「33歳からの勉強のルール」(水谷隆弘)-泥臭く、格好悪く、粘り強

「33歳からの勉強のルール」(水谷弘隆)。

33歳からの勉強のルール (アスカビジネス)

33歳からの勉強のルール (アスカビジネス)

42才のサラリーマン・水谷弘隆さんが、「10年前の僕」たちに贈った渾身のメッセージ集である。その「10年前の僕」は、次のように表現されている。
「数年前に結婚し、子供も生まれた。最近マンションを購入し少なくない住宅ローンも抱えている。勉強の必要性は感じつつも、仕事と家庭の忙しさんいかまけて最近は何もしていない。でも、いったい何から手をつければいいんだろうか。勉強時間はどうする。そもそも33歳になった今から勉強を始めても間に合うものなのだろうか。意味はあるのか。」

  • 大勢の中から一歩抜け出すことは難しくない。勉強する、というのがその答えである。
  • 世の中でオンリーワンになるのは大変だが、自分の周囲で圧倒的な差別化をすることは決して難しくない。人がやっていないことをやればいいのだ。

この本の最初の方に書いてある言葉だ。迷っていないで「勉強する」という答えを実行するのみであるという単純明快なメッセージである。
著者は30代の最初の方までの仕事ぶりからみるとどこにでもいそうな普通のサラリーマンであった。北大を出て、旭化成に入社。10年ほど前から勉強を始め、36歳で中小企業診断士、38歳でMBA、40歳で外資系企業に転職したというキャリアは、華やかな天才型のスター達のいう内容より、強い説得力がある。この本の魅力は目覚めた30代がどのような考えを持って、どのような生活ぶりで、自分の道を歩み始めたのかが詳細にわかることだ。
随所に出てくるキーワードやアイデアは、いろいろな本にも書かれていることもあるのだが、著者自身が実際に実行しているからリアリティが感じられる。
「100のルール」の中に「師匠(メンター)を見出す」という項目がある。ここで私が紹介されている。
「「図解教の教祖」久恒啓一先生(多摩大学教授、NPO法人知的生産の技術研究会=知研理事長)を、僕は勝手に師と仰ぐことに決めた。これからの僕の50才に向けてのキャリア開発や生き方について、目標や指針となる何かを盗みたいと思っている。
久恒先生の著作で図解術の考え方に感銘を受けたのが最初だったが、その後、不思議な縁で知遇を得ることができた。約20年の大企業勤務、20代の頃の停滞感と30代での目覚め、イギリス駐在経験、40歳での著書出版、細かいことでは千葉県に居を構えて長い通勤時間を有効活用したことなど、僕のキャリアは偶然ながら久恒先生のあとを追っている感があり、素直に真似してみたいと思ったのだ。」

私自身も自分を信じて藪をこぎながら急坂を息せききって登ってきたが、いつの間にか師匠(メンター)とされる年齢になったということだが、若い人たちに勇気と活力を与えているということなら嬉しいことだ。

「40才以前に本を出してはいけない」、ということを知研で呼んだ講師の先生から言われたことがあった。中身が未熟なままで書いた本は壊滅的な打撃を自分に与えるというのがその理由だった。私は40歳で単著を出して人生が大きく変わっていくのだが、この水谷さんは42歳という時点で書いていることもあり、一貫した調子で書き続ける力が備わっているから、この教えも腑に落ちる気もする。

「泥臭く、格好悪く、粘り強く」とオビにあることに深く共感する。ぜひ30代の人たちに読んで欲しい本である。