「50歳からの仕事も人生もうまくいくキャリアデザインの考え方」

幻冬舎オンラインの連載の5回目のタイトルは「50歳からの仕事も人生もうまくいくキャリアデザインの考え方」。

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1:キャリアは「仕事歴を中心とした学習歴、経験歴の総体」

なぜ、キャリアは「青年期・壮年期・実年期」の3期にわたるのでしょうか。ここで重要なのは、キャリアというものをどのように定義するかです。

キャリアというと、ほとんどの人は「キャリア=仕事上の経歴、職歴」を思い浮かべるでしょう。しかし、キャリアは仕事だけで構成されるわけではありません。「仕事歴を中心とした学習歴、経験歴の総体」(図)、それが真のキャリアです。なぜなら、仕事歴だけでは、その人の生き方の全体像をとらえられないからです。

 

[図表]キャリア開発の3領域

 

たとえば、MBA経営学修士)を取得するため、内外のビジネススクールに通うなどの学習歴があれば、それもキャリアの一部です。会社での仕事のほかに、プロボノ(各分野の専門家が職業上持っている知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランティア活動)などの活動を行った経験歴も、キャリアを構成します。

私は、大学教授に転身する前は、日本航空に勤務していましたが、30歳のとき、「知的生産の技術」研究会(通称、知研)というビジネスパーソンの集まりに入会しました。

知研は、日本を代表する民族学者であり、「京大式カード」の生みの親でもある梅棹忠夫先生の代表的著作『知的生産の技術』(岩波新書)に共感した人々による勉強会で、当時、各界の第一人者を講師に招いては、毎回、200人ほど会員が集まって、講義を傾聴していました。

私はやがて、中心的スタッフの1人として、講演の企画や書籍の出版活動にも携わるようになります。

知研での活動という学習歴、経験歴は、私にとって重要なキャリアとなりました。その後、「図解コミュニケーション」という、新しい分野を開拓することに結びつき、大学教授への転身を呼び寄せることになるのです。

私は、自分の能力を発揮する領域として、2つの領域が必要であると考えます。

第1領域とは本業のことです。

ビジネスパーソンの場合、ほとんどの人は主として仕事によって成長します。仕事に真正面から取り組むことによって、社会や人間の織りなす集団の力学が見えてきます。また、人間に対する洞察力も備わってきます。この第1領域が空洞化していたら、人生は味気ないものになってしまうでしょう。全力をもって仕事に当たるべきでしょう。

一方、第2領域とは、従来は趣味といわれたり、最近では副業といわれたりと、仕事に対するプラスアルファの部分を、付属的な領域ではなく、第1領域と並ぶ重要な領域として積極的に評価するという考え方です。

 

2:大切なのは自分は何のために生きるのかという問い。

現代は知識社会と呼ばれます。「マネジメントの父」と讃えられるピーター・ドラッカーが知識社会に求められる人材像を「ナレッジ・ワーカー(知識労働者)」と呼んだように、私たちの社会は、もはやどのような仕事も知識労働の要素が強くなっています。

知識労働には成長や自己実現という要素があらかじめ組み込まれており、日々進歩しているという実感を抱きながら仕事をすることになります。知識労働に従事するものは、進歩が実感できなければ意欲が出ません。

しかし、第1領域での仕事には定年という〝時限爆弾〞がセットされており、そのときを過ぎるとぽっかりとした空白の時間が出現します。このとき、第2領域を育ててこなかった人は空しさを味わうことになります。そこから他の分野に進出しようとしても、知識や経験がないためうまくいきません。そのため、若いときから第2領域を育てていくことが大切なのです。いわば、1本足ではなく、2本足で進む生き方です。今風にいえば「二刀流」です。

私にとって知研での活動は、まさに第2領域に属するものであり、そこで積み上げた学習歴や経験歴は、私のキャリアにとって重要な役割を果たすことになりました。

キャリアは「仕事歴を中心とした学習歴、経験歴の総体」であるとしても、50〜65歳の壮年期と65〜80歳の実年期では、当然、その構成に違いが出てきます。

壮年期と実年期の境目の65歳は、どういう年齢なのでしょうか。厚生労働省の調査によると、企業規模や業種にもよりますが、60歳定年を定めている企業割合は平均約80%となっていますが(65歳以上17.8%)、65歳まで雇用を確保している企業の割合は99.8%にも上ります。

高年齢者雇用安定法の改正により、2025年には「65歳定年」が全企業に適用される見込みです。

一方、65歳という年齢は、企業に勤めるビジネスパーソンの場合、現在の日本では実質的に年金の受給開始時期を意味します。

65歳になっても、実年期に向け、壮年期の延長線上で「公」の仕事を続ける道もあります。壮年期とは違う仕事を始めてもいいし、社会活動や地域活動などを通じて、壮年期とは違う新たな「公」の世界に入っていくのもいいでしょう。

また、「公」の部分を縮小する、あるいは「公」から離れるなどして、「個」の領域や「私」の領域で学習歴や経験歴を積み上げていくのもいいでしょう。

山を登って、頂上に立ったと思ったら、その山に連なるもっと高い山が見えてくることがあります。尾根伝いにその山に挑戦するのもいい。いったん下山して、別の峰に登るのもいい。それは人それぞれです。

