日本の戦後史の根源的病理とたたかい続ける沖縄の戦後史

17日に琉球大学教育学部の島袋純先生の講義を聴いた。
島袋先生は早稲田大の大学院卒。助教授を経て2007年から教授。行政学、サブナショナルレベルの地方自治リージョナリズムの国際比較などが専門。スコットランドエジンバラ大学の研究所の客員をしていたこともある。

以下、その内容のまとめ。
タイトル:日本の戦後史の根源的病理とたたかい続ける沖縄の戦後史。

  • 軍事植民地からの解放のための自己決定権の確立。
  • 琉球国
    • 1372年中山王が明に朝貢。(同じころ足利尊氏、義満も朝貢)。中国からテクノクラートを派遣してもらっていた。帰化人。
    • 和寇との対比で軽武装国家であり、中国からは守礼の国と言われる。
    • 1609年から薩摩の支配。薩摩は朝貢を続けさせ、その利益を取った。琉球にはそれなりの自由があった。
    • 1854年にアメリカとの琉米修好条約を締結しアメリカ上院は批准。オランダ、フランスとも締結。
    • 1879年に琉球処分。国王は拉致される。鍋島藩? 琉球士族は協力せず北京に亡命。「反対もなく」と言われているが、実際は屈辱であり、救国活動を続けた。日中の交渉の中で、日本は分島案を提示(先島は中国、他は日本)していたが交渉は成立しなかった。琉球は日本への同化の道しかなくなった。武力による威嚇による領土の摂取は国際法ウイーン条約違反だ。
    • 「沖縄学の父」と言われる伊波普猷琉球は言語などにみえるように日本文化の古層であり同じ民族であると主張し、民族の統一を積極的に進めるべきだと説いた。そして琉球の伝統文化の保存が行われた。この沖縄学の影響が強いが、同化に力を貸す手先ととなった。今、伊波猷は批判の対象だ。
  • 戦中・戦後。
    • カイロ宣言からポツダム宣言(米英中・ソ):日本は四島と周辺の小島のみ。(沖縄は小島の中には入らない。)
    • 日本陸軍:本土決戦で皇土を守るために沖縄を捨石にするという方針。(皇土には沖縄は入っていない。)
    • 近衛文麿の行ったソ連への仲介工作:日本固有の領土のみでいい。(沖縄・小笠原は捨てる。)
    • アメリカによる施政権の分離・ニミッツ法:北緯30度(奄美)以南を分離。
    • 結果として、日本はGHQによる間接支配。沖縄は米軍による直接支配、日本の法は不適用。
    • 沖縄の日本復帰時には自己決定権で、沖縄に主権回復が必要となってくる。沖縄の主権は認めざるを得なくなる。そうなると基地の土地の返還を要求される。それは困る、米軍が血を流して獲得した沖縄の基地は返したくない。(アメリカの論理)
  • 天皇メッセージ
    • 1947年9月:沖縄を恒久的に貸与する。皇室存続の保障との取引。これが差別の源泉。
    • 駐留軍の特権を保障:50年以上。日米の二国間政府の合意による処遇。(憲法95条の住民投票にかけるべき)。
    • 天皇はアメリカと直接交渉し、夜吉田首相と政府に押しつけた。天皇は誰からこの押し付けの権限を付与されたのか?
    • 1952年のサンフランシスコ平和条約天皇をまもるために日本全土の基地化、自由使用の権利を付与。(岩波新書・豊下樽彦の著書)。行政協定(後に地位協定)で日本国憲法を上回る特権を与えた。協定には書きづらいものは密約を結んだ。
  • 戦後憲法の不幸:米軍のと特権が上、憲法は下。
  • 沖縄をアメリカに差し出し、沖縄に基地を集中させる。岐阜・山梨の海兵隊の基地を1958年、1959年ころに移動。駐留米軍用地特別措置法。本土のまずいものは全て沖縄へ。見せかけだけの主権国家だ。憲法の死と引き換え。
  • 人権:人権が先、法の支配は後。国家機能は手段。権力の侵攻は制限。立憲主義
  • 分断統治を行った。密告者。琉球大生5名の退学処分。社会的連帯ができない。報道の自由もない。
  • 1955年の伊江島の土地強制収容。餓死者、こじき。1956年の島ぐるみ闘争へ。米のプライス調査団「土地の買い上げ」。10万人から40万人の集会へ。独自の政府構想が始まりアメリカがあわてる。スパイ、懐柔、協力者、買い物をしない、、分断統治。軍が3権’立法・政府・司法)を握っている状態。1960年代キャラウェイ「沖縄の自治は神話」。
  • 初めてものが言える公共的空間ができた。新聞がきちんと報道ができるようになった。一つ一つ勝ち取ってきたものだ。
  • 市民(議会)が軍を統制すべき。沖縄の米軍はシビリアンコントロール下にはない。
  • 自衛隊は、誰を、何を、守る軍隊なのか? 自衛隊統合幕僚長だった来栖は「国体を守るのが仕事、一人ひとりの国民を守るのは警察」と発言。国体とは歴史、天皇、文化、伝統など国家。
  • 戦後の在日米軍は旧日本軍のようだ。自衛隊は米軍の下にある。
  • オスプレイにはオートローテーション機能がない脆弱な欠陥飛行機。ピストルで撃てば墜ちる。
  • 普天間:豊かな土地に1万人が居住。彼らを強制収容所に入れてその間に家を焼き並木を切り、基地をつくった。その後、彼らはやむなく周辺に住み始めた。軍の仕事、売春宿、、、。クリアゾーン(離着陸時の事故で犠牲にならないよう)がない欠陥飛行場。航空法の適用除外になっている。ハーグ条約違反だ。復帰時に日本政府がアメリカの権利を保障。
  • 首都圏もアメリカ軍が圏域をコントロール。日本の主権下にない。日本本土も本当は沖縄と同じ状況。日本は主権国家か?
  • 人権教育の在り方:いじめ問題などに矮小化。人権意識を血肉化しなければならない。日本の公民教育は失敗した。ファシリテーションを使った教育に。シティズンシップ教育。
  • 海兵隊は本当は佐賀空港が一番いい。
  • 安保、原発など、深く考えようとしない。安保マフィア、原発マフィアは重なっている。政府、マスコミ、教育、、、。本質的な問題を議論すべきだ。
  • メディアの問題:3・11のときは政府のプロパガンダに終始。記者クラブの状況をみると報道の自由はない。世界で53位。真実を書かない。学会、研究者にもいない。圧倒的な少数派。
  • 今回の安保法制で立憲主義の崩壊の危機を感じ、声を上げ始めだした。ここに期待している。