半藤一利「昭和史」戦後編36巻--無私・勇気・大局・自立・風格

半藤一利「昭和史」(平凡社)のオーディオブック版の「戦後編」全36を聴き終えた。
「戦前編」32巻と合わせて68巻になる。一つ30分としても34時間以上の時間がかかっている。約2カ月間、半藤節を通勤途上で聴いたことになるが、実に充実した時間だった。

昭和史 戦後篇 1945-1989 (平凡社ライブラリー)

昭和史 戦後篇 1945-1989 (平凡社ライブラリー)

半藤さんは1930年生まれだから今年84歳。昭和は1926年12月25日から。1989年1月7日までの62年と14日。昭和天皇の在位の長さは日本歴代元号の中で最長であり、また外国の元号を含めても最も長時間である。
戦前を近代、戦後を現代とおおざっぱに理解することができる。そうすると昭和天皇は、日本の近代の終りから現代の幕開けまでの歴史的時間を過ごしたことになる。

歴史に関するオーディオブックは、読み上げるアナウンサー口調だと無味であるが、その時代を生きた人物が語り下ろすという工夫は人間味があって楽しめる。

半藤さんは、、最後に「横町の隠居なりのお節介な忠言」として、今の日本(小泉内閣の末期の2005年から2006年にかけて)に必要なことを述べている。
1・無私。私を捨てて努力と知恵を絞ることができるか。
2・勇気。自分の組織から出て行く勇気を持てるか。
3・大局。グローバル展望力を持つ、そういう勉強ができるか。
4・自立。他国に頼らないで情報を得ることができるか。
5・風格。大事を成すことができるか。

この昭和史の主役であった昭和天皇は1901年生まれで、20世紀の最初の年に生を受け1989年に87歳で崩御しているから、20世紀の世界の主役の一人としても生きた激動の人生だった。
年譜をたどると、19歳のヨーロッパ諸国訪問を経て父の大正天皇の病気により20歳で摂政に就任し25歳で天皇となった。
34歳のとき2・26事件、40歳のとき宣戦の詔書、44歳のときポツダム宣言を受諾し終戦の詔書、46歳のとき日本国憲法に発布に伴い国及び国民統合の象徴となる、57歳のとき皇太子明仁親王の結婚、63歳のとき東京オリンピック名誉総裁として開会宣言、70歳のときヨーロッパ諸国訪問と冬季オリンピック札幌大会名誉総裁、74歳のときアメリカ訪問、87歳のとき崩御