「戦争」−−山崎朋子、上坂冬子、山崎豊子、宮尾登美子。

オーディブルの「講演・エンターテイメント」の女性作家たちの講演録を聞き終わった。
文藝春秋社の文化講演会での講演録。それぞれ1時間弱の中身の濃い講演。
有名な作家達であり、山崎朋子上坂冬子山崎豊子宮尾登美子は太平洋戦争に翻弄されており、「戦争」というテーマをそれぞれの立場から深掘りしており、心を打つ。

  • 山崎朋子「アジアの女・アジアの声」
    • 帝国海軍の伊号潜水艦長であった父を喪った経験。朝鮮人青年との恋愛。アジア各地に散った底辺女性や満州花嫁の悲劇のエピソード。個人の幸せと国家の真の姿を見つめる。
  • 上坂冬子「繁栄日本の陰に」
    • 奄美大島の民謡に隠された長崎原爆の被爆者たちの知られざる人生。アメリカ在住の広島からの原爆の被害者たち。ノンフィクションというものがよくわかる。
  • 山崎豊子大地の子と私」
    • 日中戦争最大の犠牲者・戦争孤児。同じ日本人なら最後の一人まで捜し出すのが人間じゃないか。「私たちを三度も捨てないでください」という言葉の衝撃。
  • 宮尾登美子「いま女はさまざまに生きる」
    • 満州難民収容所。空腹で子供とひとつの饅頭との交換を考えた。引き揚げ後の肺結核。赤ん坊だった娘に収容所経験を書き残したかった。そこから始まった作家人生。
  • 杉本苑子「万葉の女たち娘たち」
    • 天皇・貴族・庶民・奴隷まで、あらゆる層の人々が本音を吐露する万葉集の歌は現代人の胸を打つ。
  • 永井路子「歴史をさわがせた女たち」
    • 平安以前は女系家族。女帝が多くその官僚としての女官の存在など、女の時代であった。新しい日本史のヒーロー像。裏声で語るオンナの物語。


「名言との対話」5月23日。イプセン

  • 「結婚生活−−この激しい海原を乗り越えて行く羅針盤はまだ発見されていない。」
    • イプセン(1828−1906)はノルウェーの劇作家。自我の解放と確立を追求した自由思想家で、近代劇の創始者といわれる。戯曲「人形の家」「幽霊」「民衆の敵」「野鴨」「ヘッダ‐ガブラー」など。
    • 「他人のために尽くすことによって自己の力を量ることができる。」「心に残るのは、千の忠告より一つの行為だ。」「”できない”というのは許される。だが、”しようとしない”のは断じて許されぬ。」
    • 人生は羅針盤のない航海である。その中でも結婚生活こそは最大の難所ではないか。判断を間違えれば、そして微妙な舵取りを誤れば、すぐさま船は座礁し、難破することは目に見えている。気まぐれな天気と襲ってくる嵐を乗り切りながら、共に少しづつ経験と叡智を蓄積し、船を進めて行くしかない。