「しあわせ農泊 安心院グリーンツーリズム物語」(宮田静一)

郷里の同級生・土生望君から「しあわせ農泊 安心院グリーンツーリズム物語」(宮田静一著・西日本新聞社)が送られてきた。高校の同級生の宮田君が書いた本というメッセージが入っていた。高校時代はあまり接触がなかったが、宮田君のことは帰省するたびに頑張っているという噂は耳に入ってはいた。この本を読み終えてさわやかな感動を覚えた。
ゆっくり、じっくりと時間と労力をかけて熟成していく農村を軸とした一人の社会運動家の誕生と戦いの物語である。小さな自分の持ち場で持った問題意識を育てながら、人との縁を大切にしつつ、いつしか地域を元気にする運動のリーダーになっていく様子が手に取るようにわかる。やさしく、素朴で、やわらかな文体で書かれており、気負いがないが、しかし本質を突いた言葉が継続的に紡がれている。
読者は著者の言う「農泊」(農村民泊)に共感を持って読み終えるだろう。リーダーの成長と地域力の向上は一対のものだが、この人は今までの仕事の延長線上に大きく伸びる余地を持っているように感じる。この動きはさまざまな地域と人を巻き込む大きな渦となって社会を変えていく可能性を持っている。
帰省時には訪ねてみたい。

しあわせ農泊―安心院グリーンツーリズム物語

しあわせ農泊―安心院グリーンツーリズム物語

以下、拾った言葉。

  • 農業は楽しい上に、時間が自由である。ただ儲からないだけである。
  • 何らかの形で地域や個人に経済的潤いがなければ農村の新しい生き方の運動の継続は難しい。
  • 一度泊まれば遠い親戚、10回泊まれば本当の親戚。
  • 自分の家の農作業は仕事だが、よその家の農作業は楽しいのだ。だからイベントになるのである。
  • その後、安心院町は全国からのグリーンツーリズム視察景気で、、、いわゆる経済効果が年に7千万円から一億円ぐらいになっていった。
  • 平成21年度には、教育旅行関係で全国から37校4850人の子どもたちが農泊体験に安心院を訪れている。
  • 農泊とは農村民泊の略で、1日1組を自分たちが日頃食べる食卓で家族がもてなすのが原型なのである。
  • グリーンツーリズムは別れる時が始まりだ。
  • グリーンツーリズムは、田舎っぷりが良い方が勝ちなのである。
  • 家をそのまま使えるので、ほとんど元手がかかっていない。だから、いかにお客が少なかろうが倒産がないのである。これは最高の強みである。
  • 韓国からの視察団が平成17年度頃になると毎年30組くらい農泊体験研修に訪れる。
  • 現場に出かけたり共に食事をすると、人は変わるのではなく、真実がわかるのである。
  • 地域が一流になる鉄則は、1.苦情の共有、2.悪口を言わない、3.一流に学ぶことーではなかろうか。
  • グリーンツーリズムは、足ではなく、手を引っ張り合う運動なのである。
  • 旅行雑誌全国版「じゃらん」の平成20年11月号で口コミ好感度が、全国で同様な宿泊施設34の中でベスト4となったのだ。
  • 安心院方式農村民泊には倒産がない。日本初の大分県規制緩和によって手数料2万2千円を払うだけで、ほとんどの家で認可されるのである。