出光美術館「琳派のやきものーー響きあう陶画の美」展。

東京ステーションギャラリはーは休館日、三菱一号館美術館は改築中で休館。そのまま足を延ばして、出光美術館を訪ねた。

琳派のやきものーー響きあう陶画の美」展をやっていた。乾山生誕360年の企画だ。

江戸時代中期を代表する京の陶工・尾形乾山(1663-1743)。

きらびやかで装飾性の強い琳派は、俵屋宗達(?ー1640)、本阿弥光悦(1558-1637)から始まり、尾形光琳(1658-1716)が大成し、酒井抱一(1761-1828)などが継承した。
尾形乾山(1663-1743)は、尾形光琳の5つ違いの実弟だ。京都の高級呉服商の二男、三男である。やきもので装飾性の高い作品と同時に、水墨画のように静かな作品もつくっている。

乾山焼は意匠に、和歌、能、漢詩などの文芸を主題として用いたことが、陶芸史上の革命だった。茶碗、皿、硯箱、水掛、鉢、扇子などに、詩や和歌などとそれをあらわす絵をかきつけている。高い学殖と技術に裏づけられた作風であり、堪能した。

兄の光琳は59歳で没しているが、乾山は長生きで81歳まで生きている。
陶工の乾山と絵師の光琳。二人の合作という豪華な品もある。
後に、酒井抱一(1761-1828)が光琳の100年忌を行うなど顕彰活動を始めて、乾山を発見するのだ。乾山の流れは、酒井抱一、鈴木其一(1796-1858)、そして井伊直弼(1815-1860)、富本憲吉(1886 -1963)、バーナード・リーチ(1887-1979 )へと続いていく。

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知研へ入会した30代初めにお世話になった仙波さんと再会。

丸ビルのモリタ屋で昼食。

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「名言との対話」6月27日。鈴木三重吉子供のために一流の文学者が進んで執筆しなければ嘘だ」

鈴木 三重吉(すずき みえきち、1882年明治15年)9月29日[1] - 1936年昭和11年)6月27日)は、小説家児童文学者日本の児童文化運動の父.

広島出身。15歳から「少年倶楽部」や、「小国民」などに文章を投稿し、中学2年ですでも童話を書いている。京都の三高を経て東京帝大の英文科にすすみ、夏目漱石の指導を受ける。

神経衰弱で休学中の24歳で書いた『千鳥』が、漱石に絶賛され、雑誌「ホトトギス」に掲載される。復学後、漱石門下となる。卒業後、千葉県の成田中学で英語を教える。29歳、東京で中学講師をつとめながら、活発な創作活動を行う。1915年から、『三重吉全作集』の刊行をはじめる(全13巻)。

34歳、娘が生まれたことをきっかけに童話など児童文学を手がける。35歳、『世界童話集』の刊行を開始。36歳、児童文学誌『赤い鳥』を創刊し、中学も辞めて本格的に取り組む。当時の著名作家に執筆を依頼する。芥川龍之介蜘蛛の糸」「杜子春」、有島武郎一房の葡萄」、北原白秋の童謡、西城八十の詩、そして児童劇などの名作が生まれている。当時の教訓色の強い読み物とは違う路線となった。46歳、騎道少年団を設立し、少年の精神教育に力を注ぐ。

小説『桑の実』を手にして三重吉の人物像を探った。わずか6年という短い小説家時代の作品である。毛筆で書いた作品。「文庫版初版」解題には、「夏目先生からも、極度にほめていただいた」と書いている。どういうこともない日常をたんたんと描いた作品。「国民新聞」連載は途中何度も休みながら68回続いた。なつかしい、ほのぼのとした、清澄な作品で、読者は幸福感に浸れた珍しい作品である。

53歳での三重吉の死で、『赤い鳥』は終刊となった。18年間で196冊まで積み上がった『赤い鳥』から、新見南吉など多くの作家を誕生させた功績は大きい。また、全国の児童からの投稿を募り、選評とともに掲載する「綴方」運動も見逃せない。「みんなちがってみんないい」で有名な金子みすゞもこの雑誌で白秋から誉められている。

雑誌は才能が誕生するインフラである。漫画雑誌「ガロ」などもそうで多くの才能を世に送り出している。このインフラの上にコンテンツを創る人たちが出る。芸術分野の技法もインフラ的な要素がある。新しい技法をつくった人がいて、その技法を使って作品が花開く。そして鉄道、空港、道路、ホテル、都市、図書館、ソフト、メディア、教育制度、、などの社会インフラも同様の役割を担っている。インフラこそ、肝である。

若い頃には子ども嫌いだった三重吉は自分の子どもが誕生すると、テーマが子どもになった。その子どものために、一流の文学者を巻き込み、子ども自身に対して門戸を大きく開き、励ますという生涯を送った。師の漱石は弟子の育成に熱心で、漱石山脈ともいわれる後代の才能を世に出したが、この人も雑誌『赤い鳥』というインフラを立ち上げ、「日本の児童文化運動の父」と呼ばれた。後代までも大きな影響を残した人として記憶したい。