ユーチューブ「遅咲き人伝」第11回「安藤百福」をリリース。

ユーチューブ「遅咲き人伝」第11回「安藤百福」をリリース。

https://youtu.be/nAzGRQ-tVBU

「名言との対話」1月5日。安藤百福「「?」は、「!」のモト」

ハレー彗星の接近の年に生まれた安藤百福は48歳でチキンラーメンの開発に瞬間油熱乾燥法を用いて成功した。61歳で究極の加工食品と呼ばれるカップヌードルを開発する。直後の1971年の浅間山荘事件で機動隊がカップヌードルを食べる映像で大ブームとなった。そして永年の夢であった宇宙食ラーメン(スペース・ラム)を開発しNASAに提供し野口聡一宇宙飛行士が宇宙で食べたのは95歳の時であった。97歳の1月5日に亡くなったが、日清食品の社葬は宇宙葬であったというから徹底している。安藤の人生を眺めてみると、敬服と同時にある種の滑稽さも感じる。横浜の安藤百福発明記念館(愛称はカップヌードルミュージアム)は子供たちに圧倒的な人気があったので驚いたことがある。安藤は食産業は平和産業であると認識していた。

「社長とは権力ではない。責任の所在を示している」。「時計の針は時間を刻んでいるのではない。自分の命を刻んでいるのだ」。こういう言葉を数多く残している安藤は、単なる発明家ではない。ある種の思想家的資質もあったように思う。

最後に行き着いた「食に関する疑問(「?」)を徹底的に研究し、実験し、失敗し、少しづつ山を登っていくと、真実(「!」)に近づいていく。その作品がチキンラーメンであり、カップヌードルであり、そして宇宙食ラーメンであった。イノベーターの人生というものは、こういった道程の繰り返しだろう。小さな疑問を一生かけて解いていく。常にまず疑問を持つことから始めたい。

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  • ヨガ教室で1時間。
  • 「名言との対話」の2021年の補充の執筆「河合隼雄」「駒井哲郎」。

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「名言との対話」。7月23日。レイモンド・チャンドラータフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きている資格がない」

レイモンド・ソーントン・チャンドラー(Raymond Thornton Chandler, 1888年7月23日 - 1959年3月26日)は、アメリカ合衆国シカゴ生まれの小説家、脚本家。

父がいなくなった後、1900年に母親はイギリスのロンドンに引っ越す。それは最高の教育をさせるためであった。チャンドラーはパブリックスクールとカレッジで教育を受けた。「現在クラス」と「古典クラス」の両方を最上級まで終了している。

大学にはすすまず、公務員、新聞記者などを経験し、第一次世界大戦ではイギリス海軍に入っている。チャンドラーは友人の母であった18歳年長のシシイと恋愛し、1920年に結婚している。

チャンドラーは44歳の1932年、大恐慌の影響で職を失い、独学で小説の書き方を学んだ。そして1939年に処女長編「大いなる眠り」を発表し、人気作家になっていく。チャンドラーはハードボイルド探偵小説の生みの親である。彼の探偵小説の主人公フィリップ・マーロウは、私立探偵の代名詞となった。

映画化された作品が多い。また自身でも脚本を書いている。アメリカ探偵作家クラブ会長にもなっている。チャンドラーの墓石には「大いなる眠り」の一節「Dead men are heavier than broken hearts.」が刻まれている。

チャンドラーは「推理小説についての覚書」を書いている。

推理小説は事件発生の状況についても、事件の解決についても、信じうべき裏づけがなければならない」。「殺人と捜査解決の方法が常識的でなければならない」。「人物、舞台、環境は現実的でなければならない」。「謎の要素から離れてもストーリーがしっかりしたものでなければならない」。「その機会が来たときにたやすくを説明できるようなわかりやすい構成を持っていなければならない」。「 論理的に頭が働く知的な読者を対象から除かなければならない」。「謎が一旦解決されたなら、当然そうなるべきであったと思わなければならない」。「すべてのことを一度になそうと試みてはならない」。「犯罪者をなんらかの方法で罰しなければならない」。「読者に対して論理的に正直でなければならない」。

『高い窓』という作品を読んでみた。私立探偵のマーロウが金持ちの未亡人から、盗まれた金貨といなくなった息子の嫁を探すことを依頼される物語である。

展開が早く余計な説明がないハードボイルドタッチの文体だ。しゃれた、あるいはスパイスの効いた会話は、テンポが速く、場面の展開がスムーズだ。また、読み進めると、先に紹介した「推理小説についての覚書」が腑に落ちる感じがある。

チャンドラーは、独学で推理小説を学んだと言われるが、おそらく多量の本を読み込んだうえで、推理小説の原則を自分で見出し、それを頭に入れて、作品を書いたのではないだろうか。

チャンドラーの言葉では、「プレイバック」という作品の中で私立探偵のマーロウが言った「タフでなければ生きていけない。やさしくなければ生きている資格がない」が有名だ。女性から「あなたのようにしっかりした男がどうしてそんなに優しくなれるの?」と聞かれた時の答えである。

読書家で有名な平岩外四経団連会長への就任時に記者会見でこの言葉を語って、ビッグビジネスのトップの言葉としての意外性から話題になった。殺人的スケジュールをこなすタフさとお客様へのやさしい経営を志すことを述べたのだ。平岩は組織運営について言ったのだが、人びとは個人の生き方についての言葉として共感の波が広がったことを思いだす。

作者が書いた一つの言葉が読者を通じて、他国のトップにも影響を与え、それが池の水面が波紋の様に広がって、多くの人に響いていくことがある。チャンドラーのこの言葉は、その最たるものだ。生きるためには強いことが必要だ。その通りだ。だが、やさしくなければ、生きている資格がない。その通りだ。生き方に影響を与える素晴らしい教えだ。