有名人の書斎探訪記

来年1月に出す本の原稿の最終コーナーに入っている。

最近要請の多い「ビジネスマンもの」だが、今回は仕事以外のもう一つの現場であった知的生産の技術研究会(知研)での30代の活動が多くの部分を占めている。
以下、その一部。

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知研での活動は面白かった。というより日増しに自分で面白くしていった。先生の話を聞くばかりではなく、あるとき、先生の書斎を訪ねるというユニークな企画も立てた。それを講談社に持ち込んだら、編集者がすごく面白がって『私の書斎活用術』という本になった。

私たちは約2年かけて、17人の著名人の書斎を訪ねた。そのときはそういう先生たちと1日何時間も一緒になれるし、それはもう楽しくてしかたがなかった。

評論家の紀田順一郎さんのところは大邸宅で、1階が全部奥様の部屋、2階が全部先生の書斎と書庫だった。好きな映画のフィルムを回す部屋もある。書庫も書斎も充実していて、こんな書斎を持ってみたいと憧れた。

社会学者として知られる加藤秀俊さんは整理の達人で、インターネット上で「加藤秀俊データベース」を公開している人だけあって、当時から自分が今までやってきた仕事を全部ファイリングしていた。

イラストレーターの河原淳さんの自宅は家屋の上に白い箱のようなものが乗っていた。それが書斎だった。階段を上っていくと書斎に入れるが、そこからは四方を見渡せる。河原さんは「物見やぐら」と呼んでいたが、そこから世の中を観察しながらイラストを描いて楽しんでいた。

漫画家の水木しげるさんはお寺、というよりお墓の隣に住んでいた。本人は歯が抜けているのにいつもガーッと笑っている。窓の外にはお墓があるので、「この人は本物の妖怪なんじゃないか」と思ったりした。書斎には、妖怪を新しく生み出すための資料棚があって、どうやって妖怪をつくるのですかと聞くと、「妖怪と妖怪を組み合わせる」と答えてくれた。異質なもの同士の融合。これは、紛れもなく知的生産である。

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