宮家邦彦「哀しき半島国家・韓国の結末」(PHP新書)

宮家邦彦「哀しき半島国家・韓国の結末」(PHP新書)を読了。

哀しき半島国家 韓国の結末 (PHP新書)

哀しき半島国家 韓国の結末 (PHP新書)

北東ユーラシアを地政学的に理解するためには、中華とコリア半島の間に位置する旧満州の理解が不可欠との観点から、コリア半島をめぐる近未来予測を行うことを意図した書。

嫌韓派が批判する時に使う事大主義とは、大に事えるという意味だ。大とは中国を意味している。
上位にある中国には侵略されてもしかたないが、下位の日本に侵略されるのには我慢ができない。
この安全保障政策の基本である事大主義的心情が日韓の関係を複雑化している。
面白いのは北朝鮮はこの事大主義を批判している。北朝鮮の最も主要な政治思想は「主体思想」だが、その自主・自立は事大主義の克服を意味している。
この事大主義が「恨の文化」を生んだ。それは下位に置かれた不満の累積とその解消願望であるが、一方で憧れや悲哀や妄念などを表す半島独特の感情でもある。事大先は、中国、日本、アメリカと変わっていく。
朝鮮が「小中華」と自らを呼ぶことがあるが、これは同格であった旧満州女真族清朝を建てて以来、コリア半島こそが真の中華文明の後継者と考えて使った言葉なのだ。

さて、このような説明の後、前著「語られざる中国の結末」で述べている第二次東アジア戦争後の中国の変容と韓半島の動き、そして日本のとるべき戦略を語っている。
中華統一と中華分裂の二つのシナリオの中で、それぞれ北朝鮮崩壊がソフトランディングの場合とハードランディングの場合、そして金一族失脚するが北朝鮮存続、北朝鮮が南進する場合に分けて論じている。

著者のアジア政策の基本的考え方は「島国同盟」だ。
それは、大陸のバランス・オブ・パワーを維持すること。大陸の諸問題に深入りしない。海上交通路を確保し貿易を奨励する。これはイギリスの戦略だが、日本も地政学的には同じ戦略をとるべきだという考え方だ
アメリカは大ユーラシア大陸の欧州地域ではイギリス、アジア地域では日本との同盟という大戦略でやってきたと言える。

いくつもの理論的に考えうるシナリオを検討した結果、著者は次のように結論を導いている。
日本にとって最善のシナリオは、中華地域の非強大化、旧満州地方の安定、コリアの統一・安定・繫栄、以上によって北東ユーラシア地域でのバランスオブパワーを確実にすることだ。
一方最悪のシナリオは、中華地域が統一・強大化、旧満州地域やコリア半島、台湾、そして東シナ海南シナ海などの現状を変更脛句自己主張を強め、既存の秩序に挑戦することだ。
最も蓋然性が高いシナリオは、北朝鮮という緩衝地帯を維持するために、金一族を除いて北朝鮮を守ろうとすることだ。崩壊前に内政に手を突っ込むことになる。

韓国は冷戦時の枠組みである日米韓連携ではなく、伝統的な対中華の冊封関係となった可能性がある。

以下、民族性に関わる言葉をピックアップ。
・正気を失うほど激しく怒る。
・自分の感情をコントロールする術を知らない。
・狭量、千篇一律、自惚れ、横柄、自尊心、利己的個人主義

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1月14日が命日。

  • 徳川光圀:「誕生日は、最も粗末な食事でいい。 この日こそ、母を最も苦しめた日なのだから。」
  • ルイス・キャロル:「どっちへ行きたいかわからないのなら、どっちの道に行ったって大した違いはないさ」(「思議の国のアリス」)

1月14日が誕生日。

  • 福田赳夫:「総理でなくても仕事はできる」
  • 三島由紀夫:「散るをいとふ世にも人にもさきがけて散るこそ花と吹く小夜風」
  • 細川護煕:「つまるところははらが坐っているかどうかだけなんですよ。やることは断固としてやるという私心のない人が、5、6人いたら、大抵のことはできる。」