みなと未来地区の横浜美術館でキャパ展」が開かれている。
正確には「ロバート・キャパ/ゲルダ・タロー 二人の写真家」というタイトルである。
キャパ(1913-1954)と言えば世界で最も著名な写真家の一人である。世界で最も偉大な戦争写真家だ。このキャパという名前は、実はアンドレ・フリードマンと女性写真家ゲルダ・タロー(1910-1937年)の二人が創りだした架空の写真家だった。キャパは「現代フォトジャーナリズムの創案者にして父」である。キャパは「瞬間の中に物語を紡ぐ」。
キャパ誕生100年の今年、この企画展が開かれた。
二人ともユダヤ系だった。そして二人とも戦場で命を落とす。タローは26歳。
デビューがトロツキーの演説写真だったキャパ(アンドレ・フリードマン)は40年余りの生涯で、そして20年ほどの仕事で、5つの大きな戦争を経験している。
スペイン内戦(1936-1939年)。「崩れ落ちる兵士」
日中戦争(1937-1945年)。周恩来。孫文夫人。
第二次世界大戦(1939-1945年)。Dデイ、ノリマンディー上陸作戦。「波のなかの顔」。
中東戦争(1948-1949年)
インドシナ戦争(1946-1954年)。ベトナムで地雷を踏んで死亡。
キャパは特異な人物だったようだ。「怒りの葡萄」を書いたジョン・スタインベック。恋人であった女優イングリッド・バーグマン。「パパ」と慕ったヘミングウェイ、、、。
キャパと接した多くの人がキャパに惹かれている。「ほら吹きだけど魅惑的で、勇敢だけれど不作法で、心惹かれるけれどいらだたされる人物」だった。
ポートレートでは、ピカソと息子の写真があった。好々爺のピカソの写真は初めて見た。
「ロバート・キャパとフェルダ・タローは、われわれを農家や畑、パンを買う行列、弾薬工場、駅、カフェ、劇場にも、塹壕にもつれていってくれる。」

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- 従軍記者は酒にも女にも給料にも恵まれていて、自由もたっぷりある。だが、いざというときに自分の身のふり方を選ぶのも自由だ。つまり臆病風に吹かれて逃げ出そうが、軍法会議にかけられることもない。それが耐え難い苦痛なのだ。従軍記者は、その手に自分の掛け金---自分の命--をにぎっていて、こちらの馬にもあちらの馬にも賭けることができるが、土壇場になって自分の掛け金をポケットに戻すこともできる。わたしはギャンブラーだ。
- 戦争中はだれかを憎むか愛するかしなければならない。とにかく立場を明らかにしなければならない。そうでなければそこで起こっていることに耐えられない。
この企画展と関連して沢木耕太郎の講演会「青春のキャパ」と戦場カメラマン渡部陽一のトークショーが開催されている。沢木にはキャパの代表作品「崩れ落ちる兵士」はキャパとタローの合作だったという説の近作がある。戦場カメラマン渡部もこのキャパの影響を受けた一人だろう。

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