「大学、辞めるの?」

中学校の社会科の教師をしていた秘書、「ブックオフ」でも仕事をしている中国からの女性大学院留学生、学部を卒業し大学院受験の準備中のデザインが専門の男性という組み合わせで研究室の大改造計画が進行している。オーナーの私は、こういった物理空間の整理能力はないとの自覚は十分にあるので、最終的な拒否権だけは確保してはいるが、口出しはしないで見守っている。


デザイン系の男性は、レイアウト変更に際して用いる各種道具をポケットから出して手際よく、ボックスの中に書類を放り込む、スティール書棚を動かす、空いている学生をひっぱりこんで手伝わせる、など気持ちよくテキパキと片づけていく。男手は役に立つと感心した。


ブックオフでアルバイトを長くやって、職場の改善なども任されている女性は、さすがに書棚の本の並べ方は抜群にうまい。分野ごと、本の大きさごとにみるみる整理していく。壁の一面はすべてボックスファイルで統一されつつあるし、向い側の一面は本で埋まってきつつある。一つの書棚を使って私の著作を全て並べる工夫もしている。もう一つの窓に面した部分は、雑誌類を中心に整理され、その中央には机を配置し、明るい光を浴びながら仕事ができる環境になりつつある。


先生をやっていた秘書は、さすがに院生・学生の扱いがうまく、全体レイアウト、倉庫への搬入計画、要不要の書類の判別など、陣頭指揮をとりながら、見事なチームワークで全体を仕上げていく。かたわら面倒な事務処理もこなしていく。


私は学内の仕事で出入りを繰り返したり、机に座って進行状況を眺めているだけで、具体的な貢献はしていない。時折、「それは棄てるな」とか言って邪魔をするくらいかなあ。


同僚の教授たちが、廊下に積み上げる書類や本の束を見て、突然の掃除に驚き、声をかけていく。「どうしたの?」と聞くのはいい方で「いよいよ、大学を辞めるの?」という人まで出てくる。人々の反応が面白い。