退任記念講義ーーー「これまでの私、これからの私」。「失敗」と「未来」を語る。

本日は退任記念講義。

「これまでの私 これからの私」といういタイトルで、「失敗」と「未来」をテーマに、学生と教職員に向けて講義を行った。稀勢の里ではないが、「一片の悔いもない」11年間だった。

以下、久米客員教授のレポート。

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多摩大学 久恒啓一副学長 退任記念講義 これまでの私 これからの私】

今日は「らしくない」けれど「らしい」特別な講義を聴きました。

私が尊敬する図解と名言の師匠 久恒先生が、専任教授として登壇される最後の講義です。まず「終わり」なのに、新たな「始まり」を感じさせるところが退任講義「らしくない」。そして「涙」ではなく「笑い」がしめくくるところが久恒先生「らしい」。十年後には、こんな最終講義ができる人になりたいと憧れてしまいました。

なにしろ、過去について自慢はせず、失敗談ばかり話されたのです。久恒先生曰く「これから失敗の連続になる。会社に入ってもすぐ失敗する。どうしてこんなに自分は失敗するのだろうと思った。」たしかに、経理になれば振込を間違え、人事になれば50人も人を余計に採用するなど、考えられない失敗を重ねられていてビックリです。

しかし「40歳で課長になった時に失敗が役立った。あらゆる失敗をしていたので部下の失敗の理由がよくわかった」そうで、まさに失敗を重ねることこそが究極のOJT(On-The-Job Training)に思えてきます。

■写真1 ホームページに私のすべてが入っている

おそらく、久恒先生は、インターネット上に日々リアルタイムで「自分自身の人物資料館」を創り続けている「最初の人類」でしょう。しかも独自の図解のメソッドに基づくユーザーインターフェイスで体系化されています。

種々のSNSの長所を使い分けながら充実させて、すでに5,000日突破。今日の講義で参照した資料もすべてホームページに収められています。これまで作った図解、学生たちのアンケート、これまでに訪ねた人物資料館(857館)のデータはもちろんのこと、ゴルフのスコアから、母の歌集まで入っているというから驚きです。

久恒先生曰く「20年間続けてわかったこと。ホームページが空母。Facebookなどsnsは戦闘機。」たしかに、久恒先生のホームページは、SNSにジャンプするリンク集の役割も果たしながら、それら外部に寄稿した記事も、ホームページに集約されて体系的に眺めることもできるのです。

「自分で作ったビッグデータでなければ、知的生産としては使えない」という言葉も心に刺さりました。単にググってwikipediaを棒読みした情報と、自ら現場で取材し、人と出会い、調べ学んだ血肉となった知恵の集積とでは、価値が違うでしょう。

■写真2 計画が重要。毎年チェックする習慣を。

久恒先生は、計画の重要性を説き、自分の計画通りに過ごそうと提言します。自らの30年計画を振り返ると、日本航空の社員だった時代に「大学教授になる」と書いてあって不思議だそうです。こうして大きく考えると沿っているようにも見えますが、実はかなっていないことが多いとのこと。「それでも毎年チェックをして、〇×△をつけることを3年ぐらい続けていると×が〇になる。そんな良い習慣を身に着けることが大切」だと訴えます。

久恒先生曰く「計画通りにうまくいかないけれど立てないよりは、はるかに良い」「年度計画、中期計画を書いていると、そういう方向にいくような気がする。」「何が起きるかわからないけれど、若いうちに失敗しておくのが大切。ある程度力がついたら自分のテーマにまい進する。」だそうです。

■写真3 人生は豊かさ(自由の拡大)への旅である

このシンプルな人生の図解には驚きました。ちょうど昨日、クエストリーで「人生は旅」という話をしたのでシンクロニシティです。

久恒先生曰く、「カラダをベースに、カネとヒマの自由を得て、ココロ・アタマの自由を獲得する」ことが、人生という名の旅の原動力。これは転職の時にも使える考え方で、例えば久恒先生は、このたび教授を退任することで、カネ(給料)が減る代わりに、ヒマ(自由時間)を得ることで、より大きなココロ・アタマの自由を獲得できるそうです。

久恒先生が、これから書きたい本のリストを見せていただきましたが、想像を絶する労力です。それだけではなく、久恒先生が理事長をつとめる「知的生産の技術研究会」の仕事として、梅棹忠夫先生の全集図解化にも挑戦したいそうです。これだけ大事業を遂行するにのは、おカネよりもヒマが、さらには人生百年時代を元気に生き抜くカラダ、ココロ、アタマが必要でしょう。

