国立劇場で「音の会」の鳴物・長唄、義太夫、舞踏を楽しむ

半蔵門国立劇場小劇場で「音の会」の鳴物・長唄義太夫、舞踏を観た。http://www.ntj.jac.go.jp/performance/2854.html

歌舞伎は、俳優・音楽・舞台で成り立つ総合芸術である。長唄、鳴物、竹本、清元などの浄瑠璃、そして箏曲・尺八などの三曲、その他様々な音楽の演奏家が支えている。舞踏の出囃子や出語り、黒御簾の中で姿を見せずに行う演奏もある。その歌舞伎音楽を志す若手演奏家の会だ。


鳴者・長唄「雨の四季」。
雨の情景に託して、江戸下町の風物を季節ごとに綴る、情緒豊かな作品。曲目解説の歌詞を見ながら聞いていると、江戸の下町の四季の様子が目に見えるような描写である。「音もなく 降るとも見えぬ春雨の 酔を勧むる時の興、、」「鐘もけむるか 日本橋 南北の 江戸を鎮めの夏祭り、、」「、、、折しも注ぐ秋の雨」「、、、今日も急ぐか早立ちの 旅人しげき橋桁に 聞くだに寒き 冬の雨」。これは池田弥三郎(1914年12月21日 - 1982年7月5日)の作詞だったのには驚いた。昭和42年9月の開曲。

義太夫「妹背山婦女庭訓」(いもせやまおんなていきん)
明治8年大坂竹下座初演の人形浄瑠璃「妹背山婦女庭訓」四段目を歌舞伎に移したもの。「梅は武士 桜は公家よ 山吹は傾城 杜若は女房よ 色は似たりや菖蒲は妾 牡丹は奥方よ 桐は御守殿 姫百合は娘盛りと撫子の、、、この手柏の二人の女 睨めば 睨む荻と萩 中にもまるる男郎花、、、」という三角関係の道行き。

舞踏「棒しばり」
大正5年(1916年)の初演。狂言を歌舞伎舞踏に移した作品。大名と二人の召使いの酒を巡る物語で、両手を縛られた姿で召し使いが踊る器用さと明るさは笑いを誘う。長唄や囃子の演奏にのせて、さんざんに酔った二人が繰り広げる酒宴での踊りが見どころだ。


鳴者・長唄「雨の四季」は、音楽と語りだけで江戸情緒を堪能させる。義太夫は男女の仲を語りと音楽でみせ、舞踏は酒を巡るドタバタといういつの時代も変わらぬ人間の様子を器用な踊りと音楽で描いており、共感を持って楽しんだ。