「人生鳥瞰図」をテーマとしたロングインタビュー。

大学

・P社で出版予定の本のロングインタビュー。今回は「人生鳥瞰図」が主題。3時間。次回は来週火曜日にP社の会議室で行う予定。

・TACの二川課長来訪。長島先生、松本先生とミーティング。

日本地域社会研究所:「編集・出版会議」を始める。まず12月は松田俊秀さんに「フォト川柳」の企画を話してもらおう。

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「名言との対話」12月2日。多田道太郎「自分が拠って立つ生活感覚を基礎にして学問をつくらなくてはいけない」

多田 道太郎(ただ みちたろう、1924年12月2日 - 2007年12月2日)は、日本のフランス文学者評論家京都大学教授。

桑原武夫が主宰し、梅棹忠夫梅原猛、上山春平、鶴見俊輔らを育てた京都大学人文科学研究所での共同研究システムの一員となった。フランス文学、特にボードレールを専門とした。多田道太郎編『ボードレール 詩の冥府』(筑摩書房 1988年)は、わずか3人で始めた読書会に人が集まってきてそれをまとめたものだ。共同研究という方法でまとめたものだ。

1978年に『クラウン仏和辞典』(多田道太郎ほか編)で毎日出版文化賞(企画部門)を受賞。1998年に『変身 放火論』で伊藤整文学賞(評論部門)を受賞。主要著作を収めた『多田道太郎著作集』(筑摩書房・全6巻)がある。

一方で多田はカイヨワの「遊び」論に関心が深く、大衆文化、関西文化、日本人論などについて数多くの評論を書いている。遊び、しぐさ、風俗、日本語、美学など、関心分野は広い。『複製芸術論『しぐさの日本文化』『物くさ太郎の空想力』『動詞人間学』『風俗学』などユニークなタイトルの著書も多い。専門よりもこの方面での著作が多い。

多田道太郎『自分学』を読んだ。この本でいう自分とは日本のことである。オビには「知らなかったボクを知り、わたしの心がわかり、おのれ自身を映し出す」とある。自身の身の回りのものから発想するという独特の視点で日本文化をとらえなおそうという姿勢で、身辺学問として「自分学」を提唱した。身辺から発想する「私学問」「身辺学問」で、身辺にあるものすべてを題材とした。「自分が拠って立つ生活感覚を基礎にして学問をつくらなくてはいけない」という主張だった。

「サンマは下等か」「物言う肌」「なまいきな視覚」「漬物とチーズ」「胃袋の中のヨーロッパ」「間をとりもち仲人」「豆腐の宗教・畳の美」「という7章に分かれていて、実に面白い。130数歳で強姦したオールドパー(152歳)、風呂屋のペンキ、混浴、漬物と西田哲学、お祓い、のれんと結界、女のしぐさ、ワサビの殺菌作用、緯度大国・日本。、、、。「視覚一代、聴覚二代、味覚三代」ということわざも紹介している。絵描きは一代でできる、音楽家は二代かかる、そし、料理人の出現には三代かかるという意味だ。味覚はもっとも保守的な感覚なのだ。

生理学者のシェルドンは、体型と気質の関係を探った。内胚葉型は胃袋が丈夫、中胚葉型は筋肉が発達、外肺葉型はやせて神経質。文明の類型については、内胚葉型は農業社会、中胚葉型は工業化社会、外肺葉型は次の時代と書いている。梅棹忠夫の文明の情報史観は、このシェルドンの発展だったのだ。

また多田は1990年から武庫川女子大学生活美学研究所所長という役職についている。その研究所の設立30周年記念事業の『生活美学と多田道太郎』という叢書をみると、多田は桑原武夫のもとでやっていた「風俗学」の看板を、世間話から素材を得て発想するという学問を構想し、「生活美学」と書き換えたと述べていた。その研究所も2020年には30周年を迎えているから、自分が拠って立つ生活感覚を基礎にした学問の種は何とか育ったようだ。多田道太郎は生活美学という学問の創始者として名を刻んだことになるのだろう。

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多田道太郎『自分学』(朝日出版社