拙著『人生遅咲きの時代 ニッポン長寿者列伝』の電子本「ディスカバーebook選書kindle版」がリリース。

DISCOVER21社から『人生遅咲きの時代 ニッポン長寿者列伝』(日本地域社会研究所)の電子本「ディスカバーebook選書kindle版」が、リリースされました。

https://www.amazon.co.jp/ebook/dp/B09HSHP3FX/ref

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人生の後半は余生ではない。本番である。だれも自分を「終わった人」とは考えない、いわば「終わらざる人々」。人生後半からひときわ輝きを放った81人の生き様は、新時代を生きる私たちに勇気を与える。

第一章 前向きな人(昇地三郎/金原まさ子/加藤シズエ/柴田トヨ/金子兜太/宇野千代/塩月弥栄子/小森和子
第二章 続ける人片岡球子/大野一雄/岩谷直治/高木東六/奥村土牛/三浦敬三/新藤兼人/加藤馨)
第三章 遅咲きの人(橋本武/むのたけじ/豊田英二/佐藤忠良/団藤重光/永田耕衣/芹沢光治良/井伏鱒二/三鬼陽之助)
第四章 ひとすじの人小林ハル/石井桃子/土屋文明/邦 正美/笹島信義/上村松篁/吉田秀和/中川一政/今泉俊光/ドナルド・キーン
第五章 きわめた人木村庄之助/東久邇宮 稔彦王/柳田誠二郎/来栖 継/王馬煕純/宇野精一/安藤百福/笹崎龍雄/木下是雄/岡崎嘉平太
第六章 テーマ追い人近藤康男/奥 むめお/日高六郎/望月百合子/鈴木俊一/大河原良雄/大村はま/坂口謹一郎/大西巨人/山田五十鈴
第七章 みがく人(中川牧三/島田省吾/森信三)
第八章 気概の人蟹江ぎん/日野原重明/水島廣雄/松本重治/流 政之)
第九章 健やかな人成田きん/塩谷信男/三輪壽雪/三笠宮崇仁/安西愛子/横田喜三郎/笹川良一
第十章 つくる人飯田深雪/松原泰道/坂村真民/住井すゑ/林 雄二郎/大竹省二
第十一章 天寿の人小倉遊亀/安藤太郎)
第十二章 スーパー・センテナリアン(大川ミサヲ/長谷川チヨノ/森 シノ)

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国内出版物の電子書籍化率は、11.9%2017年29.6%、2018年31.2%、2019年33.2%。増えてきてはいるが、まだ少ない。

「ディスカヴァーebook選書」は2020年11月に立ち上がり、「良質なコンテンツを電子化して届ける」ことをミッションに、さまざまな作品の電子書籍化を進めている。未電子化書籍の電子書籍版を制作。書籍と同じ価格で販売するのが特色。

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「名言との対話」10月21日。芹沢長介「遺物の年代は、層位が型式に優先する」

芹沢 長介(せりざわ ちょうすけ、1919年10月21日 - 2006年3月16日)は、日本の考古学者。日本の旧石器時代研究の第一人者。

静岡県静岡市出身。父は人間国宝で染色家の芹沢銈介だ。明治大学専門部地理歴史学科卒業、大学院修了。1963年、東北大学へ赴任し助教授、1971年、教授。1984年、東北福祉大学教授。

在野で研究活動を行っていた相沢忠洋が、現在の馬県みどり市関東ローム層の赤土層から、約3万年前に当たる幾つもの石器を採集した。「日本列島に旧石器時代には人類が住んでいない」とされていたそれまでの学説をくつがえした大発見だった。日本列島の人類は数千年前から数万年前に一気に遡った。この遺跡は後に「岩宿遺跡」と名付けられた。

相沢は学歴もなく行商を行いながら考古学を研究していた在野の研究者だ。芹沢は1946年に相沢から相談を受け、1946年、1950年に明治大学の杉原荘介教授らと岩宿遺跡の発掘調査を行った。この大発見の功労者が誰かをめぐって杉原教授と対立し、芹沢は東北大学へ移ることになる。

芹沢は石器の使用痕研究を推進し、また前期・中期旧石器と考えられる石器を出土する遺跡調査を実践した。大分県の早水台遺跡や長崎県福井洞穴など旧石器時代の遺跡を調査。栃木県の星野遺跡では、調査結果を基に旧石器の変遷をまとめた。80年代初期まで続いた「前期旧石器存否論争」においては存在肯定派のリーダー的な存在であった。

さて、その芹沢長介は1989年から仙台の東北福祉大学内にできた父親を顕彰する芹沢銈介美術工芸館の館長を死去するまで務めている。私も2006年に訪問したことがある。着物、帯地、暖簾、壁掛、カーテン、風呂敷、屏風、軸などに表した膨大な仕事をみることができる。「屏風、着物、帯地、暖簾、扇子」というテーマの小ホール、「釈迦十大弟子尊像」という小ホール、、。デザインというものは本来無名性の高いものであるのだが、芹沢の意匠はそれをまもりながらも芹沢銈介という作家の独自性を保っているという不思議な存在感を醸し出しているのが印象的だ。それ以来、芹沢銈介のデザインはすぐに判別できるようになった。

「遺物の年代は、層位が型式に優先する」という芹沢の考え方は、どのような形式の石器が掘り出されようとも、地層が古いことが確認できればそちらを優先させるというポリシーである。

2000年10月に発覚した旧石器捏造事件がある。芹沢と親しい相沢を尊敬する在野の考古学研究者・藤村新一は次々と旧石器を発見し注目を集めていた。藤村は「神の手」、「ゴッドハンド」と呼ばれていた。ところが石器の破片を藤村自身が埋め込んでいたという事実が発覚して大騒ぎになる。当時仙台にいた私はこの騒ぎをよく覚えている。

「遺物の年代は、層位が型式に優先する」というポリシーからすれば、古い地層から縄文時代の石器が出てきたなら、古い地層にその石器を使っていた人類がいたと認めることになる。だから新発見が続くことになったのだ。藤村の捏造はここを突いたのである。私は藤村の捏造を認める記者会見を仙台でテレビで見ている。顔をずっとうつむけたまま何やらを喋っていて、最後まで顔は見えなかった。異様な会見だった。それを見抜けなかった芹沢長介は忸怩たるものがあっただろう。

スポーツの世界では新記録が出るたびに、歴史が塗り替えられていく。学問の世界も、新たな発見によって、新しい世界観が現出する。それを切り拓いた人は、名を歴史に刻む栄誉を手にする。しかしそこには、横奪と捏造という人間的なドラマが数多く埋め込まれている。芹沢長介の人生行路を眺めると、真偽は不明な点もあるが、そのネガの部分をも背負いながら研究をすすめたようだ。

父の芸術という創造の世界、息子の学者という発見の世界、そこで名を成すことは、いずれも簡単ではないが、父子ともになんとか乗り切ったのは見事だ。芹沢長介は「旧石器の神様」と呼ばれるようになった。「神様」はたくさん存在する。税の神様、ロックの神様、ナンセンス、ビリヤード、野球、小説、特撮、ショートショート、経営、憲政、イベント、育児、作戦、文学、地震、式典、ジャズドラム、、、。芹沢長介も日本の八百万の神様の一人になったのである。