活を送っている苦労人である。この間に習得した英語が身を助けた。その高橋是清は、職務は運命として観念して奮戦激闘せよと言う。その心構えが高橋自身を大きくし、日銀副総裁として日露戦争という国難を救い、また金融恐慌、世界恐慌、を沈静化させるなど6度の大蔵大臣を担当し、2・26事件で斃れるまで長く国難にあたった。常に「運命」と観念して奮闘する姿が目に見るようだ。