「ライブ、保管、保存」。

今日は、書斎の書棚の本と書類を整理し、ダンボールに詰める作業を行った。

「ライブ、保管、保存」という方針を貫くことにする。研究室では、机の上はライブ、書棚は保管、引き出しは保存という考え方でやってきたが、自宅でも現在進行中のライブのプロジェクトに関わる書籍やダンボックス中心にし、研究室を「保管と保存」の場所とする方針。

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「名言との対話(平成命日編)」4月30日。竹内宏「「30才代までは議論しなさい。40才代には議論を聞いてあげなさい。50才代になったら議論に負けてあげなさい」

竹内 宏(たけうち ひろし。1930年9月13日 - 2016年4月30日)は、日本経済学者日本経済中東アジア経済)、評論家キャスター

竹内宏は銀行調査部にあるデータと専門家へのヒヤリングと旺盛なフィールドワークによってファクトをつかみ、既知の経済理論では解けない経済現象を解き明かし、高度成長期以降の日本経済を優しい語り口で説明してくれた民間エコノミストである。

趣味のパチンコを題材にした『路地裏の経済学』(1979年)で世間に知られる。そしてスキー場で三浦雄一郎岡本太郎と知り合ったという趣味のスキーをテーマとした『竹内宏のスキー経済学』(1986年)も出版している。実感と数字を組み合わせた独特の論調は人気があった。例えば、スキーに関しては「熟年者スキーヤーが中心になる。親子スキー教室、託児所付きママさんスクール、温泉付き山岳ガイドツアー。経済成長が鈍化すると文化的欲求が深まっていく。若年人口の減少とレジャーの多様化で低迷する。神田はスキーの町。スキー宅配便は救いの女神。蔵王サンモリッツなど海外スキー場との姉妹関係」などの洞察や提言があふれており、ビジネスマンに人気があった。

長期信用銀行の調査部長で専務まで上り詰めた20歳年長の知的実務家の先達としてこの人の本はよく読んだ。私自身は経済書より、『現代サラリーマン作法』(1983年)などの仕事論、生き方論に関心があった。例えば、「書棚は使いこなせるが、書庫をつくっても探さない。毎日3枚書いた。30代、40代は読書らしい読書はできなった。風呂では古典、トイレではドイツ語という生活。予備知識を持たずに現地に行き後で本を読むと理解のスピードが速い」。こういう知的生産の技術は参考にしたものだ。

竹内宏は日銀、山一証券経済研究所で活躍した吉野俊彦のような生き方がしたいと憧れた。竹内より15歳年長の吉野は鷗外の研究家としても有名だった。定職を持っていながら同時に作家である二重生活の苦しみと喜びを味わいながら、人生を生きぬいた先達である。鷗外、吉野、竹内という二足の草鞋の流れが確かにある。私のキャリアもその流れの中にある。

長銀総研理事長退任後の1998年以降は、竹内経済工房主宰、 価値総合研究所特別顧問、 静岡県理事長、静岡県立大学グローバル地域センターセンター長、静岡県公立大学法人理事長など多くの仕事に関わっている。そして80代に入っても『午後6時の経済学』(朝日新聞出版 )、『経済学の忘れもの』(日経プレミアシリーズ )を出版している姿には励まされる。

サラリーマンとしても高い地位に昇った竹内宏は、人事の機微にも通じていたように思う。年配になったら、役職についたら、「議論に負けてあげなさい」というアドバイスは今でも心に残っている。

現代サラリーマン作法 (1983年) (ちくまセミナー〈2〉)

竹内宏のスキー経済学