■写真4 人生100年時代には、3回のキャリアデザインを

人生100年というと、みんなコストとリスクの話ばかりしているが、そんなお金の話ばかりでは困る、考え方が間違っていると久恒先生は強調しました。それもこれも、昔の短い寿命をもとに不惑などの年齢別心得を説いた「孔子が悪い」だから、みんなが迷うとおっしゃるのです。

そこで、久恒先生は、孔子の図を1.6倍伸長して、人生100年時代の心得を図のように提唱しています。なるほど、この図に合わせるなら、青年期、壮年期、実年期で3回キャリアデザインできます。私はまだ壮年期半ばですから、まだ1,5回チャレンジできるのだと思うと、元気と勇気が湧いてきました。

 少壮老死

 少にして学べば、壮にして為すことあり
 壮にして学べば、老いて衰えず
 老にして学べば、死して朽ちず

(その他、失敗と未来に関する名言集も素敵だったのですが、ボリュームがあるので、写真を拡大して読んでみてください。)

この半年間、私の担当講義の前に、久恒先生との雑談会と「立志人物伝」を聴講できて幸せでした。学生時代に聴いておけば…と思ったこともありましたが、今日の最終講義を聴いて、いや今聴くからこそ意味があると納得しました。やはり人生100年時代の壮年期には、働きながら学び、学びながら教える、同時並行の生き方が求められるのですね。

久恒先生、今日は素晴らしい講義をありがとうございました。そしてこれからも先生の背中を見ながら、今以上に離されないように追いかけます。引き続き、ご高導のほどよろしくお願い申し上げます。

#多摩大学 #久恒啓一 #教授 #図解 #web
http://www.hisatune.net/

 