いずれにしろ、大切なのは、自分は何のために生きるのかというテーマを自覚するライフコンシャスな生き方です。人生100年時代にあって、65歳でリタイアし、残る35年は余生として暮らすなどという生き方はありえません。

ライフワークとは、生涯をかけて、人生のテーマを持って続けることがらであるとすれば、25歳から80歳までの青年期、壮年期、実年期は「公」に重点を置いた生き方になる。ただ、それぞれ仕事歴、学習歴、経験歴の構成に違いが出るでしょう。しかし、キャリアは「青年期・壮年期・実年期」の3期にわたると考えるべきなのです。

青年期と壮年期は、「公」の領域が多くを占める点では共通していても、仕事歴も、学習歴も、経験歴もそれぞれ量的にも質的にも異なります。その異なり方はこれから本書を通じて明らかにしていくことになるでしょう。

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今日の収穫。

山本周五郎の日記。

  • 人間を書くのだ。真実の人間が書ければ「面白さ」は附いて来る。簡潔に、的確に、そして生き生きと鮮やかに。「人間狩り」をもっと沢山しよう(山本周五郎。35歳)
  • 「真実の人間」が描ければ、読者にとって面白い作品になる。それでいいではないか。
  • こういうものばかり書いていていいのですか(妻・きよえ)
  • 「青べか日記」「愛妻日記」「戦中日記」。
  • 昭和18年8月3日。「日本婦道記」が直木賞内定。日記には「直木賞の事で来訪、断はる。」とだけそっけなく記されている。

人間は顏の下半分で感情を表し、上半分で私は何者かという識別情報を伝える(「顔学」の原島博

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SOMPO美術館「川瀬巴水」展。

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昼食は息子夫婦と4人で学芸大の「Midorie」オーガニックレストラン。産地直送の有機無農薬野菜やオーガニック素材。無添加。手作り。

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「名言との対話」10月3日。寺澤芳男「外国人が興味を持つ日本のことを英語で語る」
寺澤 芳男(てらさわ よしお、1931年10月3日 - )は、日本の実業家、政治家。

栃木県佐野市生まれ。早稲田大学政経学部卒。野村證券入社。1956年、フルブライト留学生としてペンシルべニア大学大学院ウォートン・スクールに留学。1972年、米国野村證券社長。1982年、会長。野村證券副社長。1985年、ニューヨーク日本人として初めてニューヨーク証券取引所の正会員。1988年、MIGA(世界傘下と多数国間投資保証機構)初代長官(在ワシントンDC)。1992年、日本新党から参議院議員に立候補し当選。1994年、羽田内閣で経済企画庁長官。1997年、参議院外務委員長。1999年、ローン・スター・ジャパン会長。2001年、スターバンク会長。

主な著書「ウォール・ストリート日記」「Thank Youといえる日本人」「英語オンチが国を亡ぼす」等、多数。2009年8月号「文藝春秋」の巻頭随想で「ウォール街高橋是清の墓」を発表。

寺澤が活躍していた頃、私もメディアに登場する姿や言葉を追っていた。意外なのは70歳を過ぎて永年連れ添った妻と離婚して27歳も年下の若い女性と結婚したニュースも聞いた。その女性も早々に亡くなる。公私とも数奇な運命を生きている人だ。

以下、語録。

「通用するのは内容であり人格であり、英語でコミュニケーションできる実力である」「日本語が常語として通用しているのは日本だけで地球上の人口60億のうち1億24万、約2%。国連の調査によると75%の加盟国は英語を公用語とすることを望んでいます」「仕事とは何か、会社で働く企業で働くとはどういうことなのか?私は女性とか男性とか、日本人とかアメリカ人とか、大人とか子供とか年寄りとかそういう分け方じゃなくて、これからは個、それぞれ持っている個、自我、自分というものが重要になる時代だと思います」

『スピーチの奥義』 (光文社新書)を読んだ。いくつか参考になったことを記しておこう。

スピーチの前の発声練習が大事。「あいうえお発声練習」。大きな声を出して10回繰り返す。ウウとかエエとか言わないこと。「たとえ」のうまいのは中曽根総理で「弁慶のいない牛若丸(安倍首相)」「甘いけれどすぎに溶けてなくなってしまうソフトクリーム(鳩山首相)、、、。
この本の中では「外国人が興味を持つ日本のことを英語で語る」という記述に膝を打った。相手の土俵ではなく、自分の土俵で戦えというアドバイスである。それは日本のことを知っているか、そしてそれを英語で話すことができるか、という問いである。

現代日本の政治経済文化、そして寿司、日の丸、富士山、天皇、カラオケ、短歌、俳句、相撲、歌謡曲、浮世絵、などの日本文化、、、。私は今まで大学や図解塾でこういうものを図解する講義をやってきた。ぞの図のなかの単語を英語に変えることで、寺澤の要請に応えることができると思っている。そういう本もそろそろ手掛ける時かも知れない。