画像に含まれている可能性があるもの:久恒 啓一さん
画像に含まれている可能性があるもの:久恒 啓一さん
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受講した教職員、学生のアンケート。
以下、教職員のアンケートから
「学生というより我々中年期を迎え、迷える時期に貴重なお話をうかがえたこと大変ありがたく思います。今後の自分を考える上で大切な時間となりあました」「11年間教育、研究、大学運営・改革、大変お疲れさまでした。多くのことを学び、気づきをいただきました。心から感謝申し上げます」「これからも大活躍なさること、間違いないと思います。遠くから近くから応援します」「どれをとっても説得力があり、納得できることばかりで、大変勉強になりました。いくつかの項目はわかっているつもりではありますが、仕事のせいにしたりして実行に移せていませんので、今後は少しでも久恒先生に近づけるように実際行動にしていきたいと思います。すばらしい講義をどうもあいがとうございました」「私自身も大学入試あたりから現在まで失敗の連続ですが、今後は計画を立て、仕事にもチャレンジして、失敗を恐れず行動したいと思います」「失敗を恐れる学生がどんどん増えている気がします」「失敗の数こそ資産!その通りですね!御指導いただきありがとうございました」「アーカイブ、ストックを大切にされたおと、それが過去でなく未来のためであることを感じました。起業に期待しております!成功をあせる日本に発言をお続けください」「多摩大学を立派にマネジメントしていただいた久恒先生のバックグラウンドと考え方がわかり興味深かった。ご苦労様でした!久恒先生のマネジメントなくして現在の多摩大はなかったと思います」「いつも明るく、軽いノリでお仕事をされているように感じていましたが、実はバックグラウンドに自らの歴史、あらゆる成長の過程の全記録を残されていて、それを有機的に結び付けておられたのだとわかりました。私はこれまでの自分の歴史をあまり大切にしてこなかったことを残念に思います。近い未来に迫った退職後のことをこれを機会に考えていきたいと思います」
以下、学生のアンケートから
・心に残るお話ありがとうございました・先生の人生観、とても興味深かった。私は失敗を恐れてきたのでとても励みになりました・失敗を恐れることは進化をあきらめることだ感じました・人生計画を立ててよい人生にしたい・失敗する人は成功する・失敗のお話を聞いて私の中で何かが吹っ切れたように思いました・正解も間違いもなくて大きな目で心で経験していくことが大切なんだ・未来は考えるものではなく自分でつくりだすもの・自分の心に響いた言葉だけを胸に刻み生きていくことが大切だ・人生は失敗から始まる・先生の授業は他の先生の授業とは違い楽しく聞くことができた・いつかは言葉で人を動かしたい・習慣など当たり前のことを当たり前にコツコツとこなしていきたい・先生が思っていたよりもずっとすごい人でびっくり・いろんなことに挑戦して失敗してそこから学んでいくことが大切だ・30代に思い立って30年以上も継続していくエネルギーはどこから・この授業を通じて毎日日記をつけるようになりました・公私のほかに個の時間も大切だ・多く失敗し成長していく・勇気をいただきました・感動しました・良き多摩大を発信していきたい・先生の講義は確実に自分の武器を身に着けることができる講義でした・失敗の連続の多さに驚きました・計画・失敗の話はとてもよかった。失敗してもよいと思えた・どの先生も久恒先生を尊敬している理由が分かった・改めて久恒先生の偉大さを確認した・尊敬します・学生のうちにたくさん失敗し学習する・確かに成功の本はたくさんあるが失敗についての本はない・失敗や挫折に対する考えが変わった。ネガティブ思考が強かった今までの私にはとてのタメになった講義・先生のお話は今までのどの言葉よりも重みがあった・先生の授業でjは、これを伝えたい!という熱意を感じていました・自分の考え方を変えるいい風を受けた・あまり深く考えずに進もう・人生計画を10年ごとに立ててみたい・本を読むことが一番だ・偉人館にいく・先生のおかげでパワポで図が描けるようになった・挑戦する・先生のブログを読む・くじけた時や悩んだときに先生の言葉を思いだしたい・悔いのないように過ごしていく・失敗をポジティブにとらえていこう・教授の方々が楽しそうに聴いているのが印象的・今まであらゆる有名な偉人の話を聴いてきましたが、久恒先生の今までの経験の話が一番面白かった・何を得て行動に移すか、そこで差がでる・チャンレンジ!・後輩にも影響を与えたい。
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午後は市ヶ谷のN出版社を訪問。2冊の本の企画が進んだ。
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 「名言との対話」1月17日。趙紫陽「人治ではなく、法治」
趙 紫陽(ちょう しよう、ヂャオ・ズーヤン、1919年10月17日 - 2005年1月17日)は中華人民共和国の政治家。
趙紫陽は「第2世代」の政治指導者として中国共産党中央委員会副主席国務院総理(首相)、中国共産党中央委員会総書記などを歴任した。1989年天安門事件で失脚し、2005年に死去するまで16年間の軟禁生活を余儀なくされた。
趙紫陽は、四川省における食料問題の解決などの農業改革をはじめ、1-2億人が住む沿岸地域をグローバル市場に組み込む経済改革で功績をあげ、「経済的には右、政治的には左」であった鄧小平に胡耀邦とともに引き上げられた。当時は腐敗が蔓延していた。天安門に集まった学生たちは「腐敗の一掃」と「報道の自由」を要求し、ハンガーストライキを実行し国民の支持もあった。趙紫陽は学生たちとの対話を実行するが、指導部は戒厳令を断行し犠牲者をだした。趙紫陽民主化運動の弾圧に反対したことで、「党を分裂させた」「動乱を支持した」との罪状ですべての公的地位を奪われた。
軟禁生活では厳しい監視の目があったが、趙紫陽は極秘のうちに元部下のインタビューを受けた60分テープ約30本の音声回想録を残していた。今回このテープをもとにして編集された『趙紫陽 極秘回想録』を読んだ。天安門事件前後3年間の中国政府の中での問題やそれをめぐる暗闘、鄧小平を中心とした複雑な人間関係が克明に描かれている。
16年間の軟禁中に、熱烈な共産主義者であった趙紫陽は「議会制民主市議こそが近代国家の最善の道であり、中国が目標とすべきものだ」との結論に達している。市場経済だけでなく政治体制も議会制民主主義を採用すべきだ。さもなければ権力とカネが取り引きされ、腐敗が蔓延し、社会は富裕層と貧困層に分裂する。長い移行期間が必要であり、まず複数政党制と報道の自由を認めなければならない、としている。
あの天安門事件から30年経った。中国からの大学・大学院の留学生と接触する機会が多いが、ほとんどの人はこの大事件を知らない。情報統制があり、事件自体も趙紫陽という政治家も知らない。天安門事件後の国際制裁は日本が最初に解除し、経済発展の援助を行ったことも知らない。また、現在の中国の指導部は、腐敗撲滅運動の中で、胡錦涛を生んだ共産党青年団も、江沢民を頂点とする上海閥も影が薄くなった。建国の英雄たちの子孫である太子党が制圧したようだ。
趙紫陽の命日である1月18日には小規模ではあるが、いまでの追悼集会が行われていると聞く。市場経済の導入はいずれ政治改革をもたらす、という西側の予測は今のところ外れているのだが、内外の知識階級の中では趙紫陽の評価は依然高いものがある。趙紫陽は少し早すぎたともいえるが、いずれ中国に民主主義が根づくときには、「人治ではなく、法治」を主張した趙紫陽は偉大な先駆者として評価されることになるかもしれない。
 

 

趙紫陽 極秘回想録 天安門事件「大弾圧」の舞台裏!

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